ダンジョンで騙されたけど、伝説の剣を手に入れて復讐しながら冒険する。

語黎蒼

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第八話

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「ロット様、アオイ様。これが賞金の五十万ゼニーです」

 関所に呼ばれたので行くと、ロットの前に札束が置かれる。

「俺は五万ゼニーくらいで良いよ。あとはアオイが持っていってくれ」
「それは出来ない!拙者こそ五万くらいで良いくらいだ!」
「お前ってさ……まあ良いや、なら面倒だし半分ずつにするか」
「ロット殿がそれで良いなら」

 アオイは助けてもらった立場なのでロットの取り分の方が多いのが当然だと考えたいた。少し不満そうにしながらロットからお金を受け取ると懐に仕舞う。

「攫われていた彼女たちはファリアス商会が責任を持って家に送りますね」
「はい、お願いします」
「それではお礼もしたいので是非、ファリアス商会に来て下さいね!」

 関所から出たあとはキアナと別れ、アオイと二人きりになる。

「アオイはこれからどうするんだ?」
「うむ……拙者もロット殿と一緒にギルドに向かおうと思っている。新しい地図が欲しいのでな」
「あーなるほど。ダンジョンに入るならアオイも探索者になったらどうだ?ギルドカードっていう身分証が作れるし便利だぞ」
「ふむ、たしかに身分の分かる物は欲しい。拙者も登録だけしておこう」

 ロットとアオイはギルドに向う。キアナに馬車で聞いていたので道を間違えることもなくトラブルもなくギルドに到着する。
 道中、アオイが街をキョロキョロと見渡しており、初めて見るのか獣人やエルフに驚いていた。

「ここがギルドか……」

 ギルドの前でロットは、あの日クレインに話し掛けられなければ自分はここに来て探索者トレジャーズになっていたのだと思うと感慨深くなる。

「すみません」
「どうされました?」

 ギルドに入ると人は数人しか居なかった。迷うことなく奥にある受付カウンターに座っている女性に話しかけると、笑顔で答えてくれた。

「探索者になりたいんですけど」
「はい。それでしたらこの紙に名前と年齢、それと職業を書いてください……っとその前にギルドカードに必要な写真を撮りますね」

 受付の女性はカメラを構える。

「はい、顔をこっちに向けて下さい。撮ります!」

 パシャリとフラッシュが焚かれる。ロットはこの街に来て二度目の写真撮影をされた。
 気を取り直し紙に名前を書こうとしたが、フルネームで書くと有名なじいちゃんの苗字で目立つのでロットだけにしておこう。

「ロット様ですね。年齢は17歳、剣士ですね。ギルドカードの発行には少し時間が掛かりますので、少々お待ち下さい」
「あっ!すみません。この子も登録したいのですが」
「はい?」

 受付の女性はロットの横に立っていたアオイに視線を落とす。

「その方もですか?そうですか ……ロット様。この方にギルドカードを発行することはおすすめしません」

 受付の女性はアオイの片腕を見て言う。

「拙者は強いので、そのような心配は不要だ。紙を出してくれ」

 受付の女性は紙を渋々とカウンターの上に出す。アオイも同様に書き終わると写真を撮られる。

「ギルドカードの発行には少し時間が掛かりますので、少々お待ち下さい」
「おいおい。まさか死ぬ前にこんなスゲエ宝具を拝めるとは思わなかったぜ」
「ギルド長?!」
「ギルド長?」

 受付の女性がカウンターの奥に向かおうとすると、白髪をオールバックにした50代後半の男性がロットたちの後ろから現れた。

「テスラ、コイツらは今から探索者になるのか?」
「はい。そうです」
「がっはっはっは!こりゃあ傑作だ!ダンジョンにも潜ったことがない奴が宝具を持ってるなんてな!」
「宝具……?この剣のことか?」

 ギルド長と呼ばれた男性は白いシャツと茶色いズボンとシンプルな格好をした男性はロットを見てバカにするように笑う。

「ダンジョンなら入ったことある。俺はその時にこの剣は手に入れた」
「はっ!ダンジョンはギルドカードがないと入れないだよ!ウソついてんじゃねぇ!」
「ウソじゃない。俺はアイアンハートってパーティーと一緒に入ったんだ」
「アイアンハートだ?馬鹿を言うな。そのパーティーなら二年前に解散したはずだ、ますます怪しい奴だな」
「なっ……!」

 ロットはアイアンハートが解散していたことに驚く。これでは文句を言うには一々メンバーを一人一人探さなければいけない。

「さっさと宝具を俺に渡せ、お前のような怪しい男にはその宝具は荷が重い」
「誰が渡すかよ」
「だったら力尽くで渡してもらうまでだ!」
「え?」

 目の前にいたギルド長が突然消えた。

「どうした?見えなかったか?」
「なに?!」

ロットはギルド長の声が背後から聞こえて驚く。

「もらった、うお!!!」

 布に包まれた夢幻剣をロットの腰から引き抜いたギルド長が倒れる。

「な、なんじゃこりゃ!!重っ!!」

 ギルド長は夢幻剣を手に乗せたまま倒れてジタバタしている。

「なに言ってんだ?夢幻剣が重いって……」

 もしかしたら夢幻剣は鞘を持っている者以外が手に持つと重くなる機能があるのではとロットは察した。
 夢幻剣をギルド長から退かしてやろうと手を伸ばしたが、ロットは先ほど散々言われたので退かす前に鬱憤を晴らそうと思い付く。

「タダで退かすのは嫌だなー」
「なに?!ふざけてないで退かさんか!」
「退かして下さい。お願いします。でしょ?ギルド長」
「なぜ貴様なんぞに!」

 ギルド長はロットを睨みつけるが、夢幻剣に右腕と右脚が乗っていて身動きが取れないので何を言われても怖くない。

「くっ!ど、退かして下さい……お願いします」
「先程は私めは言い過ぎました。ごめんなさいロット君。とも言え」
「ぐううう……この剣が退いたら覚えていろよ!小僧め!!……先程は私めは言い過ぎました。ロット君……ロット?黒い髪?お前さん、もしかしてグラングド・ロットか?!」

 ギルド長はロットの顔を見て脂汗が大量に流れる

「え?そうだけど」
「やはりか!!おい!ロット!これを退かしくれ!」
「急になんだよ?!」
「私は君のおじいさん、ガングから君がギルドに来たらよろしくと頼まれてたんだ!」
「じいちゃんの知り合いだったのか」

 ギルド長からの突然の話を聞いてロットは夢幻剣を退けてやる。

「お、おお……お礼は言わんからな」
「言えよ」
「ふぅ……にしても、どうして二年も経った後にギルドに登録に来たんだ?私はてっきり違うギルドにでも登録してしまったとばかり思っていた」

 立ち上がって服に付いた埃を払いながらギルド長は質問する。

「それには訳がありまして……」
「こんなところでは何だ……私の部屋に来なさい。そちらのお嬢さんも」
「うむ」
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