えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟！兄上に天下を取らせるため尽力します。

5章 天下統一

名乗り口上

　曹操が魏軍の面々を前に挨拶をする。

　曹操「勇敢なる魏の者たちよ！これだけ集まってくれたというのに、俺の勝手で大将同士の一騎討ちにて決着を付けることに決めたことを深く謝罪する！」

　楽進「殿！どうして、一番槍として、号令をお待ちしていたのに」

　典韋「殿に何があったらどうするんでやす？」

　許褚「一騎討ちって何だぁ？美味しいのか？」

　呂虔「許褚殿、呆けている場合ではありませんよ」

　郭嘉「曹操殿に何か考えがあってのこととは思うけどね。80万の兵の命を預け合う一騎打ちをするなんて、全く無茶をするね」

　戯志才「ふむぅ。軍団戦で刃を交えず、このような選択を取るとは、曹操殿にはいつも驚かされる」

　程昱「元より、一度は曹操様を裏切り曹丕様に尻尾を振った身、今更何も言いますまい」

　李典「俺は俺は」

　李通「李典、俺も同じ気持ちだ。万が一の時は、2人で呂布を」

　李典「ダメだ。どんなに憎かろうとも仲間になったら後ろから刺すのだけはしてはならない」

　李通「まぁ、そうだな。意外と冷静じゃねぇか」

　李典「気持ちは、追いついていないがな」

　李通「どうしても無理ならそん時は俺が呂布を殺して、この身で償ってやるよ」

　李典「お前まで俺を1人にする気か？」

　李通「おいおい。俺はお前と一族なだけで彼女じゃ無いぜ？」

　李典「そういう意味では無い。同じ傷を持つ者という意味だ」

　李通「あー。わかった。わかった。そういうことにしといてやるよ」

　曹操「皆、思うところがあるのはわかるつもりだ。だが、我々は多くの血を流し過ぎた。特に、兗州には最も多くの血を流させた。その中にも俺に力を貸してくれた者もいる。未だ、1番状況を理解しているであろう人物は行方をくらませたままだ。心残りがある俺が劉備に遅れを取ることはない！どうか俺の勝利を信じ、力を貸してくれ！」

　夏侯惇「孟徳。今更だ。お前の背には俺たちが付いてる。思う存分、心ゆくまで劉備とやり合って、そして勝て！」

　夏侯淵「そうだぜ殿」

　夏侯覇「父さん、はぁ。まぁ俺は別に殿が勝とうが負けようがどっちでも構わないっすよ。むしろ負けてくれた方が向こうに嫁いだ月姫と毎日会えるんで」

　曹洪「その言葉は不敬罪だと思うが。俺は一度蜀漢に囚われ屈辱を受けた身。殿の勝利を信じるのみだ」

　曹真「曹洪殿、思い出させないでください。アイツの顔を思い出すと。うっ」

　曹休「この心身的大打撃、決して消えない」

　賈詡「あの2人の怯えようは、相当ヤバいことでもされたのか？」

　曹洪「聞くな。あの男の得体の知れなさはあってないとわからん」

　曹操が絶影に跨り駆ける。

　曹操「絶影よ。俺を乗せ、天を駆けよ」

　絶影「ヒヒーン(御安心下さい。この絶影が殿を勝利へと導きましょうぞ)」

　一方その頃、劉備も集まった蜀漢の面々を前に挨拶をしていた。

　劉備「聞け、我が精鋭たちよ！これだけの兵が集まってくれたというのに、一騎討ちで皆の命を賭けたこと深く謝罪する！」

　趙雲「いえ、殿の強さは虎牢関の戦いの際にこの目で見ております。必ずや曹操に勝てると信じてお待ちしております！」

　馬超「せっかく来たってのに出番は無しか。殿、負けたら許さんからな」

　黄忠「ガハハ。せっかく、奉公するのも最期かと思い厳顔殿を連れて来たというのに殿と来たら勝手に決めよって、そういうところが面白いのじゃ」

　厳顔「そうじゃなぁ。こうなったら精一杯、応援して帰りますぞ。ガハハ」

　甘寧「ったくよ。死んで妹を悲しませたらもう一回殺すからな。負けんなよ？」

　呂布「義賢の奴はとうとう来なかったか。最期まで包囲は解かなかったってことか」

　荀攸「あの御仁のこと。我々の想像もしない場所に突然現れていても不思議ではあるまい」

　孫堅「娘も未亡人にしたら、その時は蜀漢は俺が治めてやろう」

　孫策「まっ。劉備殿が死んだら親父が継ぐのが妥当だな」

　周瑜「伯符に大殿。劉備殿の話を聞いてなかったなんて事ありませんか？劉備殿が負けたら俺たちは魏の人間になるんですよ」

　程普「そう心配するな周瑜よ。殿とて何も知らずに言ってるわけではない。ああやって緊張をほぐしてやってるだけのこと」

　黄蓋「ガハハ。そういうことだ」

　韓当「こんだけいたら俺の影がもっと薄くなってしまうなぁ」

　諸葛亮「殿、勝利を信じてお待ちしております」

　龐統「アッシとしてはこの数の兵を指揮してみたかったてのが本音だけどねぇ。殿の勝利を信じてる待つとするさ」

　徐庶「殿、ここでお待ちしております」

　関羽「兄者、我らも背にいることをお忘れなきよう」

　張飛「おぅよ。大兄者に力を送ってやるからよ」

　田豊「長生きして来て良かったと思えるそんな世界を最期に見てみたいですなぁ」

　沮授「義勇軍の時は、ワシもいずれ参加することになるとは考えもせんかったが。今は良かったと思っておる」

　張郃「女であると知った後も重宝してくださったこと忘れません。どうか勝ってください殿！」

　劉備は勝手に決めたことに対して背中から届く温かい言葉を聞いて、的盧に跨り、前へと進んでいく。

　劉備「的盧よ。私は本当に良い仲間に恵まれた。これもお前と引き合わせてくれた丁のお陰だ。最期までこの私を背に天まで駆けるのだ」

　的盧「ヒヒーン(見てるか妹よ。俺は最期まで殿と駆け抜けるぞ。お前も空から力を貸してくれ)」

　そして両雄相見えて、名乗り口上を上げる。

　曹操「我が名は、曹孟徳！覇道を切り開く者！劉玄徳、貴様の王道を断つ者だ！参るぞ！」

　劉備「我が名は、劉玄徳！王道を守る者！曹孟徳、貴殿の覇道を止める者だ！参る！」

　双方名乗り口上が終わると打ち合いを始めるのであった。