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おりのめぐむ

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容疑の民

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「えっ? ドラゴニア王国?」

 アニーさんが50音を覚えてくれたおかげで会話らしい会話ができるようになりました。
 地面に50音を書いてそれを指してもらう、いわば霊と会話する際に用意するあの紙の要領ですよね。
 もっともあっちは10円玉を使って自分で動かしているとかも言われてますし、似たようなものかもしれませんが。
 ここ数週間、私が話している言葉を棒で指して、それを覚えてくれたアニーさんには感謝です。
 だからこそ、こうやってやり取りができるのですからね。
 といっても私の知識からかなり判らないことだらけの情報で少し困惑気味だったりします。
 何でもこの国はドラゴニアという国名らしく、う~ん、世界のどこかにそんな名前の国があったかな?
 今の私では思い当たりません。地理に詳しい先輩方なら知ってたかもしれませんが。
 ともかく、今いる場所はドラゴニア王国といわれるところで竜を祀る信仰が主流の国とか。
 まあ、有名どころでは仏教とかキリスト教だとかありますし、その他諸々聞いたこともない変わった宗教もあるでしょうね、世界は広い。
 そういわれてみると台所仕事に行く建物の屋根には竜の飾り物がありました。
 馬小屋にも竜模様のプレートみたいなものも掲げてありましたし、確かに言われてみれば……、だらけでしたね。
 私は海外ってことでもうそれだけで浮ついてましたし、訳の分からない状態に巻き込まれていたこともあって細かなところに目がいってませんでした。
 自然に囲まれた村にいたと思っていたのですが実際はそうじゃなかったのかもしれません。
 バスの移動であの凸凹とした道に耐えるのに必死で外の景色なんて見る余裕もなかったのも事実。
 よく考えたら予期しないあの突風に巻き込まれて村はずれのどこかに吹き飛ばされてはぐれてしまったから誰も捜しようがないとか。
 確かに災害が起こった時、行方不明者を捜すのには困難を極めてましたもんね。
 私はここです! どうやらドラゴニア王国というどこかに居ます!
 一応、無事に生きてますよ! 日本人行方不明者の一人です! と心の中で叫んでみます。 
 それで肝心の神竜の審判、ですよ。
 竜信仰のある国のようですからどうも関係しているように思えますよね、普通。
 けれども、返ってきた答えはよくわからない。
 竜に守られている国だから竜に全てを委ねて判断してもらうとのこと。
 つまり、竜によって生死が決まる裁判なのだとか。
 法治国家ならぬ、竜治国家? ……意味、解りません。
 えっと竜が裁判官で静粛に、とかやるんでしょうか?
 というよりもこのご時世に竜なんて生物が存在するのでしょうか?
 う~ん、もしかすると干支にある竜? といえばタツノオトシゴとか?
 本当に訳が分かりません。
 アニーさんも詳しくは知らないみたいで、ただ怖いものだと。
 そんな訳で神竜の審判にかけられる人たちはほぼ死刑と同じ重い罪を持った扱いなんだとか。
 ということはかなりの極悪人ではないですか!
 私はただ災害に巻き込まれただけの行方不明者ですよ。
 そんなアニーさんは死を覚悟しながらこの1年を過ごしてきたことになるってことですよね?
 もちろんそもそもこうなった理由を詳しく聴いてみましたよ。
 どうやら下働きとしてどこぞの家に連れてこられたのに話せないアニーさんを薄気味悪がってこの街に放置させられたのだとか。
 当然、見知らぬ女の子が街をうろついてしかも話せないとなると怪しまれて有無を言わさず、あの鉄格子に入れられたのでしょうね。
 私がそうされたように、アニーさんも。
 こんなうら若き乙女を死に値する犯罪者扱いだなんて信じらません!
 それが1年に1度行われているという事実。
 何ていう国なんですか、ココは!
 怒りは沸々と湧いてきますが結局は何もできません。
 私たちはただ間近に迫る神竜の審判を待つのみとなったのです。
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