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おりのめぐむ

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容疑の民

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 反省を踏まえ、いろいろと考えた挙句、翌朝、朝食後に謝罪することにしました。
 私なりにこの生活環境も解ってきたことですし、信頼関係を築くにも大事かと。
 いつまでもアニーさんと向き合わなければ沈黙の日々が続くかと思えます。
 そんな訳で一連の作業を終え、乾草小屋へ戻ったところで声を掛けました。

「あの、アニーさん、いつもご迷惑をかけてすいません。後輩として配慮が足りないのは判っていますが、私はこのままの状況に納得がいってません。是非、ご意見やアドバイスを伺わせてください」

 なるべく丁寧に伝え、ペコリと頭を下げます。
 先輩に対する礼儀です。当たり前ですが。
 けれど、なかなか返答がないので上目遣いで様子を見ます。
 すると、アニーさんは顔を伏せたまま、ピクリとも動かない状態です。
 どう考えても様子がおかしい気がします。
 失礼とは思いますが顔を覗き込んでしまいました。
 私とは目を合わさないように悲しそうな表情でうつむいたままです。

「アニーさん、私が来たばかりに食事の量が足りなくて怒ってますよね? 新入りですから仕方なく面倒も見なくてはいけないだろうし、口もきいてくれないぐらい腹が立つのも理解できます。本当に申し訳ないです」

 できるだけ丁寧に伝えようとしますが目をそらすアニーさん。
 やはり、異国の者だと怪しいのでしょうか?
 ……とその時、アニーさんの瞳から涙がこぼれました。
 えっ、ええええ~~!?
 私、何か泣かせるようなこと、言いましたかぁ~~~???
 もう、訳が分かりません。割と強気な方なので威圧的に感じたのでしょうか?
 アニーさんは泣きながらただただ首を振ります。
 脅したつもりはないのですがどうしようもありません。
 泣き止むのを待つのみ、そう思った矢先、ふとよぎったこと。

「アニーさん、私の話している言葉は判りますか?」

 念のため、言葉の確認です。通じているかどうかってことですね。
 泣きながらもゆっくりうなずくアニーさん。
 言葉は通じているけれど、返してくれないってことは……。
 日々、何となくですが違和感はありました。

「あの、勘違いでしたらごめんなさい。もしかしてアニーさん、声が出ないというか話せない人、だったりしますか?」

 アニーさんは私をじっと見つめ、大きく頷きました。
 だから声を出したくても出せない状況だったということ。
 頷いたり、首を振ったりでの動作が多かったこと。
 話したくても話せない。終始無言だったのはそういう訳だったと。
 見た感じだと控えめで大人しく口数も少なそうなイメージですしね。
 ということはこの事情を皆さんは知っているのでしょうか?
 私を含めてですが容疑者仲間として他の方との必要最小限の接触と指示を仰がれた経験からして気が付かれてない様子が窺えます。
 それよりも相手から一方的に言われるがままの命令と解釈してもおかしくないと。
 あの尋問もそうですが、答えようがないと黙秘と捉えられたり、ちょっとした動作も怪しいと判断されたりと誤解を生じている気がします。
 明らかに罪人という色眼鏡で判断されており、下手をしますと無実なのに審判だと決められてしまったとか。
 私同様に訳の分からない状態で罪人扱いされている可能性有ですね、きっと。
 いつからここに居るのか分かりませんが、瘦せこけた姿や衣服の損傷からは過酷な時間を過ごしてきたと判断できます。
 私はひと息吸うと確認するように時間の許す限り、アニーさんを質問攻めにしてしまいました。
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