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始まりの刻
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「娘、正直に名乗るんだ」
「そして正直に答えるんだぞ、分かったな」
ろうそくよりも明るいランプで照らされた鉄格子の中よりも少し広い石造りの室内。
背後から槍を持ったAさんとBさんの圧力を感じる声が聞こえます。
机を挟んだ向かい側には先程去っていったあの白馬の王子様(仮)が無言で座っています。
昼間見た姿と違ってほんの少し威圧感を感じます。
こ、これは刑事ドラマの尋問シーンに似てますよね。
ってことはここは取調室ですか?
「は、はい。先程お伝えしましたように橘窓香といいます。青蘭学園中等部3年、技能クラス、書道部所属です」
正直にということなので少し詳しく伝えてみましたよ。
当学園は1学年75名の規模となっていて、クラス編成は特進、語学、技能の3つに分類され、生徒全員部活は必須条件。
特進科は海外を含めた有名大学に入れるような頭脳の持ち主、語学科は世界の言語に長けている社交的で有能な方々、技能科は一芸に秀でた才能の持ち主という特色があります。
私は幸い小さい頃から書道という習い事のおかげで技能科への道が選択できた訳です。
もちろん並大抵のことで入学できる学園ではないのでそれ以外にも努力を重ねた賜物ですけどね。
兎にも角にも青蘭学園に入学でき、憧れていた書道部に所属し、中等部代表として今回行われていた友好行事に高等部の先輩たちと書道パフォーマンスに参加していた、はずなんですが……。
あれ?
……というか、私、何故普通に答えられたのでしょう?
ここは海外で語学科の生徒と違って会話はスムーズとはいかないはず。
明らかに外国語で話しそうな人物が目の前にいるというのに。
なのにそれがちゃんと違和感なく、意味が判るように聞こえてて……。
確かに挨拶程度の外国語なら返せますが語学クラスの同級生に比べたら雲泥の差です。
意識してなかったし、出会った時もそうですが、今、思いっきり母国語で答えました、よね?
先程と変わらない眼力で私を見ている若そうな男の人。
一文字に閉じられた口は無表情にしか見えず、怒っているのか何なのかさっぱり判りません。
やっぱり言葉、通じてないのかも?
だから一方的に視られているのかもしれませんね。
う~んとここはやっぱり世界共通の英語でしょうか。
簡単な会話とは思いますが、発音には自信がありませんけど、と、そんな風に思考を凝らしていたのですが。
「タ・チ・バ・ナ、マ・ド・カ……?」
出会った時も感じましたが顔立ちに似合っている綺麗な声が響きます。
おお~っ、名前、通じてます! 伝え間違いのないようにはっきりと名乗る、これ鉄則です。
あっ、もしかしてこの人たち、日本語が解る方、なのかもしれませんよね?
だとしたら非常に助かります! 何せ初の海外ですからね。
無表情ですが目の前の王子様もものすごく知的そうな感じですし、後ろの二人より年若風なのに私を尋問?しているってことは特にそうなのかもしれませんよね!
「は、はい! マ、ド、カです。橘窓香です! 日本から来ている、青蘭学園の!」
ここすらどこなのかよくわからない状態なので判っていることを伝えておかなければなりません。
早く先輩たちの元に帰りたいですし、筆も早くどうにか対処しないと気になりますしね。
「ではタチバナマドカ。この国へは何が目的で訪れている?」
「はい。この国との友好行事で来ました。日本の伝統文化を見てもらうためにこれで……」
そう言って、胸元にしまった筆を取り出そうと行動を起こした途端。
カシャーンと背後から槍が飛び出してきました!!!
「娘、何をするつもりだ! 嘘を言うな!」
「そもそもそのような行事ごとなどない。怪しげな奴め!」
胸元を押さえたまま固まるしかない私の背後で荒げた声と共に目の前の人物がため息交じりに呟きました。
「残念だが、……神竜の審判だ」
「そして正直に答えるんだぞ、分かったな」
ろうそくよりも明るいランプで照らされた鉄格子の中よりも少し広い石造りの室内。
背後から槍を持ったAさんとBさんの圧力を感じる声が聞こえます。
机を挟んだ向かい側には先程去っていったあの白馬の王子様(仮)が無言で座っています。
昼間見た姿と違ってほんの少し威圧感を感じます。
こ、これは刑事ドラマの尋問シーンに似てますよね。
ってことはここは取調室ですか?
「は、はい。先程お伝えしましたように橘窓香といいます。青蘭学園中等部3年、技能クラス、書道部所属です」
正直にということなので少し詳しく伝えてみましたよ。
当学園は1学年75名の規模となっていて、クラス編成は特進、語学、技能の3つに分類され、生徒全員部活は必須条件。
特進科は海外を含めた有名大学に入れるような頭脳の持ち主、語学科は世界の言語に長けている社交的で有能な方々、技能科は一芸に秀でた才能の持ち主という特色があります。
私は幸い小さい頃から書道という習い事のおかげで技能科への道が選択できた訳です。
もちろん並大抵のことで入学できる学園ではないのでそれ以外にも努力を重ねた賜物ですけどね。
兎にも角にも青蘭学園に入学でき、憧れていた書道部に所属し、中等部代表として今回行われていた友好行事に高等部の先輩たちと書道パフォーマンスに参加していた、はずなんですが……。
あれ?
……というか、私、何故普通に答えられたのでしょう?
ここは海外で語学科の生徒と違って会話はスムーズとはいかないはず。
明らかに外国語で話しそうな人物が目の前にいるというのに。
なのにそれがちゃんと違和感なく、意味が判るように聞こえてて……。
確かに挨拶程度の外国語なら返せますが語学クラスの同級生に比べたら雲泥の差です。
意識してなかったし、出会った時もそうですが、今、思いっきり母国語で答えました、よね?
先程と変わらない眼力で私を見ている若そうな男の人。
一文字に閉じられた口は無表情にしか見えず、怒っているのか何なのかさっぱり判りません。
やっぱり言葉、通じてないのかも?
だから一方的に視られているのかもしれませんね。
う~んとここはやっぱり世界共通の英語でしょうか。
簡単な会話とは思いますが、発音には自信がありませんけど、と、そんな風に思考を凝らしていたのですが。
「タ・チ・バ・ナ、マ・ド・カ……?」
出会った時も感じましたが顔立ちに似合っている綺麗な声が響きます。
おお~っ、名前、通じてます! 伝え間違いのないようにはっきりと名乗る、これ鉄則です。
あっ、もしかしてこの人たち、日本語が解る方、なのかもしれませんよね?
だとしたら非常に助かります! 何せ初の海外ですからね。
無表情ですが目の前の王子様もものすごく知的そうな感じですし、後ろの二人より年若風なのに私を尋問?しているってことは特にそうなのかもしれませんよね!
「は、はい! マ、ド、カです。橘窓香です! 日本から来ている、青蘭学園の!」
ここすらどこなのかよくわからない状態なので判っていることを伝えておかなければなりません。
早く先輩たちの元に帰りたいですし、筆も早くどうにか対処しないと気になりますしね。
「ではタチバナマドカ。この国へは何が目的で訪れている?」
「はい。この国との友好行事で来ました。日本の伝統文化を見てもらうためにこれで……」
そう言って、胸元にしまった筆を取り出そうと行動を起こした途端。
カシャーンと背後から槍が飛び出してきました!!!
「娘、何をするつもりだ! 嘘を言うな!」
「そもそもそのような行事ごとなどない。怪しげな奴め!」
胸元を押さえたまま固まるしかない私の背後で荒げた声と共に目の前の人物がため息交じりに呟きました。
「残念だが、……神竜の審判だ」
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