えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。

揚惇命

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5章 天下統一

曹家の分裂

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 曹丕が魏王を宣言し、孫翊が呉王、劉備が霊帝を主として蜀漢を建国した少し後のこと。曹丕はイライラしていた。

 曹丕「クソ、忌々しい劉備め。献帝を廃位して、俺が皇帝となる計画をぶち壊しやがって、怒りが収まらん!仲達、仲達は何処だ!」

 郭女王「曹丕様、そう目くじらを立てても解決しませんよ。今は、逃げた甄姫の行方を」

 曹丕「そんなことはどうでも良い!植の奴が匿っているのはわかっている。投獄して、何れ吐かせれば良い!それよりも今は、我が父のことだ。俺の計画が破綻したことをほくそ笑んでいるに決まっている。勢力を盛り返されては敵わん。仲達!仲達!早く来るのだ!」

 暫くしてやってくる司馬懿。

 司馬懿「我が君、お呼びと聞き、参上致しました」

 郭女王「お待ちしておりました司馬懿殿(この男は油断ならないわ。曹丕様を巧みに自らの策に絡め取り、裏から操る策士よ)」

 司馬懿「これはお楽しみをお邪魔しましたか?そのような鋭い目つきをされるなど」

 郭女王「いえ、曹丕様が思い悩んでおられましたので、表情が険しくなっていたようです。申し訳ございません(私としたことが危ない。愛する曹丕様を守ることができるのは私だけなのだから。この男に隙を見せてはならない)」

 曹丕「そう心配するな女王。仲達が来てくれれば、安心だ」

 司馬懿「話は察せられますな。劉備のことですな?」

 曹丕「あぁ。仲達のお陰で、中々道を譲らない父を排除し、魏王となった。次は献帝の排除を考えていたところを霊帝だと!?何故、幽霊が生きているのだ!断じて俺は認めん。認めん。故に、蜀漢に向けて、大軍を動員することを決定したいのだが」

 司馬懿「曹操様の従兄弟たち。即ち、我が君にとっても親戚となる者たちの動きですな?」

 曹丕「あぁ、叔父上たちが父を裏切ることはないだろう。そうなれば父が勢力を盛り返し、何れこの俺の排除に動くのは明白。これも全て、俺の計画を狂わせた忌々しい劉備のせいだ!」

 司馬懿「申し訳ございません。私がもっと慎重に動いていれば、いや密偵を放っておけば」

 曹丕「いや、仲達よ。お前が自分を責める必要はない。お前は俺のためによくやってくれている。お前が居なければ、俺は魏王になれなかっただろう。何か叔父上たちを縛る方法は無いものか」

 司馬懿「では、人質を取られるのが良いかと。曹操様への忠誠よりも我が君を選ばせるのであれば」

 曹丕「子供を人質に取るか。それしか無いと言うのなら、俺は末代までの恥を喜んでこの身に受けよう」

 司馬懿「我が君の覚悟、わかりました。では、こちらの方で人質に取り、脅しつけましょう」

 曹丕「仲達に全て任せる」

 司馬懿「はっ」

 親というのは、いつの時代も子供には甘いものである。曹操様か息子か。曹仁を始めとした曹操が見出した者たちの多くが決断を迫られ、息子を選んだ。

 曹仁「殿、このようなこととなり本当に申し訳ございません」

 曹操「気にするな子考。それにしても司馬懿の奴め。よほど俺のことが邪魔と見えるな」

 曹洪「どうかまだ包囲の狭まっていない今の間に遠くへお逃げください」

 曹操「子廉、俺の心配をするな。子供のことだけを考えよ。俺の馬鹿息子が迷惑をかける」

 曹洪「殿を裏切った俺に勿体なき御言葉。この身に変えましても曹丕様はあのクズから御守り致します」

 曹操「フッ。世話をかける。だが、俺は逃げん。天が俺の死を望もうとも俺が許さん。必ずやあの簒奪者から国を取り戻してくれようぞ」

 曹真「義父上!あのクズの魔の手はすぐ側に迫っているのです。どうかどうか逃げる御決断を」

 曹休「大恩ある義父上が無惨に殺されるなどあってはならないことです!」

 曹操「子丹に文烈、そんな泣きそうな顔をしてどうする。お前たちは、司馬懿に子供のために俺を殺せと言われたら殺すことを躊躇してはならんのだぞ?」

 曹真「そのような命令、聞けませぬ!」

 曹休「義父上に手をかけるなどできようはずが」

 曹操「この馬鹿共!そのような覚悟でどうする。司馬懿は、子供を人質に取るような男だ。お前たちに俺を殺せと命令するのも容易だろう。それを断れば、守りたいものたちが死に瀕するのがわからんのか!躊躇も遠慮も要らん!お前たちに殺される曹孟徳ではないからな!」

 曹真・曹休「義父上、わかりました。ここを出た後からは敵同士、俺たちはどんな残酷な命令でも従い、我が子の命を最優先としますことをお許しいただきたい」

 曹操「それで良い。司馬懿に絡め取られた哀れな父ですまぬ」

 郭嘉「曹操様のことはお任せを。幸い、僕の子供も飄々としてますから早々に曹丕様に忠誠を誓ってますから。私が好き勝手しても問題ないでしょう」

 夏侯惇「仁・洪、孟徳のことは心配するな。お前たちを失っても、まだ俺たちがいる」

 夏侯淵「殿のことは、惇にぃと守ってやっからよ。坊ちゃんのこと頼んだぜ2人とも」

 曹仁「夏侯惇殿・夏侯淵殿、承知した。某は、曹丕様の盾となろう」

 典韋「おい許褚、俺は決めた。殿の護衛は俺だけで十分だ。テメェは、若の護衛をしな」

 許褚「曹操様でなく曹丕様だか?典韋がそう言うならわかっただ」

 こうして、それぞれが守るべきもののため曹家は分裂することとなったのだ。
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