ダンジョンで騙されたけど、伝説の剣を手に入れて復讐しながら冒険する。

語黎蒼

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第三話

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「遂にだ」

 ロットは服を脱いで裸になる。ロットの肉体はダンジョンに入る前と比べて数段に逞しく成長している。
 魔法の鞄に入っていた綺麗な服に着替え、その上に革の鎧を装備する。

「『理髪』」

 伸びたヒゲがパラパラと抜け、長かった髪が綺麗に切り揃えられる。
 ロットが修行中に編み出した生活魔法だ。この魔法のおかげで人並みの生活ことができた。

「ここを出るぞ!」

 ロットは夢幻剣を完璧に使いこなすことが出来るようになった。しかし一人での修行の限界を感じた。
あとはダンジョンの外に出て実戦だと考え、外に出る事を決めた。
 魔法の鞄には此処で育っていた野菜を全て引き抜き仕舞ってある。魔法の鞄は時間が止まるので腐ることはないので大量に持っていく。

「さてと……」

 ロットは夢幻剣が祀られていた祭壇まで歩いて行く。

「俺の予想では、この転移の魔法陣で外に出れると考えているんだけど……」

 夢幻剣を手に取ってから数分後に現れた魔法陣。ロットは外に出れる魔法陣と考えている。

「でも……もしも違ったらどうしよう。違ったらあの投げ込まれた穴を登らないといけなくなるぞ」

 ロットは魔法陣の周りを何周も回る。

「よしっ!ダメだったらその時はその時だ!」

 覚悟を決めて魔法陣へと歩み寄る。

「今の俺の力がどれくらい通用するのか外の世界で試したい!それに俺を生贄にしたアイツらを痛い目に合わせてやる!」

 ロットは1人の時間が長かったため、独り言が多い。

「……いや、違うな。アイツらに復讐するのは二の次だ。俺のやるべきことは全ての宝を手にした者トレジャーズマスターになることだ!!」

 魔法陣に勢いよく飛び込むと景色が一変する。

「ここは……?」

 上を見れば久しぶりに見る太陽が燦々と輝いていた。

「ダンジョンの外……?」

 ロットは後ろを振り返ると廃れて入口が岩で塞がれたダンジョンがあった。

「そこの剣士よ。金目の物を置いていけ」

 そこには10~12歳の少女が立っていた。少女は髪を後ろに一つに纏めて左眼を前髪で隠している。身なりは酷いもので薄汚れた服に身体の至るところに火傷の痕がある。

「金ならない……」
「そうか。だったらその腰に下げている剣を寄こせ」

 少女は持っていた剣でロットの腰を指す。

「教えてくれよ、どうして金目のものが欲しいんだ?」
「……拙者には時間がない。痛い思いをしたくなければ、さっさと寄こせ」

 ロットは会話を諦める。

「だったら、お互いにどんな手を使っても相手が持っている剣を奪った方が勝ちって勝負しようぜ」
「なに?」
「勝った方が言うことを聞く。どうだ?」
「……良いだろう。悪いが拙者は容赦はしない!」

 少女は剣を構えてロットに向かって行く。

「ミカヅキ一刀流!『華麗カレー!』」

 少女は剣を逆手に持ち、横にロットを斬りつけようとする。

「おっと……!」

 ロットも布に包まれた夢幻剣を取り出し受け止める。

「黒い剣……」

 夢幻剣を見た少女は驚いた顔をしながら距離を空ける。

「どうだ?カッコいいだろ。でもカッコいいだけじゃないぜ!夢幻剣バリエーション1『伸!』」

 少女に向けて夢幻剣を伸ばす。

「な?剣が伸びた?!」

 それを驚きながらも避ける。

「夢幻剣は自由に形を変えれる!こんな風にな!バリエーション2『縄!』」

 伸ばしていた剣を細く変形させる。ロットは手元を上手く動かして縄状になった夢幻剣で少女を捕縛しようとする。

「くっ!ミカヅキ一刀流『御無烈オムレツ!!』」

 少女は夢幻剣の捕縛から逃げる。

「やるな……!だが!」

 ロットは夢幻剣を思いっきり引っ張る。すると少女の片足が夢幻剣に捕まる。

「なに……?!」
「気付かなかっただろ?お前の足元で輪っかを作っていたのさ」
「っ……!」
「そして動けなくなればこっちのもんだ!」

夢幻剣が生き物のように動き、少女を捕縛する。

 ロットは少女の足元に落ちていた剣を拾い上げようとする。

「これで俺の勝ちだな」
「なめるな!ミカヅキ一刀流『殺蹴コロッケ!』」

 右足の親指と人差し指で剣を掴み、ロットへと攻撃する。

「なにっ!」

 既の所で躱して、剣はロットの頬を掠めた。

「くそ……」
「すっげぇ~。その体制から攻撃できるなんて……」

 ロットは剣を拾い上げる。

「俺の勝ちだ。さ、話してくれよ」
「え?」
「約束だったろ、勝ったら言うことを聞くって。俺はお前に追い剥ぎをする理由が聞きたいんだ」
「……分かった、話そう。この剣を解いてくれないか?もう攻撃はしない」

 ロットは夢幻剣を元の剣に戻す。
 解かれた少女は不思議そうにロットを見つめる。

「人を信用し過ぎだ……もし拙者が隠している武器で攻撃してきたらどうする?」
「その時は容赦なく俺も攻撃する」
「そうか。だが、あまり人を信用し過ぎると痛い目に合うぞ」
「ふっ……もう合ったよ」

 ロットは魔法の鞄を漁り、アイアンハートから預かっていた荷物の中から魔法使いのエミラのシャツとブーツを取り出す。

「そんな格好だとアレだろうからやるよ」
「すまない」

 少女は片腕で器用にシャツを着て、ブカブカの靴を履く。

「むう。着慣れぬせいか、なんだか肌がムズムズする……」
「贅沢言わずに我慢しろよ。あんなボロい布と、下に布を巻いただけよりかはマシだろ?」
「布ではない。サラシとふんどし、日の国の下着だ」
「日の国?あの『日の国』から来たのか?」

 じいちゃんが持っていた本で読んだことがある。日の国と呼ばれる完全に外界と鎖国している島国がある。その島の住人は変わった名前と変わった格好をしており、刀と呼ばれる珍しい形の剣で戦うと書いてあったの思い出す。
 だがこの少女が持っている剣は安っぽいショートソードだ。

「なあ……えっと」
「拙者の話をする前に自己紹介を先にさせてもらおう。拙者の名はミカヅキ・アオイ」
「俺はグラングド・ロットだ」
「ロット殿。拙者は拙者は日の国でミカヅキ流と呼ばれる剣術を九歳で極めた天才だった」
「だった?」
「うむ……2年前、屋敷が火事になり拙者は火傷により左腕と左目の視力を失った」

 アオイは隠れていた左の髪をあげる。左目の周りに火傷を負っており、瞳も白くなっていた。

「ミカヅキ流は二刀流だ……。片腕が無くなってしまってはミカヅキ流を完全には使う事が出来ない」
「……」
「拙者は日の国の外には、どんな怪我も治すことができる奇跡があると聞いた。だから動けるようになった半年前に国を出て探しているのだ」

 奇跡とはダンジョンにある宝や魔法使いの回復魔法のことだろうとロットは納得した。

「それがどうしてお金が必要なんだ?」
「うむ、それは先ほどのことだ……」
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