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二章 水の都
リリナの剣技
しおりを挟む十分くらいしてカーナがやってきた。
その際ロゼちゃんは小脇に抱えられていた。
酷く真っ青な顔をしていたからどんなルートで来たか想像できるわ。
「来る途中でマキナさんにも応援を頼んだっすよ。しばらくしたらギルド関係者の方がするはずっす。
それにしてもお手柄じゃないっすか~。ネズミさんたちをこんなに捕まえるなんて。貴重な情報源をゲットっすよ」
「そんな軽々言ってるけどね、大変だったのよ私。こんな多勢で襲われて」
「そうは言っても傷一つ追ってないじゃないっすか。それにあんまり疲れているように見えないっすよ。大変だったっていうならもっと苦戦した感を出すべきっす」
うぐっ。相変わらずそういうところだけは鋭いんだから。
「しっかし、これなんて何したんすか? きれいに真っ二つじゃないっすか。おじいちゃんにもらった刀で切ったとは思うんすけど、自分そんなの教えてないっすよ」
「い、いやぁ、それは、無我夢中で振り回したら切れちゃったっていうか……意外と脆かったのかもしれないというか……」
「いやいや、このバトルアックスちゃんと手入れされてるっすよ。大事にされてるのが良くわかるっす。なので脆かったっていうことはないっすね。つまり、リリィは何か嘘をついていると言えるっす! さあ、観念するっすよ!」
「だから、どうしてそういうときだけ鋭いのよ! べ、別に隠してなんかないんだからっ」
「そんな取って付けたようなツンデレしたってごまかされないっすよ。さっさと白状するっすよ。じゃないと夜も眠れなくて、リリィの鍛錬時間がどんどん増えるっす」
「誰がツンデレかっ! ていうかそんなことで私の訓練辛くするんじゃないわよ!」
「さあ! さあ!!」
「……わかったわよ。まったく。ていうか私も無意識だったからあんまり説明できないわよ」
「大丈夫っす。何やったかだけ見せてくれればたぶんわかるっす」
そんなキラキラな目で見つめられても困る。
えーと、確かこんな感じで構えて……。で、こうやって……あれ、なんか体が覚えてるのかな。
あとは、集中して……こう!
私はさっきのように刀を振りぬいた。
うん。そうそう、こんな感じね。
「っ!?」
「こんな感じなんだけど、どう……って、カーナ?」
「リ、リリィ……? なんでそんなことできるんすか? いつの間に……っていうかどうして……」
「どうしてって言われても……。そう言えばママがこうやって刀を使ってたなぁって思いだして。それでなんとなく真似してみたらできた……みたいな?」
カーナがすごく真剣な顔をしている。
一体何か問題でもあったのだろうか。私何かやらかした?
いや、そんなわけないよね。普通に刀使っただけだものね。
「……リリィ。それは『居合』と言って、自分が教えた剣術とはまったく別物の技術っす」
「いあい?」
「そうっす。抜刀術とも言うっすけど。自分も詳しくは知らないので説明するのは難しいんすけど、達人レベルになると、刀身すら見えないほど神速の剣技になるとかならないとか……それが本当かどうか分からないっすけどね」
「つまり?」
「自分にはできないことをやってのけたってことっすね。しかも普通の居合じゃなかったっす。刀身が魔力でコーティングされていたので、かなり切れ味増してたと思うっすよ。人だったら胴体が上下にお別れになるくらいに」
絶句。
私がやったことはかなり難しいことらしい。
ママは日常的にやっていたけど。ウサギ狩るときとかにも。
そんな高度な技を狩りに使っていたなんて。ていうかどうして私が出来たのかしら。
「それにしても、ママさんが何者かも気になるっすね。リリィのママってだけでも興味があるのに、さらに会いたくなったっす」
「どうしてカーナがママに会いたがるのよ。ていうか私のママってだけで興味持たないでよ」
「いやいや、気になるに決まってるじゃないっすか。こんな娘を生んだ女性っすよ。興味持たない方が失礼に当たるじゃないっすか」
「こんな娘ってどういう意味よ!」
「言葉通りに決まってるじゃないっすか」
「なんですって! それなら私も言いたいことがたんまりあるんだからねっ!」
「なんすか! それならこっちだって今までの溜まってること全部言ってやるっすよ!」
野次馬と気絶した男たちに囲まれる中、私とカーナはいつものように言い争いを始めた。
そんな二人の様子を止めるでもなく、周囲の人たちは温かな眼で見守っていた。
私たちの言い合いはマキナさんがギルドの人を連れてくるまで続いた――。
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