えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟！兄上に天下を取らせるため尽力します。

5章 天下統一

長安平野にて両雄相見える

　劉義賢たちが鄴を奪取した頃、長安にて両雄が相見えていた。

　劉備「曹操、洛陽の奪取見事。だが長安まで楽に取れるとは思わないことだ！」

　曹操「劉備よ。てっきり許昌に籠っているかと思ったが前線に出てくるとは、手間が省けて感謝する。貴様の王道、ここで潰えさせてやろう！」

　劉備「我が王道は決して潰えることはない！曹操よ。貴様の覇道、ここで私が止めてやろう！」

　曹操「面白い！ここで勝った方が天下を統べるということで良いな？」

　劉備「望むところだ！」

　曹操「フッ。その言葉を待っていた。なら大将同士の一騎討ちで決めよう。勝った方に全ての将と兵が従うというのでどうだ？」

　劉備「かつて徐州の民を虐殺した男とは思えない提案だ。何か裏があるのか？」

　曹操「疑うのも無理はない。だが、全ての将と兵が勝った者に従うという誓書を交わすのというのなら無駄に命を散らす必要もあるまい」

　劉備「お互いこれだけの将と兵を集めておきながら最期は個人戦がお望みとは」

　夏侯惇「待て、孟徳！ここは軍団戦をするべきだ！関羽は俺の手で討つ！」

　李典「殿、何卒お考え直しを。父や叔父の仇、呂布をこの手で討つ機会を！」

　関羽「兄者、一騎討ちをする必要などござらん！ここは翼徳と某にお任せを！」

　張飛「そうだぜ大兄者！それに俺たちは例え大兄者が負けたとしても曹操になんかに従わねぇぜ」

　部下を多数殺された関羽に恨みを持つ夏侯惇、呂布に父と叔父を殺された恨みを持つ李典は、曹操の提案を取りやめるように懇願。
　劉備の義兄弟である関羽と張飛にしてみれば、劉備が万が一曹操に殺されたとして、従う義理はないと曹操の提案を断ることを進言する。
　だが2人はというと。

　劉備「フッ。英雄、2人ならずか」

　曹操「覚えていたか。あの時、2人で会話したことを」

　劉備「それがお前の望みか。良かろう。この劉玄徳！貴殿の申し出を受けよう！」

　関羽「兄者！何故！」

　張飛「大兄者、嘘だろ？」

　曹操「フハハハハ。それでこそ俺が認めた好敵手ぞ！この曹孟徳がその首と天下を平らげてくれようぞ！」

　双方が一騎討ちの準備のため、一旦下がる。

　夏侯惇「待て、孟徳！今からでも遅くはない取り消せ！」

　李典「殿！呂布と肩を並べるなんて俺にはできませんよ！」

　曹操「煩いぞ2人とも！この世は、血を流し過ぎた！建て直すには多くの力が必要だ。そのためなら大将同士の一騎討ちにて天下を決めるは必然！」

　夏侯惇「ぐっ。孟徳。ならどうして、80万もの兵を集めたんだ？」

　曹操「華北から遠ざけるためだ」

　夏侯惇「！？孟徳、お前まさか。チッ。わかった。必ず勝て！勝って、自らで決着をつけろ！こんな形での骨拾いは、許さんぞ」

　李典「夏侯惇殿！？俺は俺は納得できませんよ！呂布は、アイツは俺の親父と叔父を殺したんだ！許せるわけないでしょう！」

　曹操「李典よ。お前の憤りはわかる。かつて俺も父を殺した陶謙への復讐のため徐州の民を虐殺した。その結果、多くの才人が南へと逃げた。その結果が劉備の拡大を助けたのだ。愚かな行いをした。それを繰り返すことなど許さんぞ！俺が死んだら、全員劉備に従うのだ！良いな！」

　李典「ぐっ。俺は俺は絶対に認めない！」

　曹操「李典よ。その怒りを抑えろとは言わん。だが、その気持ちは、お前だけでなく誰の心にもあるものだ。復讐に囚われてはならん。復讐は復讐しか生まんからな」

　李典「ぐぬぬ。呂布と肩を並べるなど父や叔父に申し訳が」

　曹操「俺や劉備が死んでも双方に遺恨は残ろう。だが決して、味方同士で殺し合うことだけはせぬようにな」

　夏侯惇「孟徳、心に留めておく。だが、自分から言い出したんだ。必ず勝て！心残りを残すなよ？」

　曹操「フッ。当然だ。この曹孟徳、劉備なんぞにやられはせんよ」

　夏侯淵「その意気だぜ殿」

　一方、劉備陣営は。

　趙雲「まさか、これだけの将と兵を集めて一騎討ちを提案してくるとは思いませんでした」

　諸葛亮「ですが、理に適ってはいます。軍団戦で双方消耗するよりも大将同士の命だけで決着を付けようと判断したのでしょう」

　関羽「兄者、もう何も言いますまい。ご武運を」

　張飛「関羽の兄者。あーもう、わかったよ。大兄者、やるからにはぜってぇ負けんじゃねぇぞ。背中には俺たちが付いてるからよ」

　劉備「フッ。義兄弟とは何と有難いのだろうな。共に死ぬ約束が果たせなかったとしても決して後を追うな。生きて、家族を守れ。良いな？」

　関羽「御意」

　張飛「わーったよ！でも曹操なんかに仕える気はねぇ。郷里に帰って畑でも耕すぜ俺ぁよ」

　関羽「それは良いな翼徳。某もそうしよう。兄者が負けることなど万に一つも無かろうがな」

　張飛「違いねぇや。大兄者の強さを知ってんのは俺たちだしな」

　劉備「言いたい事いいよってからに。だが物事に絶対はない。丁の言葉だ。油断はせぬ。負ける気はさらさらないが」

　龐統「まさか、これだけの兵と将を集めて、最期は一騎討ちとはねぇ。あっしとしては、これだけの兵を動かしてみたかったんだがねぇ」

　徐庶「士元らしいね。でも、血が流れないことは悪くないよ」

　諸葛亮「そういうことです」

　荀彧「殿、王道をお守り下さい」

　劉備「負けたら献帝様のこと曹操に取り計らってもらうように交渉を任せる文若」

　荀彧「そうならないことを祈ります。この場に居ない劉丁殿も蚊帳の外で決まったことに納得するとは思えませんから」

　劉備「そうだな。アイツには悪いことをした」

　こうして劉備と曹操は、一騎討ちへと向かうのであった。
　しかし、これは図らずも始皇帝の思惑を大きく狂わせる事態であり、鄴を奪取され情報を再現されたことも相まり、介入することができないでいたのだった。