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テンプレ小説の、顛末。

発端

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 あと少し、あと少し。
 バスに揺られながら最後の選択を迫られる。
 スマホを片手に選択肢をタップする。
 
 イヤホンを通じて相手の甘い声が響き渡る。
 ニヤニヤが止まらない。
 コングラチュレーション!
 画面上にヒロインとのキスシーンが表示される。
 そして、スタッフロール。
 エンディング曲が流れる中、私はスマホを握りしめた。

 やった、やったよ!!
 ついに攻略が完了。
 
 ここ数カ月、この乙女ゲームにハマり、複数のお相手を一人一人クリアし、裏ルートまで開放。
 モブキャラも攻略し、オールクリアしたんだ。
 つまり、コンプリート!!

 途中、邪魔されたりだとか、妨害させられたりとか苦難の数々。
 バッドエンドだって見てきたんだ。
 そんないろんな障害を乗り越えてハッピーエンド。
 課金せずにがんばったよ、私!!

 始めたばっかの頃は、正統ルートである王子に浸透。
 もう、かっこよすぎて押せ押せの攻略。
 ライバルである悪役令嬢の妨害にも負けずに苦労しつつも勝利を奪い、ハッピーエンドを迎えられたんだよなぁ。
 その途中、王子の護衛とか、宰相の息子とか少し気になったりして、2周目以降とかはそっちに走ったんだっけ。
 でも回数を重ねるうちに攻略の方にハマっちゃってどうやって落とすかって気持ちが高まった気がする。
 もちろん、甘いボイスも素敵だったんだけど、攻略することが目的に代わって義務的にもなってたかなぁ。
 だから、絶対コンプリしてやる!! って意気込んでたのかも。
 それもズルなしで。
 課金もせず、攻略サイトなんて絶対見ないと意地になって。
 だからこその達成感。
 時間は費やしたかもしれないけど、自分の力だけでクリアだもん。
 私、やったよ! やればできる子なんだよ!

 画面上には総キャラが描かれ、オールエンドの文字。
 高まっていた気持ちが急にしぼみ始める。
 そうだよね。
 今まで来る日も来る日もスマホ片手にゲーム三昧。
 寝食も惜しんでただ黙々とタップする日々。
 これだけ長い時間、共にした乙女ゲームのキャラ達。
 その日々が無くなるなんて、考えもしなかった。
 達成感は味わえたけど、明日からどうすればいいんだろう?
 何だかとても寂しい気持ちになってきた。

 と、その時、画面が切り替わる。
 黒い背景に選択肢の文字。

ーーー転生しますか? 
   ▶はい いいえ

 な、ナニコレ?
 オールクリアしたら闇のルートが開放するってヤツ?
 攻略サイトを見てないから判らないけど、実は…ってこと?
 そしたらまだゲームは続くってわけ?

 戸惑いながらもしぼんでいた気持ちが膨らみ始める。
 よっしゃ、もうひと踏ん張り頑張んなきゃね。
 私は はい を選択した。

 同時に大きな音と衝撃が走った。
 私は座っていた席から投げ出され、身体全体に激しい痛みを感じた瞬間、意識を失っていた。
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