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容疑の民
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再び、鉄格子の中へと逆戻りです。
どうやらハチマキで巻いた筆を取り出そうとした行動が何かの武器と勘違いされ、怪しませてしまったようです。
すぐに拘束されてしまい、一応、筆ですと釈明してみたのですが、没収された上、聞き入れてもらえませんでした。
お二人には大事なものとかなり主張はしましたが大筆がどうなってしまうのか不安で仕方がありません。
と、そんな訳で何故か私自身が疑われているということが十分に理解できました。
確かに海外は危険もあると事前にレクチャーは受けてましたので不審なものには近づかず、集団行動に徹していましたよ。
けれどもこの場所に居るのは私一人みたいですし、一体、何の容疑がかかっているのかなんて皆目見当もつきません。
そういえば語学科の先輩が世界にはいろんな国があるからちょっとしたことで罰せられることもあるとか聞いたような気が……。
もしかするとそれに該当してしまい、こんな状態となってしまったのでしょうか?
さらにはすぐに退室してしまったあの王子様?が下した神竜の審判とは何なのでしょうか?
ひとつ溜め息をついた途端、お腹がぐうと鳴りました。
今、何時頃なんですかね?
思い起こせば朝早くに豪華な食事をしたきり、何も食べてません。
街から村まで長いことバスに揺られた後、すぐに準備に取り掛かり、本番という流れでしたからね。
終了後は歓迎会という名目でその村の御馳走がいただけるという話でしたし……。
あ、もしかしてその審判とやらはここで飢え死に処すということなんでしょうか?
お腹が減ったなぁとうなだれている中、バサッと何かが放り込まれる気配がしました。
「おい娘、着替えて出てくるんだ」
例の筆を取り上げたどちらかの男の声が響き渡ります。
声の方向を頼りに手探りで投げ込まれたものを探し当てました。
暗がりなのでよく判りませんが、形から判断するとワンピースみたいなもののようですね。
ガサガサとまるで麻袋のような固い感じで手触りがあまりよくありませんが、これ以上、大事な着物類を汚したくなかったので正直助かります。
着ていた上衣や袴は丁寧にたたみ、たすきを使って一つにまとめ、胸に抱えるとさっさと出ました。
大きな鼻が特徴のAさんだと判り、彼の持つランプの明かりを頼りに付いていきます。
指示に従い石の階段を上がっていくと地上です。周囲はもう夕刻なのか薄暗くなりつつあります。
今まで暗かった分、外の方がまだ明るく感じるのは不思議ですが。
「よそ見をするな、さっさと歩くんだ」
地上にいたBさんと合流した形で二人に挟まれるようにして追い立てられるように歩みを進めます。
何か大きな建物のそばを通り抜けるとどこからか馬の嘶きが聞こえました。
石畳から土の固い地面に変わり、小石が足裏に触れてきて痛いです。
しかも銀杏に近いような何とも言えない臭いが漂っていて正直臭いです。
そんな道を抜け、ようやく辿り着いた先は扉のない大きな小屋の前。
円形の草の束がむき出しになっていてどうやら草の保管庫といったところでしょうか?
「おい、お前の仲間だ。出てこい!」
Aさんが小屋の中に向かって叫ぶとガサリと音が響き、人の影が現れました。
ボロボロのワンピース姿の、私と同じくらいの女の子が。
どうやらハチマキで巻いた筆を取り出そうとした行動が何かの武器と勘違いされ、怪しませてしまったようです。
すぐに拘束されてしまい、一応、筆ですと釈明してみたのですが、没収された上、聞き入れてもらえませんでした。
お二人には大事なものとかなり主張はしましたが大筆がどうなってしまうのか不安で仕方がありません。
と、そんな訳で何故か私自身が疑われているということが十分に理解できました。
確かに海外は危険もあると事前にレクチャーは受けてましたので不審なものには近づかず、集団行動に徹していましたよ。
けれどもこの場所に居るのは私一人みたいですし、一体、何の容疑がかかっているのかなんて皆目見当もつきません。
そういえば語学科の先輩が世界にはいろんな国があるからちょっとしたことで罰せられることもあるとか聞いたような気が……。
もしかするとそれに該当してしまい、こんな状態となってしまったのでしょうか?
さらにはすぐに退室してしまったあの王子様?が下した神竜の審判とは何なのでしょうか?
ひとつ溜め息をついた途端、お腹がぐうと鳴りました。
今、何時頃なんですかね?
思い起こせば朝早くに豪華な食事をしたきり、何も食べてません。
街から村まで長いことバスに揺られた後、すぐに準備に取り掛かり、本番という流れでしたからね。
終了後は歓迎会という名目でその村の御馳走がいただけるという話でしたし……。
あ、もしかしてその審判とやらはここで飢え死に処すということなんでしょうか?
お腹が減ったなぁとうなだれている中、バサッと何かが放り込まれる気配がしました。
「おい娘、着替えて出てくるんだ」
例の筆を取り上げたどちらかの男の声が響き渡ります。
声の方向を頼りに手探りで投げ込まれたものを探し当てました。
暗がりなのでよく判りませんが、形から判断するとワンピースみたいなもののようですね。
ガサガサとまるで麻袋のような固い感じで手触りがあまりよくありませんが、これ以上、大事な着物類を汚したくなかったので正直助かります。
着ていた上衣や袴は丁寧にたたみ、たすきを使って一つにまとめ、胸に抱えるとさっさと出ました。
大きな鼻が特徴のAさんだと判り、彼の持つランプの明かりを頼りに付いていきます。
指示に従い石の階段を上がっていくと地上です。周囲はもう夕刻なのか薄暗くなりつつあります。
今まで暗かった分、外の方がまだ明るく感じるのは不思議ですが。
「よそ見をするな、さっさと歩くんだ」
地上にいたBさんと合流した形で二人に挟まれるようにして追い立てられるように歩みを進めます。
何か大きな建物のそばを通り抜けるとどこからか馬の嘶きが聞こえました。
石畳から土の固い地面に変わり、小石が足裏に触れてきて痛いです。
しかも銀杏に近いような何とも言えない臭いが漂っていて正直臭いです。
そんな道を抜け、ようやく辿り着いた先は扉のない大きな小屋の前。
円形の草の束がむき出しになっていてどうやら草の保管庫といったところでしょうか?
「おい、お前の仲間だ。出てこい!」
Aさんが小屋の中に向かって叫ぶとガサリと音が響き、人の影が現れました。
ボロボロのワンピース姿の、私と同じくらいの女の子が。
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