えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。

揚惇命

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5章 天下統一

陳留前哨戦(転)

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 曹仁は蜀漢軍の動きを見極めるため、徹底的な防備を敷いた。

 曹仁「皆には、この曹子考が付いている!」

 曹仁歩兵隊A「将軍、自ら前線に出張るなんて何考えて」

 曹仁「敵を把握するには、この目で見ないとな。それに陳宮は、失態したわけではない。まだ罠もある。誘い出せば良い」

 曹仁歩兵隊B「成程。将軍自ら巻き返しのための一計を」

 曹仁「そういうことだ」

 この陣形を見て、笑みが溢れる呂布。

 呂布「戦とは、やはりこうでなくてはな。明らかな罠と分かっていても曹仁自ら挨拶に来てくれたのだ。こちらも挨拶しないと失礼に当たろう」

 荀攸「まさか。まさか。1日で、こうも立て直してくるとは。どうやら陳宮の姿がないのを見る限り、頭を冷やさせたのかと」

 魏越「あのクソ野郎を戦場でぶっ殺せないのは残念だが。我ら呂布軍の恐ろしさ。曹仁の野郎に叩き込んでやるぜ」

 張遼「将軍のあの顔を見るのは随分と久しぶりだ。関羽殿といい。強者を相手にするとやはり笑うのだな」

 高順「嬉しさが隠しきれないんだろ。俺もわかるぜ」

 昨日と同じく、罠を回避して接近してくる蜀漢軍を見て、曹仁は確信する。

 曹仁「やはり。罠を看破しているか。ただの猪武者が蜀漢に仕えはせぬか。呂奉先、武だけで無く智を得たか。厄介この上ないといえよう」

 曹仁歩兵隊C「冷静に分析してる場合っすか将軍!?」

 曹仁歩兵隊D「このままじゃ。昨日と同じく、踏み潰されやすぜ!」

 曹仁「分かっておる。弓兵隊よ。今だ。矢を放て!」

 曹仁弓兵隊A「はっ!」

 罠を避け、押し寄せる蜀漢軍に対して、矢を放つ曹仁。

 呂布「流石に昨日みたいに簡単には近付けさせてくれぬか。だがこの程度の矢に臆する我らではないぞ!防御陣形に移れ!」

 呂布がそういうと、蜀漢軍は盾を構える騎兵隊が前面に。
 大きな盾を持ち、馬の手綱を操ることに長けた防御主体の騎兵。
 白馬儀従にも取り入れたのを呂布も自軍に取り入れた。
 向こうがホワイトナイトと呼ばれているのに対して、こちらはレッドナイト。
 全員が赤兎馬に乗る呂布の精鋭部隊の一部である。

 呂布騎兵隊A「矢など我らには通用せぬぞ!」

 曹仁弓兵隊A「何だ。あの大きな盾は。あんな物を持ちながら突撃状態を維持するなんて。無理です将軍!矢が矢が効きません!」

 曹仁「あんなものまで準備しているとは呂奉先。流石だな。良し、弓兵隊は矢の無駄撃ちを避け、下がれ。歩兵隊は受け止める準備をせよ」

 曹仁歩兵隊A「うおおおお。やってやるぜ。将軍をこんなところで失うわけにはいかねぇからなぁ!」

 曹仁歩兵隊B「俺だってやってやるぜ」

 そして合間見える曹仁と呂布。

 曹仁「罠を見破るとは見事!」

 呂布「1日でここまで立て直すとは見事!」

 曹仁「いがみ合う馬鹿どもをまとめるのは大変でな」

 呂布「いつでも上は苦労するものだ。だが、前線に出てきたのは間違いだったな曹仁!」

 曹仁「最近、話の聞かなかった今の貴殿のことを見極めるためには、これも仕方のないことだ」

 呂布「やはり気が合う。強者はこうでなくては」

 曹仁「一騎討ちのお誘いなら御遠慮しよう。ここで死ぬわけにはいかんのでな。今だ。呂布を孤立させよ!」

 後方でドカーンと音が鳴ると周りの落とし穴が吹き飛び、音に驚いた馬から振り落とされた兵たちが間一髪、落とし穴の近くに着地する。

 呂布騎兵隊A「呂布様!ご無事か?」

 呂布「こちらのことは気にするな!損害を確認するのだ」

 呂布騎兵隊B「かしこまりました」

 呂布「やってくれたものだな曹仁」

 曹仁「そちらが俺を討てば弱体化できると考えているようにこちらとて、貴殿の首を取ることで弱体化を狙うのは当然のこと。形勢逆転だ」

 呂布「フッ。素直に認めるしかない。だが、この呂奉先の首、くれてやるわけにはいかん。赤兎!」

 赤兎「ヒヒーン(何、御主人様ったら危機に陥っちゃってさ。やっぱり私が居ないと駄目なんだから)」

 曹仁「あの音で逃げたのでは?」

 呂布「フッ。我が赤兎があのような音にビビるものか。ビビって逃げた馬たちを宥めさせるために、逃げたように見せかけただけのこと。曹仁よ。良き出会いであった!この場はお前の勝ちだ。さらばだ!」

 曹仁「絶対に呂布を逃すでない!取り囲んでここで仕留めるのだ!」

 曹仁歩兵隊A「せっかく罠にかけたんだ。逃がさねぇぞ。うおっ」

 赤兎「ヒヒーン(無礼な男で失礼しちゃう。御主人様に近付かないでくれるかしら?)」

 曹仁歩兵隊B「馬を馬を狙え!がっ」

 赤兎「ヒヒーン(あら、そんな槍なんて、私の身のこなしには付いてこれませんことよ!)」

 みるみる遠ざかっていく呂布を尻目に曹仁は苦虫を噛み潰す。

 曹仁「クソ。この好機を活かせぬとは。呂布よ。次はこうはいかんぞ」

 その頃、呂布は赤兎を撫でていた。

 呂布「よく来てくれた。ビビって逃げたと思ったぞ。ハハハ」

 赤兎「ヒヒーン(まぁ。失礼しちゃう。私が御主人様を置いて逃げるわけないじゃない。逃げた子たちを宥めるのに忙しかっただけよ)」

 呂布「ふむ。しかし、音の大きな爆弾とは。騎兵主体の我らにとって、油断ならない相手となるな」

 赤兎「ヒヒーン(あら、馬にも耳栓を付けたら良いのよ。あの、義賢の馬がしてたじゃない。耳から何か紐みたいなの垂れてたじゃない)」

 呂布「そうか。そうだな赤兎のいう通りだ!」

 赤兎「ヒヒーン(御主人様ったらそういうところはまだまだ青いんだから)」

 呂布「いや、あれって誰に注文したら良いのだ?」

 赤兎「ヒヒーン(駄目ねこれは)」

 こうして呂布は、無事に皆の元に戻ってきた。
 幸いにも運悪く数人が落とし穴に落ち、命を落としたが目立った損害はその程度で済んだ。
 罠に嵌められてこの損害なら御の字といえよう。
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