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5章 天下統一
囚われの曹真
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一瞬、何が起こったのかわからなかった。
虎豹騎隊を率いる将軍として、奇襲を仕掛けて来た蜀漢の軍を追い、気付いたら縄で縛られている。
それが今の曹真の心情だった。
曹真「うっ。ここは?」
劉虎龍「ふわぁ~。ホントごめんね曹真さん。うちの部下が殴り飛ばしちゃったみたいで」
自分の名前を気安く呼ぶ目の前の小僧に怒りも湧いてくる。
曹真「貴様は誰だ?俺をどうするつもりだ?」
劉虎龍「ふわぁ~。別にどうもしないよ~。封兄上に手柄を取らせるための布石に使うぐらいかな」
名前を名乗らず目的だけいう小僧に曹真の怒りは増長していた。
曹真「貴様の名前を聞いてるのだ!」
劉虎龍「ふわぁ~。ちょっと、ちょっと怒んないでよ~。眠気が飛んでいっちゃうじゃないか。劉備が嫡子の1人、劉虎龍だよ」
劉備の子供、これが?
曹真の頭には、ハテナマークが多数浮かんでいる。
曹真「流石は、逆賊劉備の子供だな。貴様のような戦場を遊び感覚で考える奴がいるから」
劉虎龍「所詮はゲームだよ。僕には、君たちの主、あっ王様だっけ。彼のしていることの方がわからないよ。父上に妻子を救ってもらっておきながら停戦明けと同時に開戦するなんて、馬鹿なんじゃないだろうかとね」
ふざけた口調から真剣な口調へと変わる劉虎龍の言葉に若干、押される曹真。
曹真「養父のことを悪くいうことは許さん!相容れぬならぶつかるものだろうが!」
劉虎龍「あれっひょっとして、怒っちゃった?ごめんごめん。僕は、内部の人間がガタガタの魏軍の人たちが思ってることを代弁してあげたつもりだったんだけどなぁ」
劉虎龍の言葉は曹真の心にグサリと刺さった。
そうなのだ。
すべての兵を動員できれば、曹操の総兵力は300万を軽く超える。
だが実際動員できたのは、100万が限界だった。
これでは、何度かに分けて、蜀漢の拠点を奪っていくのが理想だ。
しかし、曹操はこの蜀漢との一戦で全てを奪うと公言した。
実際、離反したものも多く。
華北には未だそういった人たちが燻っている状況だ。
背後で反乱が起きたらどうするのか?
その懸念を抱いていないものは曹操の重臣の中に1人もいない。
だから劉虎龍の言葉に反論できる材料がないってのが曹真の現状だった。
しかし、だからと言って、言われたまま押し黙る曹真ではない。
曹真「フハハハハ。貴様らなどに養父の崇高なお考えなど読めようものか!」
劉虎龍「まぁ、そうだよね。華北で反乱が起こってほしいなんて思ってること魏王の口から言えるわけないもんね」
曹真「はっ!?」
曹真の驚く様を見て、劉虎龍はほぼほぼ確信していた。
曹操の真の狙いは、裏に隠れてこそこそ動き回る鼠の排除だと。
その目的のためにかねてから楽しみにしていた劉備との一世一代の大勝負をしているのだと。
それに巻き込まれる方が目的も知らされていないと。
曹操も劉備も、それによる多くの兵が死ぬことを理解していて、己の理想のためにぶつかり合ってるのだと。
劉虎龍「全く、困った人だ」
劉虎龍は、一言呟く。
どれだけ多くの血が流れることになるだろう。
その中には、劉虎龍にとって親しい間柄の者も含まれるかもしれない。
今まで裏で暗躍していた男は、戦争が大好きだった。
だから人死が一際大きな戦を起こすことで、釣り出そうと考えた。
これは曹操からの提案なのか。
それとも劉備からなのか。
劉虎龍には、こんなことを考える人間など1人しかいないことはわかっていた。
叔父であり、病から驚異的な回復を見せた男、劉義賢だと。
そう、これは劉備と曹操を巧みに操った劉義賢への呆れの一言である。
曹真「養父を困った人呼ばわりだと!ふざけるな小僧!この縄を解け!」
劉虎龍「ダメだよ。曹真さんには曹洪さんを捕えるための囮になってもらうから」
曹真「俺を曹洪叔父上を捕える囮に使うだと?そんなことさせられるぐらいならこの舌を噛み切って、この場で死んでくれる!」
劉虎龍「僕は、誰にも死んでほしくないだけさ。曹真さんにも曹洪さんにも。馬鹿な叔父の犠牲者をね」
劉虎龍の言う通り、2人が相容れないなら大きな戦を仕掛けるとその裏を整えて来たのは、劉義賢なのは間違いない。
そして、この戦において、劉義賢は、兵の死を装ったりという方法は用いていない。
それは、劉義賢が未来人であり、劉備と曹操の直接対決という2人の想いを汲んだからである。
そして、協力している面々もそれがわかっているからこそ何も言わない。
まぁ、知らずに付き従っているのも一定数いるのだが。
だから、劉義賢も人命の判断は、現場に任せることにしたのである。
劉虎龍はそれすら見抜いていた。
だから叔父の犠牲者を減らすという言葉に繋がる。
そのためにはこの戦で、曹操四天王の一角が蜀漢に敗れて捕えられたという実績が必要不可欠。
その役目を携えて、ここにやってくるであろう実の兄である寇封に。
曹真「うぐっ」
劉虎龍「だからごめんね曹真さん。君が自害しないように気絶させて、曹洪さんに僕が君を殺したって印象付けさせてもらうよ」
こうして、劉虎龍は下邳の城壁に登り、迫り来る魏軍の兵に向けて、曹真の姿を見せたのである。
その曹真の姿を見た曹洪と曹休は激情。
敵討ちに燃え、下邳城へと進軍。
その背後に劉義賢より命を帯びた3人が迫っているとも知らず。
虎豹騎隊を率いる将軍として、奇襲を仕掛けて来た蜀漢の軍を追い、気付いたら縄で縛られている。
それが今の曹真の心情だった。
曹真「うっ。ここは?」
劉虎龍「ふわぁ~。ホントごめんね曹真さん。うちの部下が殴り飛ばしちゃったみたいで」
自分の名前を気安く呼ぶ目の前の小僧に怒りも湧いてくる。
曹真「貴様は誰だ?俺をどうするつもりだ?」
劉虎龍「ふわぁ~。別にどうもしないよ~。封兄上に手柄を取らせるための布石に使うぐらいかな」
名前を名乗らず目的だけいう小僧に曹真の怒りは増長していた。
曹真「貴様の名前を聞いてるのだ!」
劉虎龍「ふわぁ~。ちょっと、ちょっと怒んないでよ~。眠気が飛んでいっちゃうじゃないか。劉備が嫡子の1人、劉虎龍だよ」
劉備の子供、これが?
曹真の頭には、ハテナマークが多数浮かんでいる。
曹真「流石は、逆賊劉備の子供だな。貴様のような戦場を遊び感覚で考える奴がいるから」
劉虎龍「所詮はゲームだよ。僕には、君たちの主、あっ王様だっけ。彼のしていることの方がわからないよ。父上に妻子を救ってもらっておきながら停戦明けと同時に開戦するなんて、馬鹿なんじゃないだろうかとね」
ふざけた口調から真剣な口調へと変わる劉虎龍の言葉に若干、押される曹真。
曹真「養父のことを悪くいうことは許さん!相容れぬならぶつかるものだろうが!」
劉虎龍「あれっひょっとして、怒っちゃった?ごめんごめん。僕は、内部の人間がガタガタの魏軍の人たちが思ってることを代弁してあげたつもりだったんだけどなぁ」
劉虎龍の言葉は曹真の心にグサリと刺さった。
そうなのだ。
すべての兵を動員できれば、曹操の総兵力は300万を軽く超える。
だが実際動員できたのは、100万が限界だった。
これでは、何度かに分けて、蜀漢の拠点を奪っていくのが理想だ。
しかし、曹操はこの蜀漢との一戦で全てを奪うと公言した。
実際、離反したものも多く。
華北には未だそういった人たちが燻っている状況だ。
背後で反乱が起きたらどうするのか?
その懸念を抱いていないものは曹操の重臣の中に1人もいない。
だから劉虎龍の言葉に反論できる材料がないってのが曹真の現状だった。
しかし、だからと言って、言われたまま押し黙る曹真ではない。
曹真「フハハハハ。貴様らなどに養父の崇高なお考えなど読めようものか!」
劉虎龍「まぁ、そうだよね。華北で反乱が起こってほしいなんて思ってること魏王の口から言えるわけないもんね」
曹真「はっ!?」
曹真の驚く様を見て、劉虎龍はほぼほぼ確信していた。
曹操の真の狙いは、裏に隠れてこそこそ動き回る鼠の排除だと。
その目的のためにかねてから楽しみにしていた劉備との一世一代の大勝負をしているのだと。
それに巻き込まれる方が目的も知らされていないと。
曹操も劉備も、それによる多くの兵が死ぬことを理解していて、己の理想のためにぶつかり合ってるのだと。
劉虎龍「全く、困った人だ」
劉虎龍は、一言呟く。
どれだけ多くの血が流れることになるだろう。
その中には、劉虎龍にとって親しい間柄の者も含まれるかもしれない。
今まで裏で暗躍していた男は、戦争が大好きだった。
だから人死が一際大きな戦を起こすことで、釣り出そうと考えた。
これは曹操からの提案なのか。
それとも劉備からなのか。
劉虎龍には、こんなことを考える人間など1人しかいないことはわかっていた。
叔父であり、病から驚異的な回復を見せた男、劉義賢だと。
そう、これは劉備と曹操を巧みに操った劉義賢への呆れの一言である。
曹真「養父を困った人呼ばわりだと!ふざけるな小僧!この縄を解け!」
劉虎龍「ダメだよ。曹真さんには曹洪さんを捕えるための囮になってもらうから」
曹真「俺を曹洪叔父上を捕える囮に使うだと?そんなことさせられるぐらいならこの舌を噛み切って、この場で死んでくれる!」
劉虎龍「僕は、誰にも死んでほしくないだけさ。曹真さんにも曹洪さんにも。馬鹿な叔父の犠牲者をね」
劉虎龍の言う通り、2人が相容れないなら大きな戦を仕掛けるとその裏を整えて来たのは、劉義賢なのは間違いない。
そして、この戦において、劉義賢は、兵の死を装ったりという方法は用いていない。
それは、劉義賢が未来人であり、劉備と曹操の直接対決という2人の想いを汲んだからである。
そして、協力している面々もそれがわかっているからこそ何も言わない。
まぁ、知らずに付き従っているのも一定数いるのだが。
だから、劉義賢も人命の判断は、現場に任せることにしたのである。
劉虎龍はそれすら見抜いていた。
だから叔父の犠牲者を減らすという言葉に繋がる。
そのためにはこの戦で、曹操四天王の一角が蜀漢に敗れて捕えられたという実績が必要不可欠。
その役目を携えて、ここにやってくるであろう実の兄である寇封に。
曹真「うぐっ」
劉虎龍「だからごめんね曹真さん。君が自害しないように気絶させて、曹洪さんに僕が君を殺したって印象付けさせてもらうよ」
こうして、劉虎龍は下邳の城壁に登り、迫り来る魏軍の兵に向けて、曹真の姿を見せたのである。
その曹真の姿を見た曹洪と曹休は激情。
敵討ちに燃え、下邳城へと進軍。
その背後に劉義賢より命を帯びた3人が迫っているとも知らず。
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