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二章 水の都
撃退
しおりを挟む「あ、あの~、私に何か御用でしょうか? 特に悪いこととかしてないですし、何の変哲もない普通の女の子なのですが」
「そんなでかい狼連れてるやつが普通なわけあるかっ!」
おお~。ナイスツッコミ。意外とノリがいいなこの人たち。
見た目のインパクトすごいけど。
「お前、この前の女と一緒にいた奴だな。うちのボスがお前に興味深々でな。ちょいと面貸してもらおうか」
「この前の女性とは……? 生憎記憶にございませんが。それにボスさんとやらにもお会いしたことはないのですが」
「マジですか!? 兄貴、この子とは違う子じゃないんですか? もしかしたら人違いだったのかも! うわぁ、恥ずかしいっすわ~」
「なにバカな事言ってんだ! こいつ以外に銀髪で狼連れてるやつなんざ他にいねぇんだよ! 嘘に決まってんだろうが!」
「なっ! 嘘つくとは何て奴だ! やいやい。てめぇ、ちょーっと可愛い顔してるからって調子に乗んじゃねぇぞ!」
「お前がバカなだけだ! 話がそれるから少し黙ってろ!」
あ、殴られた。
どうやら子分にバカがいるらしい。
しかもそれにちゃんと相手してあげてるのがなんか面白い。
私を笑わせに来たのかしら。
「さて、お前さんに拒否権はないんだ。大人しくついてきてくれるなら痛い目を見なくて済むんだがな」
「そんな気はこれっぽっちもないわ。出直してくれる? こんな往来で他の人たちに迷惑でしょ」
「断るってんなら仕方ねぇ。力ずくで言うこと聞いてもらうぜ。野郎ども!」
うわっ。
なんかいつの間にか囲まれてるじゃない。
何処からこんなに出てきたのよ。三十人近くいるわ。
カーナがいれば楽なのに今は私一人。ブラウだとこの人数じゃ加減ができないしルナちゃんはそもそも加減をする気が無いわ。
もうすでに戦闘態勢で魔力を高めている。いつからこの子たちはこんなに血気盛んになったのかしら。
「お前自身が戦えないことは分かっているんだ。この人数じゃその従魔も大して役には立たないだろう。諦めるんだな」
「あら。随分とうちの子たちを舐めてくれるじゃない。私の従魔はとびっきり可愛くてとびっきり強いのよ!」
私も刀を抜いた。ゲンゾウさんにもらったやつだ。そう言えばまだ銘を決めてなかったわね。考えておきましょう。
しかし、久しぶりとは言え、カーナ直伝の剣術よ。それなりのできるはず。たぶん!
「おいおい。やる気かぁ? そんな細腕でどうするってんだよ」
「やりようはいくらでもあるのよ。ルナ!」
「ニャッ」
ルナちゃんに魔法を使ってもらう。
「うわっ。何だこれ。前が見えねぇ。どうなってんだ」
使ってもらったのは幻覚魔法。
全員の視界に急に霧がかかったようになっているだろう。
視界を奪ったらあとは簡単。
「ブラウ、後ろ半分はお願いね」
半分をブラウに任せ、私はルナちゃんと残りを片付ける。
気絶させる程度で慎重に。一歩間違えたら大変な事になるからね。
この刀、切れ味が良すぎてカーナにも注意されたわ。そんなもの素人に持たせるんじゃないわよって言いたい。でもゲンゾウさんありがとう。
「だあぁ、クソっ! 幻覚かよ。その猫も普通じゃねぇなぁ」
あと一人、兄貴と呼ばれていた男だけが自力で幻覚を何とかしたらしい。
意外とできるみたいね。
「あとはあなただけよ。形成逆転ね」
ブラウも終わったみたいで、気絶させた人たちの山の上でお座りしていた。
「チッ。ただでやられると思うんじゃねぇ!」
背負っていたバトルアックスを振りかざして迫ってくる。
あ、ちょっと待って。これを防御する術とか私ないわ。どうしましょう。
焦ったとき、いきなりママの姿がフラッシュバックした。
あれ? そう言えばママってこんな感じで……。
「あぁ? なんだぁ、剣を鞘にしまって、怖気づいたのか?」
タイミングを図って……集中……。
確かこうやって……今!
「は?」
振りぬいた私の刀がバトルアックスを両断していた。
男も何が起こったのかわからなかったようで呆気に取られている。
隙ありっ! ルナちゃん任せた。
「ぐあっ!」
最後はルナちゃんの電撃で気絶していただきました。
しかし、さっきの感覚はなんだったのだろうか。急にママのことを思い出したけど。
自分でも何したのかあまり理解できていない。
まあ、それを考えるより先にやることがあるわね。人も集まってきたし。
「この人たち、どうしよう……」
三十人も運べないし、とりあえず動けないように手と足を縛ったけど。
衛兵呼ぶ? いやでもなんか知ってそうだから情報吐かせたいし。
とりあえずカーナを呼びましょう。
あらかじめ決めておいた、ブラウの遠吠えによって私はカーナを呼んだ。
これですぐに来るでしょう。
……それにしても、疲れたわぁ。
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