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二章 水の都
マキナのスキル
しおりを挟む「それじゃ、たんまりと知ってることを教えてもらいましょうかね」
「そうっすね。そうしてくれたらこっちの手間が省けるってもんすよ」
とても悪い顔をしている。
マキナさんとカーナが人には見せられないような顔をしている。
あの後、私たちはマキナさんに連れられギルドに来ていた。
そして、一番偉そうだったバトルアックスの男に話を聞こうとしているところだ。
ちなみにロゼちゃんとルナはブラウの上で寝ている。そしてブラウも。
私もそっちに行きたいのだが……。
「俺は何も言わねぇぞ」
「そりゃそうっすよね。だから話してもらうようにいろいろと方法をっすね」
「考えているのよ。何十通りとね。いつでも口を割っていいから、覚悟しなさい」
「ふんっ。冒険者って言ってもやることは俺たちと同じだな。目的のためなら何でもするってか。大して変わらねぇな」
「それは否定しないっすよ。依頼達成のためなら何でもやるっす。でも勘違いしないでほしいっす。あんたらみたいな犯罪者と違って、自分らは誇りを持って冒険者をやってるんすよ。――だから、あんたらと同じにするな」
珍しくカーナが怒ってる。
確かにカーナの言う通り、私たちは何でもする。それで依頼が達成できるし、生きることができるんだから。
そしてその行動に誇りを持ってやっている。ほとんどの冒険者が同じことを言うだろう。
……中にはカインみたいなのもいるけどね。
「それじゃ、一つずつ聞いていきましょうか。まず、オークションの開催日時は一週間後で合ってるわね?」
「……」
「二つ目。開催場所は闘技場と呼ばれる施設でいいのね?」
「……」
「三つ目。商品とは珍しいものだけでなく、人も商品として扱われている。間違いないわね?」
「……」
男は何も答えない。
簡単に口を割るような男じゃないのは分かっていたけど、何も反応しないのは何なのかしら。
「あとついでに聞いておきたいのだけど、ここ最近で妖精族とエルフの子が行方不明になっているの。あなたたちの組織が関係しているのね?」
「……」
やはり何も答えない。
「自分の故郷に伝わるお仕置き方があるんすけど、試してみるっすか?」
「正直それは気になるけど、今回はやめておくわ。それにそんなことしなくても情報は得られるのよね」
「え? そんなことできるんですか?」
「ちょっと特殊なスキルがあってね。それ使えば相手が知っていることを知れるのよ」
「へー。こういう時便利っすねぇ」
「そうよ。だからこうしてギルド本部で諜報部隊の統括をしているのよ」
初耳なんですけど。
諜報部隊の統括? そんなことしてたんですか、マキナさん。
そんな知ってるでしょう? とでも言いたげな顔で見られても知らないですよ。
それにカーナはどうして一人で納得してるような顔してるのよ。
何? 私だけなの? 私だけが知らなかったって言うの?
「そういうことだから、二人ともちょっと外で待っててくれる?」
「見ちゃダメなんすか?」
「あまり見せられないというか……見せたくはないかなぁ」
な、何をするのでしょうか……。
気になるがマキナさんからのお願いなので素直に外に出ることにした。
ブラウも起こして外に連れていく。
「……じゃ……すこ……覗かせ……わね……」
「……な……なんだ……やめ……」
声だけ少し聞こえる。
なんか少しドキドキするわね。
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!」
絶叫が聞こえた。
かなりの叫びだったから思わずビクッとなってしまった。
「な、何事!? あ、あたしじゃないのね……」
熟睡していたロゼちゃんも起きるほどだったようだ。
しかし、絶叫を聞いてあたしとはならないと思うのだが。
時々ロゼちゃんが分からない。
――そして待つこと三十分。
この三十分の間、途切れ途切れで絶叫が響き渡っていた。
終わったのか、マキナさんが扉を開けた。
「お待たせ。いろいろと面白いことがわかったわ。男は部下に連れて行ってもらうから、中で作戦会議しましょ♪」
不自然にテンションが高い。
一体何をしたんですか、マキナさん。
あえて聞かず、私は部屋に入りお茶を啜った。
……現実逃避って大事よね。うん。
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