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二章 水の都
『蒼銀の歌姫』
しおりを挟む私たちはギルドを出て、カーナたちとの合流場所である昨日のカフェに向かった。
お昼ご飯と情報共有はそこですることになっている。
私たちが少し早く着いたのか、まだカーナたちは来ていなかった。
コーヒーを飲み三人で雑談をしながら待つこと一時間。
ようやくカーナたちが来た。
「遅かったわね。とりあえずご飯にしましょう」
「ふぅ~。結構歩き回ったから疲れたっすよぉ」
どうやら街中を散策しながら情報収集していたみたい。
カーナは案外余裕そうだが、少年たちは疲れ切った顔をしている。
「なんかみんなお疲れみたいだけど、無茶させてないでしょうね?」
「そんなことしないっすよ。ただお散歩しただけっすから」
カーナがそういうと少年たちから弱々しい抗議の声が上がった。
あれは散歩じゃないだとか移動速度と距離をもっと考えろだとかいっぱい不満があるみたいね。
「カーナ。彼らはまだ駆け出しの冒険者よ。あなたがお散歩感覚だとしても付き合わされる方はそうじゃないのだから、加減をしなさい」
「それは難しいところっすね~。できればこれも修行の一環だと思って頑張ってほしいっす」
相変わらずマイペースというか自分勝手というか。
少年たちが息を整えたところで注文していたランチセットが運ばれてきた。
お手軽なだけどガッツリ食べられるオーク肉を挟んだサンドイッチ。冒険者に人気のメニューだそうだ。
確かにこれはおいしそうね。
少年たちは早くも食べ始めていた。よっぽどお腹が空いていたのでしょうね。
私もルナちゃん分けながら食べる。ブラウは別で用意してもらった。
食事をし始めるとみんな集中して黙々と食べている。とても静か。
しばらくして食べ終わり、食後のコーヒーを飲んで一息ついた。
「リリィたちは協力者得られたっすか?」
「もちろんよ。ていうか、ギルドでも闇オークションについて追っていたそうよ。だからすんなりと話が通ったわ」
「なんだ。ギルドも動いてたんすね。それならどっかで自分らに声がかかっていたかもしれないっすね」
「そうね。カーナたちの方はどう?」
「自分らはそんなにっす。いろいろと危なそうな場所にも入ったんすけど、関係ないところの方が多かったっすね」
危ないところってなんだ。どんなところよ、それ。
少年たちが目で聞かない方がいいと促してくる。そんなに怯えた顔して。
余計に気になるけど、今は聞かないでおきましょう。
「確実に情報を得るなら、昨日の『窮鼠会』とかいう人たちを調べたほうがいいかもしれないっすね」
「あー、あの人たちねぇ……。ちょっと危険じゃない?」
「まあ、どれくらいの戦力があるか分かればいいんすけどねぇ。昨日みたいなやつらばかりなら余裕っすよ」
「そうだけど。あまり危ないことはしたくないわよ」
「今さら何言ってるんすか。闇オークションについて調べてる時点でもう危ないっすよ。変な輩に目を付けられでもしたら。いや、もう目をつけられてるっすね」
「……そうだったわね」
『窮鼠会』とかいう人たちにおそらく注目されてしまっただろう。
カーナが兄貴とか言われてた人の大剣を真っ二つにしたりするから。いやそれ以前にあそこで助けに入ったからね。
何より、あいつら私まで捕まえようとしてたから、なんかこれから狙われそうな予感。
自意識過剰とかそういうの抜きにしても、確実にそうなる気がするわ。
「とにかく、しばらくは情報集めることに集中するっすよ。ギルドで何か掴んでくれれば楽なんすけどね」
「私たちは私たちでやれることをしましょう」
今はできることをするしかないのよ。
いつの間にか私とカーナ以外がブラウに寄りかかって寝ていた。
カフェの中だというのに何をしているのかしら。迷惑じゃないコレ?
と思ったが、優しい店主さんがこれからも利用してくれるならいいって。ありがとうございます。
「少し寝かしといてあげるっすよ。ナトリちゃんなんかはたぶんそんなに眠れてないだろうし」
そうね。親友が誘拐されたと知ってから心休まる日なんてなかったのだと思う。
「そういえばギルドで面白い話を聞いたわよ」
「ん? なんすか?」
「『暗殺姫』って冒険者のお話し」
「ブフォ!!」
お。見るからに動揺している。
コーヒーまで吹き出しちゃって、カーナらしくないわね。
「暗殺者みたいに魔物を討伐するお姫様のような女の子の冒険者なんだって。カーナ知ってる?」
「そそそ、そんなの、し、知らないっすねー……」
「へ~。私、知ってると思ったんだけどな~。なんかカーナっぽいし。でもカーナが知ってたら教えてくれるわよねぇ。何でも私たちと同じパーティーに所属していたみたいだしぃ」
「もう、全部バレてるんじゃないっすか! 何なんすか、これ。いきなり辱めるなんてリリィも人が悪いっすよ!」
「別に辱めてなんかないじゃない。そんな二つ名があるなら教えてくれたっていいでしょ!」
「いやっすよ! なんでこんな恥ずかしい名前を自分で吹聴しなくちゃならないんすか! てか自分お姫様とか柄じゃないのにぃぃぃぃぃぃ!」
「いいじゃない。可愛いわよ?」
「……この際だから言っておくっすけど、リリィにも二つ名ついてるんすよ」
「……待ちなさい。いきなり何を言い出すのよあなたは」
「そんなに教えてほしいなら教えてあげるっすよ。リリィの二つ名は――」
「ねぇ、待って。私が悪かったから。一旦落ち着きましょう、ね。コーヒー飲んで……」
「『蒼銀の歌姫』っす! リリィもお姫様っすね!」
唖然とした。言葉も出ない。
私にまで二つ名ついているなんて。私なんて何も功績残していないのにどうして。
ていうか、私だってお姫様じゃないわよぉぉぉぉぉぉ!!
私の心の叫びは誰かに届くこともなく空へ消えていった……。
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