御招待ありがとう~書道ガールが洋風異世界へ~

おりのめぐむ

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領主の使用人

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 私は今、アニーさんと共にガタゴトと馬車に揺られながら移動しています。
 馬車といっても屋根のない荷台のようなものでしっかりと掴まっていないと危なげですけど。
 さっきから何度もお尻が宙に浮かび上がってハラハラしていますよ。
 歩いてきた行きとは違い、乗り物に乗れているだけでもマシなのかもしれませんね。
 これも神竜の審判さまのおかげというわけです。
 生き残った私たちの無実は証明されたのでこうやって晴れた身の上になったのです。
 罪人扱いされていた頃は後ろ黒いことがなくても疑いの目を向けられレッテルが張られても当然だったらしく、酷い態度をとられていたので誤解が解けて本当に良かったと思います。
 けれど、私が日本の学生であることは証明できず、身元不明者扱いは変わらないようです。
 学校でも両親でも下手をすればもしかすると国家規模としてでも捜しているかもしれません。
 そういえばカレンダーは見かけてませんが体感的に既に2カ月以上は経っていることでしょう。
 それなのにドラゴニア王国なる国にいることは伝えることができなくて解らずじまいです。
 ここが世界のどの位置にあり、そのくらいの規模の国なのかすら把握できないので地図が欲しいですね。

「あ、アニーさん、大丈夫ですか?」

 あの日以来、劇的に回復を遂げたアニーさんはすっかり元気を取り戻しました。
 きっとお互いに生きていると確認し、実感できたことで気力が増したのでしょう。
 今では隣で揺れる馬車に掴まっていられるぐらいになりましたし。
 アニーさんはこちらを見てゆっくり頷くとニコリと微笑みました。
 嬉しくて仕方ありません。生きて、そしてこんなに元気になったのですから。
 相変わらずアニーさんはしゃべることができませんが意思疎通はしっかりとれます。
 私も声を出せないことがあんなにつらいということは身に染みて分かりました。
 なので声を取り戻した私がしっかりとフォローしてみせますよ、はい。

「もうすぐ到着だ」

 Bさんが馬に跨りながらこちらに声を掛けます。
 どうやら今回はお迎え付きのようでした。
 気が付けば遠目に歩いてきた時に見た気がする景色が目に入ります。
 無実となった私たち二人なのですが身寄りがなく引き取り手がいないということで審判前にいた場所の領主さまが引き取ってくれることになったそうです。
 つまりは皿洗いや馬小屋の掃除をし、残り物の食事と乾草の寝床で過ごしたあの場所ですよね。
 再びあの様な生活が繰り広げられるのかと思うと覚悟しなければいけません。
 けれどもう無罪は証明されたのですから胸を張って堂々とできます。
 アニーさんがしゃべれない分、扱いに関してはしっかりと反発してみせますから。
 そう、きちんと一人分の食事は用意してもらわないと全然足りませんでしたからね! 
 育ち盛りの私たちはこればかりは決して譲れません!
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