えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。

揚惇命

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5章 天下統一

鄴城に囚われていた者たち

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 劉虎龍の活躍で鄴城を解放した劉義賢は、冀州における橋頭堡として機能させるべくここの防衛を曹仁と満寵と考えていた。
 その間に捕まっていた人たちを解放する任務を受けたのは、関興と張苞である。

 関興「劉封兄の怪我の状況は芳しくないらしい」

 張苞「そうなのか?」

 関興「あぁ。横腹を酷く貫かれたみたいで、暫くは絶対安静が必要だろうってさ」

 張苞「劉封兄に痛手を与えた相手を虎龍の奴は1人で」

 関興「あぁ。俺たちもあの修行でだいぶ成長したと過信していたかもしれない。もっと気を引き締めないとな」

 張苞「おぅよ。次は守ってやれるぐらいに強くなんねぇとな」

 2人が固く誓い合い、明らかに厳重な扉の前に着く。

 関興「牢屋のどこにも居なかったからいるとしたらあとはここぐらいだよな?」

 張苞「あぁ。いきなり、刃を向けられるなんてこともあるかもしれねぇ。呼びかけてみるか?」

 関興「そうだな。おーい、誰か聞こえるか。聞こえたら返事してくれー。助けに来たぞー」

 しかし、呼びかけに対して中からの反応はない。

 張苞「まさか、やられちまってるなんてことないよな?」

 関興「分からない。食事も水も与えられてないとかなら餓死してるかも」

 張苞「な、なんだって!?まずいじゃねぇか直ぐにこの扉を開けねぇと」

 関興「あ、あぁ」

 大急ぎで扉を開けると。

 羊祜「門が開いた今が好機です!」

 鄧艾「曹植様と奥方様はお下がりください。ここは俺が!」

 曹植「鄧艾、苦労をかけるが宜しく頼むよ」

 崔華美「宜しくお願いします」

 劉豹「文姫も下がっているんだ!」

 蔡文姫「えぇ、アナタ。再会して直ぐに死ぬなんて許さないわよ」

 劉豹「俺を誰だって思っている。案ずるな」

 関興と張苞は、鄧艾と劉豹に飛びかかられて、伸びてしまう。
 そりゃそうだろう。
 助けに来たつもりがその助ける相手から奇襲を受けたのだ。
 受け身を取れるわけがない。
 伸びた二人を見る面々。

 曹植「ん?この2人は、この国で見ない顔だね」

 鄧艾「迂闊に敵に近づいてはなりません!曹植様はお下がりを!」

 蔡文姫「この2人は!?あぁ、私たちはとんでもないことをしてしまったかもしれません!」

 劉豹「文姫、知っているのか?」

 蔡文姫「はい。蜀漢の関羽将軍の御子息と張飛将軍の御子息です」

 曹植「なんだって!?では、まさか僕たちのことを密かに助けるために蜀漢が?」

 鄧艾「いえ、この計画自体蜀漢の仕業かも知れません!侮ってはなりませんぞ!」

 羊祜「いや、それはないと思うよ。あの民がおかしくなったのは、始皇帝と名乗る曹丕に何かされた後だったから。始皇帝と蜀漢が繋がっているとは考えずらい。献帝様と劉備殿の思い描く思想と大きくかけ離れているからね」

 劉豹「では、我々は助けに来た人物に対して、殴り飛ばしてしまったと?」

 羊祜「うん。武器を取り上げられていて良かったと今回ばかりは思ったよ」

 曹植「なら、こうしては居られない。まだ、敵が潜んでいるかも知れない。潜入してまで助けに来てくれたかもしれない者たちを危険な目に合わすわけには」

 崔華美「それにしても静かですわね」

 蔡文姫「そうね。一旦、彼らを抱えて玉座の間に行ってみた方が良いかも知れないわ」

 羊祜「僕も叔母上の御言葉に賛成します」

 劉豹「俺に甥が居たことにも驚いたが。その甥がここまで頼もしいとは。我が子たちにはその知性は無かったからな」

 蔡文姫「あら、ごめんなさいね。勇敢すぎる子供たちで」

 劉豹「そ、そんなことは言ってないぞ文姫」

 鄧艾「曹植様は最後尾を。俺が前に立って、様子を伺いながら」

 曹植「あぁ、よろしく頼むよ鄧艾」

 崔華美「久々のお外の空気ですね曹植様」

 曹植「そうだね~。僕はいつも隣に太陽が居たからお外にいる気分だったよ~」

 崔華美「そ、そんな太陽だなんて。あんなところに閉じ込められても曹植様には元気で居て欲しかったから」

 曹植「ありがと。いつも君の笑顔に救われているよ」

 崔華美「はわわ~」

 こんな感じでとても囚われていたとは思えないほど終始穏やかな感じで玉座の間に行くとそこでは曹仁と満寵、その側では寝かされている曹純と見ず知らずの男。
 さらには、中央で作戦を練る男の姿が映った。

 鄧艾「救出に来てくれたのは、曹仁様でしたか!かたじけない!」

 曹仁「鄧艾殿?殿と一緒では無かったのか?」

 鄧艾「はい。殿たってのお願いで曹植様の護衛をしておりました」

 曹仁「そうであったか。曹植様が御無事で本当に良かった」

 曹植「曹仁、そこの人は?」

 曹仁「あぁ、これは紹介が遅れました。我々は濮陽にて、蜀漢に敗北し降伏しました。その時にこちらに居られる劉虎龍殿とある取引を交わし、皆様方の救出に骨を折ってもらいました」

 劉虎龍「劉虎龍だ。宜しく頼む。叔父上は今城内を見回り、補修が必要な箇所がないかを確認している。これよりこの鄴は蜀漢の冀州での橋頭堡となる。それが曹仁殿との約束だ。有無は言わせぬ」

 仮にも魏王の息子であるので、劉虎龍もいつもの砕けた感じではなくよそ向きの言葉遣いで挨拶した。

 曹植「まぁ、そう言う理由なら仕方ありませんね。で、僕たちの扱いはどうなります?」

 劉虎龍「取り敢えず、魏と蜀漢の戦が終わるまでは捕虜となる。だが、至急、貴殿たちが無事であったことを曹操殿に伝えてもらいたい」

 鄧艾「そんな勝手なこと、許されると!」

 曹仁「悪いようにはなさらない。ここは、この者の言う通りにしてくれぬか」

 劉豹「頭の狂った変な奴らよりはよっぽどマシであろう。承知した」

 一通り見回って帰ってきた劉義賢。

 義賢「補修が必要な箇所はないが巨大都市の割には民の姿が見えない」

 曹植「多くの者は、始皇帝などと名乗った馬鹿兄に付いて、遼東の奥地へと引っ込みました」

 義賢「そうか。貴殿が曹植殿か。御無事で何よりだ。このまま、ここを橋頭堡として、少しづつ切り崩していこうと思う。兵はいるだろうか?」

 曹植「残念ながら全て、馬鹿兄に付いて行き。ここにいるのは僕たちだけだ」

 義賢「そうか。それは残念だ」

 鄧艾「ここにいた兵はどうしたのだ?」

 義賢「全て処理した。操られているとかではなく、人格そのものが変わってしまったかのようであったのでやむを得なく」

 曹植「ありがとうございます。彼らもこれ以上罪を犯さずに済み、感謝しているでしょう」

 義賢「そう言ってもらえると我々も救われる」

 こうして、鄴を確保した劉義賢たちだったがその先行きには暗雲が立ち込めていた。
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