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始まりの刻
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奇しくも今日が私の15回目の誕生日だという本番の日。
さすが南国というだけあって気温は高く、太陽が照り付ける焼けるような暑さです。
そんな中、確かに、しっかりと、熱くなった石畳の上へきちんとブルーシートを敷きましたよ!
もちろん地面を汚さないため、巨大な紙の倍の大きさのものを、しっかりと。
現地の学生さんである細かく編み込んだ黒髪の女の子たちやニコッと笑うと白い歯が目立つ分厚い唇の男の子たちとともに、です。
太陽を遮る雲一つないカラッカラのいい天気のパフォーマンス日和。
日本と違って湿気が無いのが素晴らしいですね!
つい天候にこだわってしまうのは墨がある程度乾いてないと垂れる場合があり、せっかく書いた文字が滲んでしまい作品の魅力も半減してしまうからでして。
元々、作品を書き上げた後は垂直に掲げて全体を見てもらうので余計いかにして乾かすかということが大事なのです。
地面に置いてある巨大な紙の両端にポールが通してあるので持ち上げる時に垂れてしまったらもう悲惨です。
書いたら乾きやすいという好条件の下、もう成功するに間違いありません!
天気良好、一致団結、意気揚々と絶好調な状態。
全員で円陣を組み、手を重ね合わせ気合を入れてから、邦楽部小鼓担当の掛け声とともに本番が始まりました。
三味線と琴の勢いのある音色にそってリズムをとりながら私たち中等部組が構えましたもん。
前半担当の部長が書き始め、絆コンビの先輩が中心部へ筆を下ろし始めた頃、私も後半部分を書き始めました。
曲が佳境に入ろうとする中、ちょうど私が最後の一文字を書き終わった頃だと思います。
周囲で騒ぐ声が聞こえ、突然、渦を巻いたのような風が起こり、何故か私を包むように襲ってきた感じが。
咄嗟に危険を感じて床に伏せたはずだったのに、気が付いたら景色の違う石畳の上だったという……。
膝を強く抱きしめると胸元がかさりと鳴り、習字紙を忍ばせていたことを忘れてました。
今回は特に出番がなかったのですが、常に滲み防止策として余計な墨を吸わせるよう紙で押さえるために持っているのです。
その紙の存在で握っていた筆に目がいき、とりあえずはこれを使って……!
固まった筆先を習字紙で包み、頭に巻いていたハチマキを取ると柄から保護するようにそっと巻き付けて再び胸元へとしまいました。
あとできちんと処理すれば元に戻るはず、というより、必ず、元に戻さなければいけませんからね!
伝統のある大事な大筆、きっと守ってみせますから!
そんな決意を胸に手を握りしめたその時。
カツンカツンと床が響く音が聞こえて、どうやら誰かがこちらに近づいてきています。
不意にまぶしい光が暗い鉄格子内を照らし、目が慣れてくると先程この中へと案内した槍の二人だと判りました。
顔は覚えましたが、名前は知りませんのでもう勝手に名付けてみます。
顔の比重に比べて鼻の大きな方をAさん、口の大きな方をBさんとしておきます。
「おい娘、出てくるんだ」
重苦しい声色に言われた通り、行動を起こします。
だってさっきもここに来るまでこの二人に追い立てられながら自分で歩いて来たのですからね。
その途中、何か小さいものを踏んだのでまた気を付けないといけません。何も履いていないので。
まあ、これは仕方がないことですよね。演技中は紙を汚さないために素足が基本ですから。
その結果、裸足となってしまった今もそのままの状態で再び歩かざるを得ませんけどね。
さすが南国というだけあって気温は高く、太陽が照り付ける焼けるような暑さです。
そんな中、確かに、しっかりと、熱くなった石畳の上へきちんとブルーシートを敷きましたよ!
もちろん地面を汚さないため、巨大な紙の倍の大きさのものを、しっかりと。
現地の学生さんである細かく編み込んだ黒髪の女の子たちやニコッと笑うと白い歯が目立つ分厚い唇の男の子たちとともに、です。
太陽を遮る雲一つないカラッカラのいい天気のパフォーマンス日和。
日本と違って湿気が無いのが素晴らしいですね!
つい天候にこだわってしまうのは墨がある程度乾いてないと垂れる場合があり、せっかく書いた文字が滲んでしまい作品の魅力も半減してしまうからでして。
元々、作品を書き上げた後は垂直に掲げて全体を見てもらうので余計いかにして乾かすかということが大事なのです。
地面に置いてある巨大な紙の両端にポールが通してあるので持ち上げる時に垂れてしまったらもう悲惨です。
書いたら乾きやすいという好条件の下、もう成功するに間違いありません!
天気良好、一致団結、意気揚々と絶好調な状態。
全員で円陣を組み、手を重ね合わせ気合を入れてから、邦楽部小鼓担当の掛け声とともに本番が始まりました。
三味線と琴の勢いのある音色にそってリズムをとりながら私たち中等部組が構えましたもん。
前半担当の部長が書き始め、絆コンビの先輩が中心部へ筆を下ろし始めた頃、私も後半部分を書き始めました。
曲が佳境に入ろうとする中、ちょうど私が最後の一文字を書き終わった頃だと思います。
周囲で騒ぐ声が聞こえ、突然、渦を巻いたのような風が起こり、何故か私を包むように襲ってきた感じが。
咄嗟に危険を感じて床に伏せたはずだったのに、気が付いたら景色の違う石畳の上だったという……。
膝を強く抱きしめると胸元がかさりと鳴り、習字紙を忍ばせていたことを忘れてました。
今回は特に出番がなかったのですが、常に滲み防止策として余計な墨を吸わせるよう紙で押さえるために持っているのです。
その紙の存在で握っていた筆に目がいき、とりあえずはこれを使って……!
固まった筆先を習字紙で包み、頭に巻いていたハチマキを取ると柄から保護するようにそっと巻き付けて再び胸元へとしまいました。
あとできちんと処理すれば元に戻るはず、というより、必ず、元に戻さなければいけませんからね!
伝統のある大事な大筆、きっと守ってみせますから!
そんな決意を胸に手を握りしめたその時。
カツンカツンと床が響く音が聞こえて、どうやら誰かがこちらに近づいてきています。
不意にまぶしい光が暗い鉄格子内を照らし、目が慣れてくると先程この中へと案内した槍の二人だと判りました。
顔は覚えましたが、名前は知りませんのでもう勝手に名付けてみます。
顔の比重に比べて鼻の大きな方をAさん、口の大きな方をBさんとしておきます。
「おい娘、出てくるんだ」
重苦しい声色に言われた通り、行動を起こします。
だってさっきもここに来るまでこの二人に追い立てられながら自分で歩いて来たのですからね。
その途中、何か小さいものを踏んだのでまた気を付けないといけません。何も履いていないので。
まあ、これは仕方がないことですよね。演技中は紙を汚さないために素足が基本ですから。
その結果、裸足となってしまった今もそのままの状態で再び歩かざるを得ませんけどね。
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