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シチュー
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目の前にはとても香りのいい料理が出てきた。
きっと、誰もが目を疑うだろう。
その見た目は、黒かった。
まるで墨汁を垂らしたかのようなその見た目に反して、香りだけは温かみのあるクリーミーさが漂う。
「今日の料理は何かな?」
「シチューと御飯ですよ。」
そういって、白飯を追加で机に置く。
白飯は、何の変哲もなく、つやつやのお米に、白い湯気が立ち込める出来立てほやほやだ。
つまり、この黒い料理はシチューということになる。
そう、彼女はいつもこうなのである。
どこかは特出してよい点があるのだが、それ以外が異質な料理を目の前に繰り出す。
きっと今日の良い点は、この香りだろうか。
彼女は、満面の笑みで、自信ありげだ。
このような料理を運んできたとしても、僕は一切の文句も言わない。
それどころか褒めるのだ。
「今日は、いつも以上に香りのいい料理だね。」
「頑張って作ったんですよ。」
「今日は、黒色が気に入ったのかな?」
「そうじゃないの、イカを入れようと思ったのだけど、ついもったいないと思ったら、全部入れちゃってたのよ。」
彼女は、微笑ましいほどにきれいな笑顔を僕に向ける。
「イカはもらったの?」
「ご近所さんからね。」
「じゃあ、食べがいがありそうだね。」
僕は、いただきますと、彼女と手を合わせて食べ進める。
香りの中に生臭さはない。
しかし、スプーンですくうと、ニンジンやジャガイモなどと共にゴロゴロとしたイカの切り身が現れた。
そして、丸いものが一つ。
すくい上げると、それはイカの目玉だ。
「これは…。」
「もったいないかなーって思って入れちゃったわ。コラーゲン?」
なぜ、語尾にはてなマークを浮かべているのかはわからないが、彼女の作った料理だ。
僕はそれを口に入れる。
何とも形容しがたい味のするそれは、十分に火が通っているのか疑いたくなる代物だった。
「どうかしら?おいしい?」
「うん。おいしいよ。」
僕は、まるで甘いイチゴを食べたかのような笑顔で答える。
彼女は、僕に綺麗な笑顔で答える。
この瞬間が僕の癒しをこの上なく取り除いてくれると思っている。
僕は、彼女に悟られないように、数回嚙んだ後に簡単に飲み込む。
そして、白米を口に入れる。
とても、白米がおいしい。
最初のころと比べると、高品質で最高級の白米を食べているのかと錯覚するほどおいしい。
彼女は、少しずつ料理の腕が上がっている。
だからこそ、どんな料理が出てきても、僕は咎めず完食している。
彼女は、何の違和感もなく、自身の料理を食す。
彼女は、味覚が少し悪いのだ。
そんなところもお茶目で微笑ましく思う。
そして、手を合わせる。
「ごちそうさまでした。」
きっと、誰もが目を疑うだろう。
その見た目は、黒かった。
まるで墨汁を垂らしたかのようなその見た目に反して、香りだけは温かみのあるクリーミーさが漂う。
「今日の料理は何かな?」
「シチューと御飯ですよ。」
そういって、白飯を追加で机に置く。
白飯は、何の変哲もなく、つやつやのお米に、白い湯気が立ち込める出来立てほやほやだ。
つまり、この黒い料理はシチューということになる。
そう、彼女はいつもこうなのである。
どこかは特出してよい点があるのだが、それ以外が異質な料理を目の前に繰り出す。
きっと今日の良い点は、この香りだろうか。
彼女は、満面の笑みで、自信ありげだ。
このような料理を運んできたとしても、僕は一切の文句も言わない。
それどころか褒めるのだ。
「今日は、いつも以上に香りのいい料理だね。」
「頑張って作ったんですよ。」
「今日は、黒色が気に入ったのかな?」
「そうじゃないの、イカを入れようと思ったのだけど、ついもったいないと思ったら、全部入れちゃってたのよ。」
彼女は、微笑ましいほどにきれいな笑顔を僕に向ける。
「イカはもらったの?」
「ご近所さんからね。」
「じゃあ、食べがいがありそうだね。」
僕は、いただきますと、彼女と手を合わせて食べ進める。
香りの中に生臭さはない。
しかし、スプーンですくうと、ニンジンやジャガイモなどと共にゴロゴロとしたイカの切り身が現れた。
そして、丸いものが一つ。
すくい上げると、それはイカの目玉だ。
「これは…。」
「もったいないかなーって思って入れちゃったわ。コラーゲン?」
なぜ、語尾にはてなマークを浮かべているのかはわからないが、彼女の作った料理だ。
僕はそれを口に入れる。
何とも形容しがたい味のするそれは、十分に火が通っているのか疑いたくなる代物だった。
「どうかしら?おいしい?」
「うん。おいしいよ。」
僕は、まるで甘いイチゴを食べたかのような笑顔で答える。
彼女は、僕に綺麗な笑顔で答える。
この瞬間が僕の癒しをこの上なく取り除いてくれると思っている。
僕は、彼女に悟られないように、数回嚙んだ後に簡単に飲み込む。
そして、白米を口に入れる。
とても、白米がおいしい。
最初のころと比べると、高品質で最高級の白米を食べているのかと錯覚するほどおいしい。
彼女は、少しずつ料理の腕が上がっている。
だからこそ、どんな料理が出てきても、僕は咎めず完食している。
彼女は、何の違和感もなく、自身の料理を食す。
彼女は、味覚が少し悪いのだ。
そんなところもお茶目で微笑ましく思う。
そして、手を合わせる。
「ごちそうさまでした。」
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