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王立貴族学院 二年目
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「……ではお詫びとして新学期が始まりましたら週一のパンでご了承いただけますか? 多めに焼きますのでメラオン王子殿下に伝手をお願いすることにします」
なんて王城を訪ねる代わりにしばらくはこれで誤魔化せればいいかなという打算もあったりして。
まあ今後、登城するよりはこっちの方が気が楽だもんね。
「多め? ……そ、れ、は、一体、どういうことなの?」
ひっ、3個目をひと口食べたローネ王女の顔がキッと鋭くなった。
「ええと、ランチタイムで週に1度、わたしの焼いたパンをご提供しているついでといいますか……」
「ええっ! まあ、何てこと! これまでメラオンお兄さまはお姉さまのパ、パンを、ずっと食していらっしゃったっていうの!?」
ヤバい、余計なことを言ってしまった? アンパンの件もあったりでてっきり事情は知ってるかと思ってたのに。
おい、王子よ。何故にお昼、継続的にパンを提供するようになったこと、話してない?
遠回しに所望したいって言われてからさすがに毎日は無理だから週に1度ぐらいならとせっせとずっと焼いてきたんだぞ。
もちろん毎回毎回提供しがいのあるリアクションしてくれて嬉しかったからそれ以外のことは何も気に留めてなかったけども。
そもそもランチ自体が高位貴族へ提供される特別なメニューだし、マリアのところの超特別なお茶も、メアリのところの高価な珍品も食べられる貴重な機会もあって充分役得だったのもある。
元パン屋の娘としてこの日だけは少し高価な小麦で作るパンを満喫出来て幸せを噛み締めていた背景もあった。
これはウィンウィンな状況。いや下手するとわたしが優遇され過ぎなのか……。
「いえ、あの、その……恐れ多くも昼食時に特別室を利用させていただいているのでそれもありまして……」
「私はアンパンしか食べたことが無かったのに……」
思い起こせば確かにパンは全て皆様で完食していたから残りモノなど存在しなかったっけ。
余りそうなら騎士くんがひょいパクと綺麗に平らげてたもんな。
毎回、空っぽのバスケットを見て達成感が満たされた気もしてたし。
「最も年に数回のお姉さまの手土産で我慢していたというのに、お兄さまはあぁぁぁ」
ああ、可愛らしい天使に黒い影が見える。そんな顔をしちゃ怖いですって!
何やら呪詛のような言葉も聞こえてくるような……。うう、もうこの辺でお暇すべきだ。
「あ……では、王女殿下、わたしはそろそろ失礼しますね、ごきげんよう」
トレイに並べてあったどら焼きをトングを使って小皿へ山積みにしてすっと後方へ下がる。
急いでドアへと向かいすっかり身に付いてしまったカーテシーでご挨拶した後、そそくさと王城を後にした。
ふう、危なかった。しばらく来ないつもりで代わりにと出した案が裏目に出てしまった。
あとはメラオン王子とローネ王女との間で解決してもらうしかない。
王子よ、頼むからこれ以上、戸惑わせる事態を増やさないでね!
今でも来訪すら恐れ多くてこの状況も受け入れられてる訳ではないし、巻き込まれてる感が否めないんだからさ。
王族間の揉め事は王族間でどうぞ! なんちゃって貴族からのお願いでした。
もうこれをきっかけにパンを提供することで来訪の機会を減らそうと企むことにするからね!
それに今はいろいろと余裕がないのは事実だし。
というのも春休みに入ったばかりなのに明日からも学園へ通わないといけないのだ。
恥ずかしいことにいろいろなツケが回って学業の方に支障をきたしてしまった、という状態。
……これがその余裕がない事情だったりする。
キルシェ先生曰く、進級はできるけどこのまま放置してたら今後が危ないってさ。
うん、例により、赤点スレスレだったんだよね、最後のテスト。
あの頃、チョコ作りに明け暮れて学業をちょっと疎かにしたのは悪かったけど誤字さえなければ十分な点は取れてたはず。
だけどその癖をあやふやにして直そうとしないまま誤魔化して1年間過ごしたからしっぺ返しがきたんだよね。
判ってるよ、自業自得って。毎回毎回『あぁ間違えてた~』で流してたもん。
で、この際、徹底的にこの悪癖を直せと指摘された訳。
まあ、そんな感じで特別な補習を受ける羽目になり、休暇が始まったばかりにも関わらず登校という苦行を強いられることになった。
もちろん先生がこの先を見据えて事前に手を打ってるってことも理解してる。
わたしはわたしでいつか直す……っていう日が来たと覚悟を決めたわけだしね!
とはいえ、伯爵家の令嬢としてお爺様には驚かせる出来事ばかりで申し訳ない。
駆け落ちしたお母さんで心労をかけたというのにわたしのことでも騒がせてばかり。
いきなり餡子の権利で富を得ることになるし、王族や高位貴族との付き合いも濃密。
元平民だったからトラブルがないようあれだけ気を張ってたのに。
だからこそ学園生活は問題なくと思ってたのにな。
はあ、転生した世界で学業に悩まされるとは思いもしなかったよ。とほほ。
なんて王城を訪ねる代わりにしばらくはこれで誤魔化せればいいかなという打算もあったりして。
まあ今後、登城するよりはこっちの方が気が楽だもんね。
「多め? ……そ、れ、は、一体、どういうことなの?」
ひっ、3個目をひと口食べたローネ王女の顔がキッと鋭くなった。
「ええと、ランチタイムで週に1度、わたしの焼いたパンをご提供しているついでといいますか……」
「ええっ! まあ、何てこと! これまでメラオンお兄さまはお姉さまのパ、パンを、ずっと食していらっしゃったっていうの!?」
ヤバい、余計なことを言ってしまった? アンパンの件もあったりでてっきり事情は知ってるかと思ってたのに。
おい、王子よ。何故にお昼、継続的にパンを提供するようになったこと、話してない?
遠回しに所望したいって言われてからさすがに毎日は無理だから週に1度ぐらいならとせっせとずっと焼いてきたんだぞ。
もちろん毎回毎回提供しがいのあるリアクションしてくれて嬉しかったからそれ以外のことは何も気に留めてなかったけども。
そもそもランチ自体が高位貴族へ提供される特別なメニューだし、マリアのところの超特別なお茶も、メアリのところの高価な珍品も食べられる貴重な機会もあって充分役得だったのもある。
元パン屋の娘としてこの日だけは少し高価な小麦で作るパンを満喫出来て幸せを噛み締めていた背景もあった。
これはウィンウィンな状況。いや下手するとわたしが優遇され過ぎなのか……。
「いえ、あの、その……恐れ多くも昼食時に特別室を利用させていただいているのでそれもありまして……」
「私はアンパンしか食べたことが無かったのに……」
思い起こせば確かにパンは全て皆様で完食していたから残りモノなど存在しなかったっけ。
余りそうなら騎士くんがひょいパクと綺麗に平らげてたもんな。
毎回、空っぽのバスケットを見て達成感が満たされた気もしてたし。
「最も年に数回のお姉さまの手土産で我慢していたというのに、お兄さまはあぁぁぁ」
ああ、可愛らしい天使に黒い影が見える。そんな顔をしちゃ怖いですって!
何やら呪詛のような言葉も聞こえてくるような……。うう、もうこの辺でお暇すべきだ。
「あ……では、王女殿下、わたしはそろそろ失礼しますね、ごきげんよう」
トレイに並べてあったどら焼きをトングを使って小皿へ山積みにしてすっと後方へ下がる。
急いでドアへと向かいすっかり身に付いてしまったカーテシーでご挨拶した後、そそくさと王城を後にした。
ふう、危なかった。しばらく来ないつもりで代わりにと出した案が裏目に出てしまった。
あとはメラオン王子とローネ王女との間で解決してもらうしかない。
王子よ、頼むからこれ以上、戸惑わせる事態を増やさないでね!
今でも来訪すら恐れ多くてこの状況も受け入れられてる訳ではないし、巻き込まれてる感が否めないんだからさ。
王族間の揉め事は王族間でどうぞ! なんちゃって貴族からのお願いでした。
もうこれをきっかけにパンを提供することで来訪の機会を減らそうと企むことにするからね!
それに今はいろいろと余裕がないのは事実だし。
というのも春休みに入ったばかりなのに明日からも学園へ通わないといけないのだ。
恥ずかしいことにいろいろなツケが回って学業の方に支障をきたしてしまった、という状態。
……これがその余裕がない事情だったりする。
キルシェ先生曰く、進級はできるけどこのまま放置してたら今後が危ないってさ。
うん、例により、赤点スレスレだったんだよね、最後のテスト。
あの頃、チョコ作りに明け暮れて学業をちょっと疎かにしたのは悪かったけど誤字さえなければ十分な点は取れてたはず。
だけどその癖をあやふやにして直そうとしないまま誤魔化して1年間過ごしたからしっぺ返しがきたんだよね。
判ってるよ、自業自得って。毎回毎回『あぁ間違えてた~』で流してたもん。
で、この際、徹底的にこの悪癖を直せと指摘された訳。
まあ、そんな感じで特別な補習を受ける羽目になり、休暇が始まったばかりにも関わらず登校という苦行を強いられることになった。
もちろん先生がこの先を見据えて事前に手を打ってるってことも理解してる。
わたしはわたしでいつか直す……っていう日が来たと覚悟を決めたわけだしね!
とはいえ、伯爵家の令嬢としてお爺様には驚かせる出来事ばかりで申し訳ない。
駆け落ちしたお母さんで心労をかけたというのにわたしのことでも騒がせてばかり。
いきなり餡子の権利で富を得ることになるし、王族や高位貴族との付き合いも濃密。
元平民だったからトラブルがないようあれだけ気を張ってたのに。
だからこそ学園生活は問題なくと思ってたのにな。
はあ、転生した世界で学業に悩まされるとは思いもしなかったよ。とほほ。
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