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二章 水の都
再び樹海 *カーナ視点
しおりを挟むマキナさんと話してから一夜が過ぎ、自分たちは再び樹海にやってきたっす。
相変わらず光すら通さず先も見えないほど鬱蒼とした森っすね。
外から見ているだけで気が滅入るっす。
……しかし、隣の銀髪美少女――リリィはボケーっとした顔で森を眺めているっす。
まだ早朝。寝起きで準備させてきたからどうやら寝ぼけているみたいっすね。
ちなみにろぜっちはブラウの上で寝てるっす。ここまでブラウに乗ってきたっすけど一度も起きてないっすね。
昨日も寝てる姿をよく見たっすからかなり寝てるはずなんすけど、よくそんなに寝られるっす。少し羨ましい気もするっす。
「リリィ、そろそろ目を覚ましてもらわないと困るっすよ。こんな森の中で寝ぼけて迷子になっても知らないっすからね」
「べつに……こんなあさはやくから……くるひつようはなかったとおもうけど……」
あくびを噛み殺しながら話しているから舌が回ってないっすね。
マジでこのままだと危ないっすから少しだけ休憩するっすよ。
「ほい。コーヒーっす。これでも飲んで目を覚ますっすよ」
「ありがと……」
自分が淹れたコーヒーはかなり苦めにしているっす。
これでリリィもびっくりして目を覚ましてくれるんじゃないかと思うっす。
……そう思っていた時期が自分にもあったっす。
流れるような動作でミルクと砂糖を入れてるじゃないっすか。
しかも寝ぼけているとは思えないような動き。
一体どうなっているのやら。
「リリィ……ほんとは起きてるっすよね?」
「何言ってるのよ。さっきから話してるじゃない。つまり起きてるわよ。あたりまえでしょ。ただ眠いだけよ。
……それと、私コーヒーはミルクと砂糖がないと飲めないのよ。だからいつもこうしてるの」
「それにしては手慣れすぎでは。あと、そのミルクと砂糖はどっから出したんすか? 手品かと思ったっすよ」
「てじなっていうのは分からないけど、これはいつもバッグに入れてるわよ。こうやって外でコーヒー飲むときとか必要だし。というかミルクはこの子たちのために常備しているのよ。当然じゃない」
「そうっすね。その子らたまにミルク飲んでたっすね……」
確かに従魔たちがおやつ代わりにミルクを飲んでいるところをよく見ていたっす。
それにしても「手品」も言葉として通じないとは。相変わらず不便っすね。
あと、緊張感なさ過ぎて不安になってくるっす。
美少女は寝ぼけてるわ、妖精さんはずっと寝てるわ。大丈夫っすかね。
ここの樹海は結構危ないところってマキナさんに聞いたっすよ。
自分らが通ってきたところは比較的安全だっただけっすから、何が起こるかわからないんすからね。
もう少し危機感というものをっすね……。
「ふわぁ~ぁ。よく寝たわ~。……ここどこ? あたしいつの間にこんなところに? もしかしてあたしも誘拐されたのかしら。それも無理ないわね。あたしが可愛いせいなのだから」
「寝起きで何あほな事言ってるんすか。ちゃんと昨晩話したっすよ。樹海に行くって」
「そうだったわ。というかお腹空いたんだけど、朝ご飯はないのかしら?」
「それならサンドイッチがあるよ。それでいい?」
「構わないわ。さ、可愛いあたしに献上しなさい」
……調子が狂うっす。
こんなんで見つけられるのかなぁ。てか、樹海で迷子になりそうな予感しかないっす。
「カーナ? そんな微妙な顔してどうしたの? あなたも食べるでしょ?」
「……そっすね。いただくっすよ」
時々リリィは天然なのか鈍感なのかわからなくなる。
いつもは、私は危ないことはしたくないとか言ってるのに、いざそういう場面になると鋼のメンタルになってるし。
……こういうときミーシアさんがいてくれたら、そう思わなかったことはないっす。
これから樹海に行く雰囲気を感じられないまま、サンドイッチを一口。
……まあ、いっか。
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