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5章 天下統一
平原城攻防戦(起)
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平原城の城壁にある蜀漢の新たな巨大兵器、自律駆動型連弩車によって、于禁の騎兵隊を壊滅させられた鮑信は、于禁の心身の喪失を理由に包囲へと切り替えていた。
だが平原城の攻略のためには、あの巨大兵器を無力化する必要があると考えていた。
そして、弓ならば歩兵を前面に出せばそれは防げると思い至るのだった。
これはそれに思い至った鮑信が包囲に切り替えて直ぐのことである。
鮑信「側面も隙間無く盾にて防衛せよ!進軍速度はゆっくりで大丈夫だ!弓からの攻撃が無意味と思わせることが大事なのだ!」
于禁騎兵隊A「ハァ。ハァ。ハァ。こ、こんなのであの化け物兵器を本当に防げるのか?」
于禁騎兵隊B「し、知るかよ。でもあの強かった于禁様が心身を病んでしまったんだ。俺たちだって」
于禁騎兵隊C「馬鹿なことを言うな。そうならないために鮑信様が兵器に対して対策のための訓練が必要だって言ったんだろう。一理ある」
于禁騎兵隊D「無駄話してないで手足を動かせ!皆の仇を取るためにな!」
関索による奇襲で馬をやられて当日歩兵隊として盾を構えて命からがら逃げ出した元于禁騎兵隊の男たちが言う。
そう、結果的に関索の奇襲が于禁騎兵隊の壊滅という最悪の状況を招く事は無かった。
そして、鮑信にはもう一つの奇策があった。
鮑韜「兄上、匈奴を束ねる劉豹様から馬の融通に関して、返答を頂きました」
鮑信「どうであった?」
鮑韜「華北の情勢に不穏な動きがあり、多くの馬は貸し出せないとのことですが他ならぬ兄上の頼みだからと5千の馬を用立てていただきました」
鮑信「よくやってくれた。これで、あの大型兵器を無力化した後、こちらの機動力を活かすことができる」
鮑忠「韜にしては、よくやったんじゃねぇか」
バシバシバシと鮑韜の背中を叩く双子の兄鮑忠。
鮑韜「俺にしてはは、余計だよ。数分違いで早く産まれただけの兄上」
鮑忠「数分でも早く産まれたら俺が兄ってことだ。にしてもよ不甲斐ないのは于禁の野郎だぜ。まだ引きこもってんのか?」
鮑信「そのようなことを言うな忠。歴戦の猛将である于禁とて、目の前で多くの味方が自分を守るために死んだとなれば心も病む。今は心身の回復に努めてもらうべき時だ。あの男は、これからの魏国にとって、まだまだ働いてもらわなければならないのだからな。ゴホッ。ゴホッ」
鮑韜「兄上!興奮しては御身体に」
鮑忠「す、すまねぇ兄貴。身体のことは卲と勛には?」
鮑信「まだ話していない。いずれ話す時が来るだろうが今では無い。俺が死ぬことを伝えて、何になる?」
鮑忠「分かったよ兄貴。だけどよ。伝えられないまま亡くなるのだけは勘弁してくれ。残された俺たちがツレェからよ」
鮑信「わかっている。俺が覚悟を決めた時、話すつもりだ」
鮑韜「取り敢えずその話は置いておきましょう。訓練の方は如何です兄上?」
鮑信「やはり騎兵で慣らした于禁の兵たちだ歩兵の動きに対して対応が遅れている。命からがら逃げ出せただけでもよくやったといったところか」
鮑忠「ありゃ戦場では使えねぇな。今のうちに遊撃の5千を選んでおいて、残りの5千は、盾兵として直ぐに死なない程度には集団に慣れさせるしか無いだろうさ」
鮑信「あぁ。だがそれは歩兵で慣らした俺たちにとって、切り札となり得る騎兵を失うわけにはいかないということでもある」
鮑忠「ヘイヘイ。なら、とことん自分の身は自分で守れるようにするしかねぇな」
鮑信「あぁ。そうだな」
そこに平原城を偵察していた鮑卲と鮑勛が帰ってくる。
鮑卲「父上・鮑忠叔父上、ただいま戻りました」
鮑勛「鮑韜叔父上、戻っていらしたのですね」
鮑韜「えぇ。この通り、馬のお土産です」
鮑勛「匈奴との交渉が成功したのですか!?」
鮑韜「えぇ、当初の予定の半分ですが」
鮑勛「半分ですか。やはり匈奴は、気まぐれで協力しただけで全面的に協力するのでは無く華北に引き篭もると」
鮑韜「劉豹殿の妻である蔡文姫殿が曹植様を支えて華北におられるのだ。その御身を心配してのことだろう。匈奴の援軍を引き出したかったがこれも致し方ない」
鮑信「勛よ。再会を喜ぶのは良いが今は報告を頼む」
鮑勛「す、すみません父上。では兄上」
鮑卲「あぁ。蜀漢に目立った動きはありません。それどころか城壁の上で酒を堂々と飲み、肉を喰らっていました」
鮑信「やはりか。包囲で敵の食糧を枯渇させるということはできそうにないな。これで強攻にて攻め落とすしかないことはわかった。だが、そのように油断してくれているのならもっと油断させようではないか。こちらはいつも通りの兵数で包囲を行いつつ密かにあの大型兵器に対抗するための訓練を続ける。そうだな強攻開始は、数ヶ月後にするとしよう」
鮑卲「承知しました父上」
鮑忠「まぁあれだわな。敵が油断してる間に着々と準備を進めるのは兄貴の得意としてるところだもんな」
鮑韜「少し早いだけの兄上。そのような言い方は良くありませんよ」
鮑忠「お前、ちょっと根に持ちすぎじゃないか?」
鮑韜「さぁ。何のことです?」
鮑信「フッ。それぐらいにしておいてやれ」
鮑韜「兄上の頼みなら仕方ありませんね」
鮑忠「同じ兄でも俺と態度違いすぎだろうがよ」
鮑韜「当然です!少し早く産まれただけで兄面してくるのですから」
鮑忠「ヘイヘイ。わかりましたよ。俺が悪うございやした」
鮑韜「わかれば良いんですよ。わかれば」
そして数ヶ月経った現在、鮑信の攻めの陣形は、方円陣。
陣の中心には指揮官を始め、遊撃隊の于禁騎兵隊5千。
その部隊に何かあった時の予備部隊として、残りの于禁騎兵隊が盾を持ち己の身だけを守る万全の夫人である。
そして、もう一つ。
城門に素早く取り付き破壊する衝車と城壁を制圧するための井闌車が後ろに続く。
時はきた。
今まさに後には引けない男たちの戦が幕を開ける。
だが平原城の攻略のためには、あの巨大兵器を無力化する必要があると考えていた。
そして、弓ならば歩兵を前面に出せばそれは防げると思い至るのだった。
これはそれに思い至った鮑信が包囲に切り替えて直ぐのことである。
鮑信「側面も隙間無く盾にて防衛せよ!進軍速度はゆっくりで大丈夫だ!弓からの攻撃が無意味と思わせることが大事なのだ!」
于禁騎兵隊A「ハァ。ハァ。ハァ。こ、こんなのであの化け物兵器を本当に防げるのか?」
于禁騎兵隊B「し、知るかよ。でもあの強かった于禁様が心身を病んでしまったんだ。俺たちだって」
于禁騎兵隊C「馬鹿なことを言うな。そうならないために鮑信様が兵器に対して対策のための訓練が必要だって言ったんだろう。一理ある」
于禁騎兵隊D「無駄話してないで手足を動かせ!皆の仇を取るためにな!」
関索による奇襲で馬をやられて当日歩兵隊として盾を構えて命からがら逃げ出した元于禁騎兵隊の男たちが言う。
そう、結果的に関索の奇襲が于禁騎兵隊の壊滅という最悪の状況を招く事は無かった。
そして、鮑信にはもう一つの奇策があった。
鮑韜「兄上、匈奴を束ねる劉豹様から馬の融通に関して、返答を頂きました」
鮑信「どうであった?」
鮑韜「華北の情勢に不穏な動きがあり、多くの馬は貸し出せないとのことですが他ならぬ兄上の頼みだからと5千の馬を用立てていただきました」
鮑信「よくやってくれた。これで、あの大型兵器を無力化した後、こちらの機動力を活かすことができる」
鮑忠「韜にしては、よくやったんじゃねぇか」
バシバシバシと鮑韜の背中を叩く双子の兄鮑忠。
鮑韜「俺にしてはは、余計だよ。数分違いで早く産まれただけの兄上」
鮑忠「数分でも早く産まれたら俺が兄ってことだ。にしてもよ不甲斐ないのは于禁の野郎だぜ。まだ引きこもってんのか?」
鮑信「そのようなことを言うな忠。歴戦の猛将である于禁とて、目の前で多くの味方が自分を守るために死んだとなれば心も病む。今は心身の回復に努めてもらうべき時だ。あの男は、これからの魏国にとって、まだまだ働いてもらわなければならないのだからな。ゴホッ。ゴホッ」
鮑韜「兄上!興奮しては御身体に」
鮑忠「す、すまねぇ兄貴。身体のことは卲と勛には?」
鮑信「まだ話していない。いずれ話す時が来るだろうが今では無い。俺が死ぬことを伝えて、何になる?」
鮑忠「分かったよ兄貴。だけどよ。伝えられないまま亡くなるのだけは勘弁してくれ。残された俺たちがツレェからよ」
鮑信「わかっている。俺が覚悟を決めた時、話すつもりだ」
鮑韜「取り敢えずその話は置いておきましょう。訓練の方は如何です兄上?」
鮑信「やはり騎兵で慣らした于禁の兵たちだ歩兵の動きに対して対応が遅れている。命からがら逃げ出せただけでもよくやったといったところか」
鮑忠「ありゃ戦場では使えねぇな。今のうちに遊撃の5千を選んでおいて、残りの5千は、盾兵として直ぐに死なない程度には集団に慣れさせるしか無いだろうさ」
鮑信「あぁ。だがそれは歩兵で慣らした俺たちにとって、切り札となり得る騎兵を失うわけにはいかないということでもある」
鮑忠「ヘイヘイ。なら、とことん自分の身は自分で守れるようにするしかねぇな」
鮑信「あぁ。そうだな」
そこに平原城を偵察していた鮑卲と鮑勛が帰ってくる。
鮑卲「父上・鮑忠叔父上、ただいま戻りました」
鮑勛「鮑韜叔父上、戻っていらしたのですね」
鮑韜「えぇ。この通り、馬のお土産です」
鮑勛「匈奴との交渉が成功したのですか!?」
鮑韜「えぇ、当初の予定の半分ですが」
鮑勛「半分ですか。やはり匈奴は、気まぐれで協力しただけで全面的に協力するのでは無く華北に引き篭もると」
鮑韜「劉豹殿の妻である蔡文姫殿が曹植様を支えて華北におられるのだ。その御身を心配してのことだろう。匈奴の援軍を引き出したかったがこれも致し方ない」
鮑信「勛よ。再会を喜ぶのは良いが今は報告を頼む」
鮑勛「す、すみません父上。では兄上」
鮑卲「あぁ。蜀漢に目立った動きはありません。それどころか城壁の上で酒を堂々と飲み、肉を喰らっていました」
鮑信「やはりか。包囲で敵の食糧を枯渇させるということはできそうにないな。これで強攻にて攻め落とすしかないことはわかった。だが、そのように油断してくれているのならもっと油断させようではないか。こちらはいつも通りの兵数で包囲を行いつつ密かにあの大型兵器に対抗するための訓練を続ける。そうだな強攻開始は、数ヶ月後にするとしよう」
鮑卲「承知しました父上」
鮑忠「まぁあれだわな。敵が油断してる間に着々と準備を進めるのは兄貴の得意としてるところだもんな」
鮑韜「少し早いだけの兄上。そのような言い方は良くありませんよ」
鮑忠「お前、ちょっと根に持ちすぎじゃないか?」
鮑韜「さぁ。何のことです?」
鮑信「フッ。それぐらいにしておいてやれ」
鮑韜「兄上の頼みなら仕方ありませんね」
鮑忠「同じ兄でも俺と態度違いすぎだろうがよ」
鮑韜「当然です!少し早く産まれただけで兄面してくるのですから」
鮑忠「ヘイヘイ。わかりましたよ。俺が悪うございやした」
鮑韜「わかれば良いんですよ。わかれば」
そして数ヶ月経った現在、鮑信の攻めの陣形は、方円陣。
陣の中心には指揮官を始め、遊撃隊の于禁騎兵隊5千。
その部隊に何かあった時の予備部隊として、残りの于禁騎兵隊が盾を持ち己の身だけを守る万全の夫人である。
そして、もう一つ。
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