えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。

揚惇命

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5章 天下統一

関所での舌戦

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 盛大に桓騎を煽ってやって、背にして数歩下がったのだが関所を飛び出してくることはなかった。

 桓騎「ん?どうしたんだ?さては、俺様が本当に煽られて乗ってくれたと思ってたのか?甘いぜ。甘々だぜ。そんな甘々な奴が今の世界では将軍だってのか?将軍の位ってのも随分安っぽくなったもんだな」

 成程、煽られ耐性がないフリをしたと。
 やっぱり製錬されてるか。
 一筋縄では行かなさそうだ。

 曹仁「呂威璜!くだらぬことを言ってないで、さっさと門を開けるのだ!」

 曹仁は先程のことが尚も信じられないのか無駄な説得を試みている。

 桓騎「だ・か・ら。呂威璜ってのはこの身体の持ち主の名前だろ?俺様の話を聞いてなかったのか?魂は別物だって言ってんだろ?馬鹿なのか?」

 曹仁が馬鹿ではない。
 荒唐無稽な話を信じろと言われてすぐに信じることのできる人間など早々居ないというだけだ。
 それは曹仁の性格を物語っていて、それだけで曹仁が物事に対して慎重であるという事が窺い知れる。
 新設された関所だから兵の数はそればと多くはないように見える。
 だが相手はあの首斬り桓騎だ。
 一筋縄では行かないだろう。

 満寵「そんな荒唐無稽な話をいきなり信じろと言うのは無理ではないでしょうか呂威璜殿」

 桓騎「だ・か・ら!どいつもこいつも呂威璜って連呼しやがって、俺様の名前は桓騎だって、言ってんだろうがよ!分からず屋の頑固者どもが!」

 義賢「フッ。フフッ」

 桓騎「テメェ、何がおかしい!?」

 義賢「いや。すまない。あまりにも呂威璜殿が。なりきっているものだから」

 桓騎「カチンと来たわ!テメェらは陛下の御力を信じてねぇわけだな。そうかいそうかい。ぶっ殺してやるよ!」

 だが飛び出してくることは無かった。
 俺たちは集まってコソコソと議論する。

 満寵「挑発には乗りませんでしたか」

 義賢「あの様子だと煽られ耐性はないように見えるのだが。過去あれだけの結果を残してきた人物だ油断は禁物だろうな」

 曹仁「劉義賢殿は、呂威璜が桓騎であることを信じると?」

 義賢「そう考えた方がいい。呂威璜とは、これ程の建築の技術を持っていたか?」

 曹仁「いえ、このような技術は。まさか、これも呂威璜が作ったと?」

 義賢「うむ。多くの野戦を経験してきた桓騎将軍であれば、有利となる地形を生み出す技術を持っていてもおかしくはないだろう」

 曹純「見た目は呂威璜なのに中身が違う?頭がこんがらがりそうだ」

 曹仁「純よ。案ずるな某も同じだ」

 関興「とにかく一旦頭がこんがらがりそうなことは置いておきましょう。叔父上の見立てでは、あの謎の男には、煽り耐性は無いと?」

 義賢「あぁ、何度も飛び出そうとしているのをなんとか理性が呼び止めてるように見受けられる」

 張苞「じゃあ、その理性ってのが無くなるぐらい全員で煽りまくればいいんじゃねぇのか?」

 義賢「いや正直、この戦力で関所を突破できるかすら怪しいと考えている」

 満寵「見えてる兵だけが真実では無いと劉義賢殿はお考えか?」

 義賢「うむ。短期間でこれだけの関所を建築したのだ。動員された人・兵の数を考えるに見えてる兵力ではあまりにも少ない」

 劉虎龍「ふーん。成程ね。叔父上、ここは僕に任せてもらっても良いかな?」

 義賢「虎龍よ。何かするつもりなのか?」

 劉虎龍「一つ試してみたい事があるんだ」

 義賢「まぁ手詰まりなのは間違いない。なんとかできるというなら任せようでは無いか」

 俺はチラリと曹仁の方を見て、そちらも問題はないかの確認を取った。

 曹仁「確かに某らを奇策で破った劉虎龍殿であれば。某らにも思い付かぬようなことでこの戦局を変えられるやもしれん。こちらも異論はござらん」

 こうして劉虎龍が前へと進み出た。

 劉虎龍「フン桓騎よ。生温いな。どうした俺の再来と言われたとは思えん生温さだな」

 桓騎「う、嘘だろ白起ハクキ将軍はまだ呼び戻せねぇって陛下が言ってたはずだ」

 成程、虎龍の奴考えたな。
 白起将軍になりきることにするとは。
 一応、甥っ子たちには昔のことも一通り知識として教えている。
 まぁ関興や張苞はまともに授業を受けていなかったであろうから、頭がこんがらがっているようだったが。
 白起将軍とは、秦国一畏れられた虐殺将軍である。
 もっとも有名なのは食料を賄えないという理由で、捕虜にした兵だけで無くその地に住む民ですら生き埋めにしたとされる趙国との長兵の戦いであろうか。
 だが慈悲も持ち合わせていたようで少年兵240人だけは見逃されたそうだ。
 その数20万とも40万とも言われ、明らかに誇張されているなどと専門家に言われている戦いだ。

 劉虎龍「何だ桓騎よ。俺のことが信じられないと申すのか?」

 桓騎「い、いやそんなことは」

 成程、虎龍の奴は劇団で演じてきただけあってなりきるのが上手い。
 だが、その後どうする?
 まさか、考え無しと言うわけではないと思うが。
 こちらにも聞こえるように大きく話す虎龍の声はよく聞こえるが向こうの声は聞こえない。
 警戒してるのだろう。
 よく行き届いている流石だ。

 劉虎龍「孫若は鄴に居られるのか?どうなのだ?」

 桓騎「い、いや。鄴には降霊できなかった反抗的な奴等を数人捕らえてるだけで陛下は」

 劉虎龍「そうか。孫若は居られないのだな」

 呼び方も考えたな白起将軍は、陛下と呼ばれている嬴政から見て祖父である昭襄王ショウジョウオウに仕えていたとされる人物だ。

 桓騎「ど、何処に行かれるんで?」

 劉虎龍「なーに、奴等を血祭りに上げるだけだ」

 こうして、劉虎龍は戻ってきた。
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