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15.ブラータの小瓶の力

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こいつは私が絶対倒す!!

そして、この魔物を倒すにはあの力がいる!
私はラブータの小瓶を取り出し口に含んだ。

すると不思議なことにトビーの剣から紫色の炎が立ち始めた。
この剣にラブータの小瓶の魔力が宿ったのだと分かった。

「お前は・・シルク・・・」
「どうしてここに・・。お前は追放されたはず!」

私を見た魔物は私の名前を呼んだ。

「よく私が分かったわね。
私の方はあなたが分からなかったわ。
まさか、この城に住み着いている醜い魔物だなんて。
こんな薄汚い、醜い魔物と結婚しなくて本当によかったわ。」

「何を!!」

醜い魔物は私の言葉が気に入らなかったようで、
攻撃をしてくる。

けれど、私はこのトビーとの戦いで身体能力も向上し、魔物が近づいてくることも
許さない。

そして、この剣が攻撃をもろともせずに跳ね返す。

魔物がひるんでいる隙に、魔物の心臓めがけて一気に剣を突き刺す。

「うぅ・・・お前・・・」

魔物の体が一気に溶けていく。
そして黒い煙と共に消えていった。

でも、まだ私の復讐はここでは終わらない。
私を絶望の淵へと突き落とした、あいつを絶対に許さない。

私の憎しみと怒が剣へと注がれていくのがよく分かる・
剣はさっきよりも煌々と炎を上げ始めた。

私は部屋の端で気を失っているトビーにそっと囁く。

「あと一人片づけたらあなたのもとに戻ってくるわ。
それまで待っててね」


私は重たい剣を引きずりながら殺したいほど憎いあいつを探す。
そう、私を罠に嵌めた魔物。
「セシール」を。


廊下を突き進むと再び、恐ろしい地響きが聞こえた。
きっとまた、ここにも醜いあの魔物がいるんだわ。


そっと扉を開ける。
予想通り大いびきをかいて眠っている醜い魔物が居た。

気配を消し、魔物のそばへと近づく。

心臓めがけて剣を突き刺そうとしたその時。

「あんたに私が殺せると思ってるの?
バカにしないでよ。
私はあんたなんかに殺されたりしない」

驚いて振り返ると
ついさっきまでそこに横たわっていたはずの魔物が消えていた。

私の後ろに移動した醜い魔物は私を憎らし気に見ている。
この目つきは間違えなくセシールに違いない。
憎々しげに私を見てくる。

でも、もう私は負けない。
セシールには地獄に行ってもらわなければならない。

私は思い切り剣を振りかぶった。
セシールはゾロ王子に比べると動きが速い。

右へ左へ。
上へ下へとすごい速さで動いていく。

私も負けずセシールを追いかける。

セシールの攻撃はゾロ王子に比べると威力が違う。
いくらラブータの小瓶を飲んだからと言ってもダメージを食らう。
それにあの小瓶の力は一時間しか持たない。

時計を見るとあと3分ぐらいしかない。
いつまでもこんな追いかけっこをしている場合ではない。

でも、セシールの動きが早すぎて追いつくので精一杯。
一体どうすれば・・・

助けて!トビー!
と心の中で叫んだ。

その時
「おい!セシール!お前の目的は俺だよな!」

気を失っていたはずのトビーが立っていた。

「トビー!!やっと会いに来てくれたのね。
私はあなたの事をずっと待ってたわ」

醜い魔物は恍惚とした表情でトビーを見ていた。

「お前の呪いのせいで俺はひどい目に会った。でも、もうその呪いも今日で
解けると思うと嬉しくてたまらないよ。俺は絶対にお前を許さない。
お前を地獄に突き落としてやる!」

「そんなことは絶対にさせないわ!ねぇトビー、そんな悲しい事言わないで!
私を愛していると言ってちょうだいよ!」


魔物がトビーに気を取られている間に一気に距離を詰める。

トビーも私の横にやってきた。

セシールからの執拗な攻撃もこの剣はものともせず跳ね返す。

そして一瞬の隙をついて。
トビーと共に剣を握り、セシールの心臓めがけて剣を差し込む。
魔力を蓄えた剣は紫の炎を上げながら、セシールの心臓へと
深々と差し込まれてゆく。

深々と剣を差し込まれた体は
黒煙を上げた。
「あぁトビー・・・・私はあなたを本当に愛していたのに・・・・。」

そうつぶやきながらセシールも消えた。

絶対に復讐してやる!
そう思っていた私の願いは果たされた。

暫くするとトビーの剣は普通の剣に戻っていた。
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