追放歌姫の異世界漫遊譚

あげは

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二章 水の都

ナトリ

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「あ、あのっ。さっきはありがとうございました」

 ナトリという少女が頭を下げた。
 やじ馬に囲まれた私たちは落ち着いて話ができるように場所を移した。
 今は人の少ない穴場のカフェに来ている。ここは当たりね。特にパンケーキというものが美味しいわ。ふわっふわで絶妙な甘さ。食べる手が止まらないわ。
 もう八枚目を完食。……まだいけそうね。

「気にすることないっすよ~。あとリリィ、食べすぎっすよ。確実に太るっすね。あとで絶対に後悔するっす」

 うっ。さすがにそれは困るわ。
 一旦落ち着きましょう。紅茶を飲んで心を静めるのよ。

「何かお礼を……」

「お礼なんていいっす。自分は困っていた可愛い女の子を助けただけっす。それにいろいろとお話ししたかっただけっすから」

「可愛いだなんてそんな……えっと……」

「そう言えばまだ名乗ってなかったっすね。自分はカーナっす。一応Aランクの冒険者っすよ。で、こっちの食いしん坊の美少女がリリィっす。それと小さいのがろぜっちっす」

「ちょっと。その紹介は良くないと思うわ。私はリリア。Cランクの冒険者で、今日はたまたまお腹が空いていただけなのよ。いつもはこんなに食べないんだから」

「あたしはロゼ! 確かにあんたも可愛いと言えるけど、あたしほどではないわ!それとカーナ。あたしは小さいのではないわ。サイズさえもあたしの可愛さを引き立てるものなのよ! 覚えておきなさい!」

「とまあ、こんな濃いメンツっすけど、そんなに身構えることないっすよ」

 よく見ると、ナトリちゃんだけでなく他の少年たちも少し緊張している。
 どうしたのかと思ったが、視線がブラウとルナを向いている。
 なるほど。そういうことね。

「そんなに怯えなくても大丈夫。この子たちは私の従魔だから。猫がルナで狼がブラウよ。よかったら撫でてみればどうかしら。いい子たちなの」

 私がブラウとルナを撫でながら促すと、おそるおそる手を伸ばしてブラウに触ろうとしている少年たち。
 なんだか初々しいわね。

「この子たちはリリィさんの従魔だったんですか。カーナさんではなくて?」

 ナトリちゃんはカーナの従魔だと思っていたらしい。
 まあそう思うわよね。AランクとCランクだもの。

「Aランクだからって従魔がいるわけじゃないっすよ。こればっかりは相性の問題っすからね」

「そうね。私もどうしてかわからないけど、小さいころから動物には好かれやすかったのよ。だからこの子たちにも懐かれたんじゃないかしら」

「……いや、動物の範疇を越えていますよ。見ればわかると思いますけど、聖獣とファントムキャットですよね」

 あら。この子目敏いわね。
 まあ確かに見る人が見ればわかるけど、いや、ブラウは見れば確実にわかるわね。ただの狼には見えないものね。

「へー。さすがっすね。やっぱりエルフって目がいいんすかね。ろぜっちの正体も見抜いているんじゃないっすか?」

「っ!?……どうして私がエルフだと」

「その剣に違和感を感じたっすよ。そしたらろぜっちにはわかったみたいで、精霊剣? とかなんとか」

「そこまでわかっているんですね。できるだけ他の人には言わないでいただけますか」

「もちろんっすよ。そういう個人の情報は漏らさないのが冒険者の鉄則っすからね」

 別に言いふらすようなことでもないしね。
 それに言いふらすような相手もいないわ。
 てか、いつまでブラウを撫でているのかしら少年たち。ルナちゃんは嫌なのか撫でさせることなく私の肩に戻ってきたが。

「ありがとうございます。確かに私はエルフ族です。この剣も……少し事情がありまして。おそらくロゼさんにも関わることだと思うので、お話しだけでも聞いていただけませんか?」

 何やら深刻な様子。それにロゼちゃんにも関わることって……。
 私たちはナトリちゃんの話を聞くことにした。









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