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第五章
少女漫画でいうところのイベント
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夏樹(なつき) 勇気(ゆうき)は、いじめられている。
いじめっ子A、B、Cたちは、バカみたいに昨日を繰り返す。
殴る蹴る、暴言の繰り返し。
飽きなのだろうか。
ちなみに私は、この喜劇が好きだ。
誰の目から見ても明らかなほどつまらない芸術というものは、私のような、変人は逆に気にいるものだ。
彼がもし、人気の美男子だとしたら、もしくは面白いギャグなんかが言える人気者だとしたならどうだろうか。
きっと、彼はいじめられないだろう。
だが、それと同時に彼に減滅してしまうだろう。
私は、今の彼がいいのだ。
この情けなさが、より私のナニカを引き立たせる。
目を合わせてしまえば衝動が破裂してしまいそうな勢いだ。
私は今日も彼を待望の眼差しで見続ける。
どんな声で鳴くのか。
どんな顔で悶えるのか。
そのどれをとっても、私の中では完璧だ。
映画なんかでいじめのシーンを繰り返し見てみたが、余りにもつまらなすぎた。
やはり現実はフィクションよりも味がある。
作られたものは、結局は演技でしかないのだ。
いくら物を壊そうが、心を壊そうが、リアルに生きるいじめは、私の目や耳、肌を伝い、激しい衝撃を与えてくれる。
映画で臨場感のある表現を使っても足りないくらいだ。
私は、今その場にある花瓶をもって、このクラスの人間を次々になぎ倒してしまいたいほどに興奮が絶えない。
動物園の檻の中でさえ私を捕らえておけないほどに。
アメをねだる子供のように、私は彼のことが欲しい。
彼の身も心もすべて。
彼が、行動する権利。
彼が、表情を露わにする権利。
彼の生き死にに関する権利。
それらすべてが、私のものになればいいのにと常々考えるのだ。
いつか私が静かに構えたナイフに向かって、バカな犬のように飛びかかってきてくれないだろうか。
そうすれば、ひと時の快感に溺れ、最後に残った彼自身を私のものにし続けるはずだ。
もちろん、悲しみにはするが、おそらく一瞬だろう。
少しずつこ、の空間にも慣れが出てきた。
この教室の誰もが彼らを無視するように、私も無視してしまいそうだ。
彼らを見るとあくびが出そうになる。
生ぬるい。
追い込みが足らない。
私ならこうするという案が無限に浮かぶ。
彼を騙し、欺き、心も体もぐちゃぐちゃにし、最後には私のものにしてしまうのだ。
セミの抜け殻のようになった彼を優しく撫で、墓に入る瞬間まで見守っていたい。
何度もこの教室では激しい銃撃戦のような音が鳴り響く。
彼らはそうして、自分たちの生きる意味を見つけようとしているのだ。
なんと不器用なことか。
私のように、溶け込んでしまえば、平和に狂っていられるのにと思うばかりだ。
ちょっとやそっとでは治らないほど、私は末期だろう。
彼らはきっと、大人たちに一喝されてしまえばお終いだ。
だからこそ彼らは逃げ続けるのだろう。
バカみたいに。
彼にとってはいい運動だろう。
いい刺激だろう。
私にとっては、この日常が愉快で仕方がない。
彼がどう思っていようが、私が思っているので仕方がない。
実際問題、私は妄言を勝手に唱えるばかりで彼に危害は一切加えていない。
私は彼らとは違うのだ。
私は、彼が現れることを毎回期待しない。
ボロボロになってもう私の元にやってこないことを期待しているといった方が正しいだろう。
そのため、私の前に現れた瞬間、毎回のように予想外のときめきを覚えるのだ。
きっとこれは、行方不明になっていた犬が返ってきた喜びのようなものだろう。
そして、私は彼のために一言。
「大丈夫?痛そうだね。」
決まって彼は誤魔化すのだ。
滑稽にも彼は決まって一言。
「そんなことないよ。」
笑いをグッと堪えて、そのひと時を毎回のように終えるのだ。
狂笑を押し殺して。
彼はきっと私に魅了されていることだろう。
そう感じるたびに、彼が私のものになるときが近づくのを実感する。
私が自身の手で彼の首を絞める、その時まで耐え続けるのだろう。
私は、今日も彼を優しく教室へ帰す。
彼の背中を哀愁漂う目で見送りつつ。
いじめっ子A、B、Cたちは、バカみたいに昨日を繰り返す。
殴る蹴る、暴言の繰り返し。
飽きなのだろうか。
ちなみに私は、この喜劇が好きだ。
誰の目から見ても明らかなほどつまらない芸術というものは、私のような、変人は逆に気にいるものだ。
彼がもし、人気の美男子だとしたら、もしくは面白いギャグなんかが言える人気者だとしたならどうだろうか。
きっと、彼はいじめられないだろう。
だが、それと同時に彼に減滅してしまうだろう。
私は、今の彼がいいのだ。
この情けなさが、より私のナニカを引き立たせる。
目を合わせてしまえば衝動が破裂してしまいそうな勢いだ。
私は今日も彼を待望の眼差しで見続ける。
どんな声で鳴くのか。
どんな顔で悶えるのか。
そのどれをとっても、私の中では完璧だ。
映画なんかでいじめのシーンを繰り返し見てみたが、余りにもつまらなすぎた。
やはり現実はフィクションよりも味がある。
作られたものは、結局は演技でしかないのだ。
いくら物を壊そうが、心を壊そうが、リアルに生きるいじめは、私の目や耳、肌を伝い、激しい衝撃を与えてくれる。
映画で臨場感のある表現を使っても足りないくらいだ。
私は、今その場にある花瓶をもって、このクラスの人間を次々になぎ倒してしまいたいほどに興奮が絶えない。
動物園の檻の中でさえ私を捕らえておけないほどに。
アメをねだる子供のように、私は彼のことが欲しい。
彼の身も心もすべて。
彼が、行動する権利。
彼が、表情を露わにする権利。
彼の生き死にに関する権利。
それらすべてが、私のものになればいいのにと常々考えるのだ。
いつか私が静かに構えたナイフに向かって、バカな犬のように飛びかかってきてくれないだろうか。
そうすれば、ひと時の快感に溺れ、最後に残った彼自身を私のものにし続けるはずだ。
もちろん、悲しみにはするが、おそらく一瞬だろう。
少しずつこ、の空間にも慣れが出てきた。
この教室の誰もが彼らを無視するように、私も無視してしまいそうだ。
彼らを見るとあくびが出そうになる。
生ぬるい。
追い込みが足らない。
私ならこうするという案が無限に浮かぶ。
彼を騙し、欺き、心も体もぐちゃぐちゃにし、最後には私のものにしてしまうのだ。
セミの抜け殻のようになった彼を優しく撫で、墓に入る瞬間まで見守っていたい。
何度もこの教室では激しい銃撃戦のような音が鳴り響く。
彼らはそうして、自分たちの生きる意味を見つけようとしているのだ。
なんと不器用なことか。
私のように、溶け込んでしまえば、平和に狂っていられるのにと思うばかりだ。
ちょっとやそっとでは治らないほど、私は末期だろう。
彼らはきっと、大人たちに一喝されてしまえばお終いだ。
だからこそ彼らは逃げ続けるのだろう。
バカみたいに。
彼にとってはいい運動だろう。
いい刺激だろう。
私にとっては、この日常が愉快で仕方がない。
彼がどう思っていようが、私が思っているので仕方がない。
実際問題、私は妄言を勝手に唱えるばかりで彼に危害は一切加えていない。
私は彼らとは違うのだ。
私は、彼が現れることを毎回期待しない。
ボロボロになってもう私の元にやってこないことを期待しているといった方が正しいだろう。
そのため、私の前に現れた瞬間、毎回のように予想外のときめきを覚えるのだ。
きっとこれは、行方不明になっていた犬が返ってきた喜びのようなものだろう。
そして、私は彼のために一言。
「大丈夫?痛そうだね。」
決まって彼は誤魔化すのだ。
滑稽にも彼は決まって一言。
「そんなことないよ。」
笑いをグッと堪えて、そのひと時を毎回のように終えるのだ。
狂笑を押し殺して。
彼はきっと私に魅了されていることだろう。
そう感じるたびに、彼が私のものになるときが近づくのを実感する。
私が自身の手で彼の首を絞める、その時まで耐え続けるのだろう。
私は、今日も彼を優しく教室へ帰す。
彼の背中を哀愁漂う目で見送りつつ。
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