えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。

揚惇命

文字の大きさ
683 / 821
5章 天下統一

陳留前哨戦(結)

しおりを挟む
 無事に戻ってきた呂布に安堵の表情を浮かべる面々。

 荀攸「貴方は御自身の立場がお分かりなのか!」

 呂布「ハハハ。ついつい、向こうが出向いてきてくれたものだから挨拶をとな」

 張遼「それで孤立させられていては」

 呂布「全員で行かなかっただけましであろう」

 成廉「将軍だけずるいぞ!一番槍はこの俺に」

 魏越「抜け駆けは許さないと言っただろう成廉」

 呂布「次はお前たちに任せるさ」

 侯成「では、やはり」

 呂布「あぁ。曹仁は強敵だ。赤兎のお陰で事なきを得たが。向こうも同じ事を考えていた。今回は完全に俺の負けだ。ハハハ」

 王凌「こうして無事だったから良かったものを。将軍に何かあれば叔父に合わせる顔がありませんでしたよ」

 呂布「まだまだ王允に合うわけには行かんさ」

 魏寧「本当に心配したんだからね。護衛を置いていくなんて酷すぎる」

 魏続「妹を宥めるのに苦労しましたぞ将軍」

 呂布「世話をかけたな魏続。こうして無事だったのだ。魏寧よ。敢えて危険だから置いていったのだ。許せ」

 曹性「騎兵隊の皆が将軍の孤立を知らせにきた時は肝が冷えましたよ」

 呂布「心配かけたがこの通り無事だ。だが、大きく戦略を変える必要がある」

 荀攸「成程、曹仁はやはりそこまでの男だと」

 呂布「うむ。自らを囮に俺を誘き寄せ、あまつさえ罠にかけて見せた。危険度は随一であろう。俺とて、一つ間違えればこの首が無かったかもしれん」

 高順「殿がそこまで言うとは」

 呂布「まぁ、簡単に倒せるほど脆弱ではない。ゆるりといくしかあるまい」

 その頃、魏軍陳留城内。

 牛金「曹仁様、良くぞご無事で」

 王双「殿が出陣したと聞いて、居ても立っても居られず」

 陳宮「だから無事だと言ったであろう」

 牛金「テメェ。元はと言えばテメェのせいで、曹仁様に頭を冷やせって言われたんだろうが!」

 陳宮「責任転嫁ですかな」

 牛金「んだと!」

 曹仁「まだ頭を冷やしきれていないと見える。もう一度、頭を冷やすが良い」

 スタスタスタとその場を後にする曹仁。
 取り残された2人は尚も言い合いをしていた。

 牛金「またテメェのせいで曹仁様に怒られちまったじゃねぇか!」

 陳宮「そちらがいちいち突っかかってくるからでは?」

 牛金「やっぱりテメェとは馬が合わねえ!誰がテメェの作戦なんかに従うかってんだ!行くぞ王双、手柄をあげれば曹仁様も納得してくれる」

 王双「おい、待てって牛金!勝手な事したらそれこそ殿を怒らせるだけだって!おい、マジかよ!」

 牛金は大柄な男とぶつかった。

 牛金「ぶつかってんじゃねぇ、ぞ?」

 ???「何だ小さいの。子考はいるか?」

 牛金「テメェ、無視すんじゃねぇよ!」

 ???「テメェではない。お前こそ俺が誰だか知らないのか?曹子廉だ」

 牛金「そ、その名前は。そ、曹洪様!?し、失礼しました!殿なら執務室に」

 曹洪「そうか。では失礼する」

 牛金「で、デケェ。アレが曹操様の矛と言われる曹洪様だったなんて。そもそも敵がここにいるわけねぇだろ」

 何故、曹操と共に居るはずの曹洪がここに来たのか。

 曹洪「失礼するぞ子考」

 曹仁「その声は子廉か!?何故、ここに?」

 曹洪「殿から苦戦を強いるだろう子考の援護を頼まれた。攻撃は俺が担ってやる。守りは任せるぞ」

 曹仁「殿の方が苦戦を強いるだろう。洛陽に向かわれていると」

 曹洪「あぁ。青州は鮑信を総大将に于禁が副官を務め、陽動している。そもそも今、必要なのは洛陽から長安に出て、漢中から益州に向かう事だ。敵の主要拠点を食い破らねば勝てぬからな」

 曹仁「あぁ。それはわかっている。だからここで耐えろと」

 曹洪「ここで徐州を取れればどうだ?敵は、なすすべなく多くの人材を失うとは思わないか?」

 曹仁「まさか、ここに来て、徐州を奪った後での青州への挟み撃ちか。郭嘉殿の策か?」

 曹洪「あぁ。最も厄介な相手を青州から先なにもできないようにさせるようにとな」

 曹仁「劉義賢か」

 曹洪「そんな顔をするな。あの御仁に恩があるのはお前だけではない。曹丕様に人質を取られた多くの者が恩がある。だがこの戦を殿が決めた時、迷いは捨てたはずだ」

 曹仁「息子に言われたのだ。恩知らずな事をする奴は愚か者だとな。子廉、お前は劉義賢を殺せるか?」

 曹洪「それが殿のためならば」

 曹仁「そうか。わかった。呂布はこちらに釘付けにしておく。徐州への攻撃は子廉に任せる」

 曹洪「あぁ、任せておけ。あぁ、さっきぶつかった奴、子考のは部下ならきちんと教育しておけ。ぶつかった後、啖呵をきってきた」

 曹仁「わかった」

 曹洪が去ると曹仁は深いため息を吐く。

 曹仁「ハァ。殿は何を考えているのだろうな。英雄は2人も立たないと蜀漢に戦を仕掛けたが。本当にそれだけなのか?何やら殿は、劉備との戦を楽しみつつ。別の狙いがあるように思える。徐州を取って、劉義賢を孤立させて、何を狙っている?司馬懿だけでなく曹丕様の行方もわからない状態で。昔の殿なら戦よりも曹丕様の搜索を優先したはず。ハァ」

 曹仁の懸念はもっともだ。
 曹操は劉備との戦を楽しんでいた。
 これが何やら大きな陰謀に巻き込まれている可能性を示唆していても。
 飛び込んでから考えれば良い。
 それが曹操という男である。
 じっとしているぐらいなら大きく動く。
 陳留の前哨戦は、少数の歩兵隊の壊滅。
 呂布騎兵隊の一時撤退で、痛み分けとなった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?

九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。 で、パンツを持っていくのを忘れる。 というのはよくある笑い話。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

処理中です...