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容疑の民
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やはり、予想通りというか私と同じくロクに確認することなく、訳の分からないまま審判の方向になったことが判りました。
思い付いたままの質問で肯定か否定かでしか問えませんし、細かなことは聞けませんが、ちょうど1年前ぐらいにこの街に来てそのような状態になったようですね。
まだまだ知りたいことはたくさんあるのですが如何せん、時間が限られています。
食事も足りないこともあり、肉体労働ですから身体も休めなければいけません。
そして神竜の審判とは何なのかも未だに判らない状態です。
とにかく、”無実”と思われる私たちが容疑にかけられたまま、審判を受けなければいけない状況をどうにかしなければなりません。
そうは思っていてもどうにもできないのが今の現状。
夜明けとともに起きて食事にありつくために肉体労働を虐げられ、少ない食事で体力を回復しなければいけないという、悪循環。
このまま審判の時期まで何もできないのが悔しい限りです。
ですが何もせずに泣き寝入りっていうのも嫌だったりします。
無駄な体力を使わずして、どうにかならないのでしょうか?
そしていろいろと思考を巡らせて思い付いたこと。
そう、私は書道をやってるんでした。
文字です。文字。
アニーさんは話せないのだからこの機会に文字で会話できるようになればいいのだと気づいたのです!
とはいえ、英単語を網羅しているわけでもないのですが、何故か理由はともかく私の言葉が通じているのでここはもう、日本語を貫きたいと思います。
本来なら漢字や平仮名を駆使したいところですが、書くとなると割とシンプルと思えるカタカナを使うことにしました。
見た感じがカクカクしていて覚えやすそうな気がします。
何となくアルファベットにも近い形にも見えますし、漢字と違って画数が少ないですし、平仮名と違って曲線的ではありませんからね。
もちろん、ここには紙や鉛筆なんてありません!
そこはもう、地面ですよ。
表面を削りさえできれば何の問題ないのですから。
ちょうど馬小屋から落し物回収所までの道でほんの少し地面の柔らかい湿ったところがありました。
近づきすぎなければ多少の臭いさえ気にせずどうにかなります。
園芸用の発酵肥料と思い込めばいいんです! 気は持ちよう、きっと慣れもあるでしょう。
そんな訳で土の柔らかい場所で木の棒を使ってアイウエオから始めました。
何せ50音ですから字数は限られてますし、目安も立てられますからね。
アニーさんは最初は慣れないようでしたが直線的な文字のため、割とすぐに認識してくれました。
挙句の果てには自分の名前が書けるようにも!
もともと台所で見せていた皿洗い技術の腕前の持ち主。
1年前とはいえ、見知らぬ土地で状況を飲み込み、対応してきたんですからね。
話せない分、行動で補える才能があるのかもしれません。
そうやって毎日、少し睡眠時間を削ってどうにか50音を覚えてもらいました。
日々の作業は変わらず肉体労働ですし、食事も侘しい状態。
相変わらず台所の人たちや馬小屋の青年たちからもぞんざいな扱いのままでしたが、アニーさんとはずいぶんと距離が縮まった気がします。
私も筆ではないけれど毎日文字を書けるという充実感で空腹を紛らわすことができましたしね。
何より顔を見合わせれば笑いあえる関係が築けたのが唯一の成果です。
ああ、書道やってて良かった。文字のすごさに万歳です。
そんな風にしてあっという間に日にちが経ち、審判まであと1ヶ月を切ることになったのでした。
思い付いたままの質問で肯定か否定かでしか問えませんし、細かなことは聞けませんが、ちょうど1年前ぐらいにこの街に来てそのような状態になったようですね。
まだまだ知りたいことはたくさんあるのですが如何せん、時間が限られています。
食事も足りないこともあり、肉体労働ですから身体も休めなければいけません。
そして神竜の審判とは何なのかも未だに判らない状態です。
とにかく、”無実”と思われる私たちが容疑にかけられたまま、審判を受けなければいけない状況をどうにかしなければなりません。
そうは思っていてもどうにもできないのが今の現状。
夜明けとともに起きて食事にありつくために肉体労働を虐げられ、少ない食事で体力を回復しなければいけないという、悪循環。
このまま審判の時期まで何もできないのが悔しい限りです。
ですが何もせずに泣き寝入りっていうのも嫌だったりします。
無駄な体力を使わずして、どうにかならないのでしょうか?
そしていろいろと思考を巡らせて思い付いたこと。
そう、私は書道をやってるんでした。
文字です。文字。
アニーさんは話せないのだからこの機会に文字で会話できるようになればいいのだと気づいたのです!
とはいえ、英単語を網羅しているわけでもないのですが、何故か理由はともかく私の言葉が通じているのでここはもう、日本語を貫きたいと思います。
本来なら漢字や平仮名を駆使したいところですが、書くとなると割とシンプルと思えるカタカナを使うことにしました。
見た感じがカクカクしていて覚えやすそうな気がします。
何となくアルファベットにも近い形にも見えますし、漢字と違って画数が少ないですし、平仮名と違って曲線的ではありませんからね。
もちろん、ここには紙や鉛筆なんてありません!
そこはもう、地面ですよ。
表面を削りさえできれば何の問題ないのですから。
ちょうど馬小屋から落し物回収所までの道でほんの少し地面の柔らかい湿ったところがありました。
近づきすぎなければ多少の臭いさえ気にせずどうにかなります。
園芸用の発酵肥料と思い込めばいいんです! 気は持ちよう、きっと慣れもあるでしょう。
そんな訳で土の柔らかい場所で木の棒を使ってアイウエオから始めました。
何せ50音ですから字数は限られてますし、目安も立てられますからね。
アニーさんは最初は慣れないようでしたが直線的な文字のため、割とすぐに認識してくれました。
挙句の果てには自分の名前が書けるようにも!
もともと台所で見せていた皿洗い技術の腕前の持ち主。
1年前とはいえ、見知らぬ土地で状況を飲み込み、対応してきたんですからね。
話せない分、行動で補える才能があるのかもしれません。
そうやって毎日、少し睡眠時間を削ってどうにか50音を覚えてもらいました。
日々の作業は変わらず肉体労働ですし、食事も侘しい状態。
相変わらず台所の人たちや馬小屋の青年たちからもぞんざいな扱いのままでしたが、アニーさんとはずいぶんと距離が縮まった気がします。
私も筆ではないけれど毎日文字を書けるという充実感で空腹を紛らわすことができましたしね。
何より顔を見合わせれば笑いあえる関係が築けたのが唯一の成果です。
ああ、書道やってて良かった。文字のすごさに万歳です。
そんな風にしてあっという間に日にちが経ち、審判まであと1ヶ月を切ることになったのでした。
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