ダンジョンで騙されたけど、伝説の剣を手に入れて復讐しながら冒険する。

語黎蒼

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第七話

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 二台の馬車が街へ向かって森の中を走る。前の馬車には攫われていた女性たち四人、後ろの馬車にはロットとアオイ、それと攫われていた女性の一人とダイケツ、それに貴族の男ドーラが乗っている。
 ロットと攫われた女性の間にアオイが挟まれて座っている。その前には猿履と縄で縛られたダイケツとドーラが座っている。

「ロット様。アオイ様。助けていただき本当にありがとうございました。アオイ様には二度も助けていだきましたね」
「様だなんて付けなくてよい。拙者は助けたいから助けただけだからな」
「俺も同じだ」

 馬車内で攫われた女性の中で一番奇麗な身なりの茶髪の女性が頭を下げる。

「ありがとうございます……あ、自己紹介が遅れました。私はファリアス・キアナ。今向かっているラーセンシティで知る人ぞ知る有名な商会、ファリアス商会の娘なんです!」

 キアナはドヤ顔でキラキラとした瞳で紹介する。

「拙者は知らないな」
「俺も聞いたことないな」
「そうですか……ウチの商会ももっと頑張らないといけませんね」

 キアナの顔が真顔になり瞳から光が消える。

「そ、そういえばキアナさんはどうして攫われたんですか?」

 ロットは会話を途切れさすまいとキアナに質問する。

「大体の予想は出来ています……私が攫われた理由はこのドーラのせいでしょう」
「どういうだ?」
「この男は私と無理やりにでも結婚して商会を自分の物にしたかったんです」
「なるほど。この男も最低のヤツだったのだな」

 ロットはアオイとキアナの話を聞きながら前に座っているドーラを見ると、悔しそうな顔をしている。

「アオイ様とロット様にはダイケツに賭けられた賞金を貰えると思いますよ」
「こいつってそんなに有名な山賊だったのですか?」
「ええ。ダイケツと言えば強盗や誘拐で有名な山賊です」

 ロットとアオイは縛られているダイケツを見つめる。

「そういえばキアナさん。この腕輪って何か分かりますか?ダイケツが大事そうにしてたんですけど」
「……う~ん。見たことないですね」
「そうですか……探索者ギルドで鑑定をしてもらうことにします」

 ロットは横に座っているアオイを見ると難しい顔をして地図を見ていた。

「なにしてるんだ?」
「拙者が探していたダンジョンは攻略されていたので他のダンジョンを探しているのだ」

 アオイは地図を睨むように。

「ん?アオイ。その地図……書かれた年が一年前になってるぞ」
「え?そ、そんなわけがないだろう!この地図は親切なお婆さんから貰った最近の地図のはずだ!」
「そのお婆さんも古かったからくれたんじゃないか?」
「どれですか?」

 悩んでいるアオイの横からキアナが確認する。

「ロット様、違いますよ」
「ほれみろ!あのお婆さんはやっぱり最近の地図をくれたのだ!」
「三年前の地図ですね、この地図」
「え?」

 ロットは地図の製作された年号をもう一度確認する。

「まさか……俺は二年もダンジョンの中に居たのか?」

 驚愕の事実を知ったロットはショックを受ける。

「どおりでダンジョンがないはずだ……」
「あの~、そういえばラーセンシティにはですね!」

 そこから気を遣ったキアナはオススメの宿屋の話や美味しい料理の話を延々と話していると馬車が止まる。

「ラーセンシティに着きました!」

 御者をしていた女性が嬉しそうに報告する。

「私が関所に行って話してきます」

 キアナが馬車を降りて走って行く。

「アオイ」
「は、はい!」
「良かったらさ俺と一緒にダンジョンを」
「ロット様、アオイ様!関所の方を連れて来ました!」

 気が付けば、衛兵を三人引き連れたキアナが戻ってきていた。

「貴方がダイケツを倒した方ですか?」
「いや、俺じゃなくてこの子ですよ」
「そうでしたか。それではダイケツと誘拐を指示した貴族を連行させてもらいます」

 衛兵たちは馬車からダイケツら連行して戻って行く。

「ロット様、アオイ様。街に入りましょう」
「良いんですか?」
「はい。助けていただいたお礼に入国税などは支払わせてもらいましたので」
「ありがとうございます」

 ロットとアオイは街への門を通る。

「ちょっとそこのお兄さん!!待って待って!!」
「え?」
「うっ!」

 呼ばれたので立ち止まると後ろを歩いていたアオイがロットの腰に鼻をぶつける。
 後ろを振り向くと手を振りながら見知らぬ女性が向かって来ていた。視界の端ではアオイが痛そうに鼻をさすっている。

「俺になにか?」

 ボッサボサの長い髪と瓶メガネをした女性。知っている人かと思って女性を観察するが、全く知らない人だった。

「私はジャスミン、記者をやってるの!ちょうど明日の記事を探してんだよ!私ってめたくそラッキー!」
「記者?」
「そう!私って週に一度発行されるニュース新聞の記者なの!」

 ジャスミンは首に掛けている大きなカメラを自慢気に見せる。

「衛兵さんの話がチラッと聞こえたんだけど、あなたってあのダイケツを捕まえたんでしょ?!」
「いや、俺じゃなくて……」

 ロットは目線を落としてアオイを見つめる。

「え?!そなの?!こんな小さい女の子があのダイケツを倒したの?!」
「……いいえ。違います。倒したのはロット殿です」
「はあ?」

 アオイはプイっとそっぽを向く。どうやら目立ちたくないようだ。

「え?!どっちが捕まえたの?!」
「あ~……じ、実は俺が捕まえました」
「やっぱりそなの?!それなら相談なんだけどさ!記事にさせてもらって良い?!!」

 グイッとジャスミンはロットに詰め寄ってくる。

「まあ、別に構いませんが」
「やった!!それじゃあ……」
「ロット様、アオイ様!ダイケツの賞金についての話と助けてもらった女性のみなさんがお礼をしたいそうです!」

 ジャスミンが何かを注文しようとすると、キアナが五人の女性を引き連れて現れた。

「もしかしてこの女性の方々が攫われていたんですか?!」
「ええ、そうですけど」
「みなさん!新聞に写真を載せて良いですか?!」
「え?」

 ジャスミン以外の全員の頭の上にクエスチョンマークが浮かぶ。

「そうですね~……ロットさんを中心にして、助けられた女性の方々はお礼をしているような仕草で!」

 記事にする写真の構想をジャスミンはウキウキしながら説明する。

「おいおい、そんなことするわけ……」

 言い終わる前にキアナが腕に抱きついてくる。それに続いて他の女性たちもロットを取り囲むように集まる。

「ちょっ、キアナさん!」
「私たちなりのお礼ですよ」

 ニコリと笑うキアナにロットは言い返すことが出来なかった。

「はい!チ~~ズッ!」

 パシャリとフラッシュが焚かれる。アオイをチラリと見ると、腰に差した刀の柄に手を置いてカッコよく決めていた。
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