えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。

揚惇命

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5章 天下統一

橋頭堡を築け!

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 劉義賢たちは非情にも鄴にいる全ての兵の殲滅を決めた。
 先ずは城の外周を担当している兵を物陰に誘い込んで、パキッ。
 話をしていた兵を誘き寄せるためわざと枝を踏み音を出す。

 鄴兵A「何だあの音は?」

 城壁上の鄴兵A「どうしたんだ?」

 鄴兵A「一瞬、何かの音が聞こえた」

 城壁上の鄴兵A「どうせ、獣か何かだろ。それにしても陛下は相変わらずとんでもないな。こうして俺たちまで生き返ったんだからな」

 鄴兵A「あぁ、全くだ。にしてもこの身体の元々の持ち主の魂には呆れてものも言えないな。大した抵抗もなく明け渡すんだからよ」

 城壁上の鄴兵A「まぁな。ん?今何か見えたような?」

 鄴兵A「どうしたんだ?」

 城壁上の鄴兵A「いやほんの一瞬、人影が」

 鄴兵A「何だって!?俺が見てくる」

 城壁上の鄴兵A「あぁ。くれぐれも気をつけてくれ」

 音に釣られて向かった鄴兵Aと同時進行で、城壁上を制圧しようとしていた劉虎龍たちも動き出す。
 誘き出された鄴兵Aの方に夢中な城壁上の鄴兵Aの首を折り絶命させる張苞。
 制圧が終わるまで声を出してはいけないという命令を受けているので、小さくガッツポーズだけして、次へと向かう。
 その頃、誘き出された鄴兵Aは。

 鄴兵A「おーい。本当に人影なんて見えたのか?あれ、返事がないな。どうしたんだ。おーい。あがッ」

 この調子で城壁上の兵と外周の兵を同時進行で仕留めていく。
 取り敢えず、残りは中だけになったところで今度は、監視の兵の服を剥ぎ取り、なりすます。

 義賢「良し。もう良いぞ。小声でならこの続きについて聞きたいことがあれば答える」

 張苞「いや、俺は叔父上の鮮やかさに脱帽してる」

 曹仁「まるでこのようなことをしてきた経験者であるかのように動きに某も驚きを隠し切れん」

 あぁ、やっぱりそこ気になるよな。
 俺は生前、とあるゲームにハマっていた。
 兵士の確認をして、優秀だったらバルーンで連れ去るゲームだ。
 無能な兵士はどうしたかって?
 俺自身の手は汚してないさ。
 崖からの転落や水辺に寝かせておいて溺死という事故死は、させたけどな。
 そうしないとワラワラと湧いて面倒なんだ。
 誰だって、危険は犯したくないだろ?
 まぁ別の意味合いもあるノーキルに拘りたかっただけだ。
 でも事故死なら仕方がない。
 そう事故死ならな。
 その経験がまさかここで生きるとは思わなかった。
 むしろ全然楽だ。
 今回は、全員の命を容赦なく奪って良いんだからな。
 この手に残る感触だけには、慣れてはいけないが。
 こうすることが今回ばかりは彼らの救済となる。
 割り切れるところは割り切らないとこの世界では生きていけないのだ。
 救える命は救いたい。
 そして死しか救済がないというのなら。

 義賢「ハハッ。そんな、こんなことやるの俺も初めてですよ」

 劉虎龍「殺した兵たちを城壁下に落として、隠したのもですか?まさに痕跡を消すところもそういう暗殺をしてきたように思ったんですけど」

 義賢「やめろ。そんなことに手を染めてきたわけがないだろ。服はあらかた剥ぎ取ったか?」

 関興「叔父上の指示通り抜かりなく」

 義賢「良し、次は監視していた兵と背格好の似ているものたちを集めて、同じような動きをさせる。そして何れやってくる交代の人員を仕留める。それの繰り返しで、城内以外を制圧する」

 曹仁「まるで、この冀州に橋頭堡を作るような言い方だな」

 義賢「そのまさかだ。気付かれずにこの鄴を奪取して、橋頭堡とする。降霊が進めばより危険となるだろう。どれだけの英霊が呼び戻されているかわからない。それに」

 その先を言いかけてやめる。
 秦国以外の英霊ですら呼び戻せるとしたら?
 趙国最強と言われし戦の天才である李牧リボク
 強大化した斉国に対して、初めてとなる斉国以外の国全てによる合従軍を組織した燕国の将軍である楽毅ガクキ
 他の範囲まで降霊できるのかわからないがヤバい奴らは山のようにいるのだ。
 奪える時に少しでも奪っておくべきだろう。

 曹仁「それに?」

 義賢「いや、気にするな。仮定の話をしようとしてやめただけのことだ」

 満寵「気になりますが言わなかったのは変な不安を抱かせないためと思っておきましょう」

 義賢「あぁ」

 この後もノコノコと交代にやってきた鄴兵らを残らず仕留めて、交代が来なくなったので、中へと入る。
 冀州の中で巨大都市である鄴の静けさに驚きつつも城内へと足を踏み入れる。

 ???「ようこそと言えば良いか?まさか、こんな鮮やかに私兵を削られるとは思いませんでしたよ。やれやれ、これだから野蛮人どもは嫌いなのです。あぁ、名乗りもせずに申し訳ありません。始皇帝様から寵愛していただいております臣下の1人の趙高チョウコウと申します」

 趙高か。
 俺の時代では、確か秦の始皇帝が病死した際に遺書を書き換えて李斯リシと権力をほしいままにした佞臣だったな。
 自分のことを寵臣などというあたり、いけすかない男だ。
 まぁ意地汚い宦官らしいと言えばらしいか。

 義賢「フッ。ハハハ。いやぁ。殺しても罪悪感すら抱かない相手で助かるよ」

 趙高「私を殺す?いやいや、私は降伏を」

 義賢「そうやって、蜀漢を内部から食い荒らそうってか?そうはいかねぇよ!テメェの行き着く先は死だ」

 趙高「チッ。新たに操りがいのある者がいるかと思ったのですがままなりませんね。そういうことでしたら貴方を殺して、成り代わるとしましょう」

 義賢「やってみろクズ!」

 秦国を実質滅亡に追いやったということだけしか知らないが会って早々に嫌悪感が心を支配していた。
 コイツと関わるとろくなことが無いってな。
 だから、ここでまず1人、英霊に消えてもらうとしよう。
 まぁ、どちらかというと無能よりではある英霊だがその手腕は鮮やかだったと言えるし、悪知恵が働くといった点では有能か。
 まぁ、そういう頭の良さが始皇帝にも寵愛されたんだろうからな。
 無能と断じるのは違うか。
 さて、だがこちらも退くことはできないからな。
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