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2章 オダ郡を一つにまとめる
34話 反サブロー派の旗頭に誰を立てるか
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サブロー・ハインリッヒがハイネル・フロレンスと会談していた頃、サブローを新当主と認めない貴族たちは、誰を旗頭にするか話し合っていた。
「我らを蔑ろにして、奴隷を重用するサブロー様を当主と認められるだろうか?」
「聞いた話によるとタルカ郡との国境沿いにても奴隷と士族を率いて、奴らだけで敵を追い返したどころかタルカ郡を攻める大義名分まで得よった」
「勝てるなら我らも乗っていた。きちんと我らにそれを示さなかったのは、我らを遠ざける腹積もりなのは明らかである」
「我ら御三家は、今までハインリッヒ家に忠義を尽くしてきた。このような侮辱、看過できん。我らは、サブロー様に対抗できうる旗頭を立てねばならん」
ハインリッヒ家の御三家とは、貴族の爵位の最高位である公爵に付く、ガロリング家・ハルト家・カイロ家の3つであり、これに複数の兄弟筋の貴族が集まり、その勢力はただでさえ小さいオダ郡を2分する勢いとなっていた。
そしてこの公爵家の1つガロリング家は、ロルフ・ハインリッヒの妻マーガレット・ハインリッヒの実家である。
そうあろうことかサブローにとって祖父に当たる現ガロリング家当主のレーニン・ガロリングが率先して、孫の足を引っ張ろうとしていたのである。
「ガロリング卿、良いのですか?サブロー様は、貴方にとって孫に当たるが」
レーニンと呼ばれた男は、長い髭を上から下へと触りながら渋めの声で話し始める。
「あのクソガキが可愛い孫であったのは、3歳までのことだ。それからは、事あるごとに奴隷の扱いが酷いだの。女の扱いが酷いだのと青臭いことを言いよった。あれはこの世界の異端児よ。此度の鮮やかな手並みを見る限り、タルカ郡を相手にしている間に排除せねばなるまい」
この意見に頷きながら冷静でゆったりとした声で話すのは、モンテロ・ハルト、ハルト家の現当主である。
「確かにガロリング卿のおっしゃる通り、内と外で挟まれれば、サブロー様と言えども我らに泣きつくしかないですなぁ。ハッハッハ」
「あのクソガキは、一度心を折らねばわかるまい。奴隷や士族よりも頼りになるのは我ら貴族だということがな。事実、土地を治めているのは、我ら貴族である。あの馬鹿には、身を持って体験してもらうとしよう」
これらの話を目を閉じて聞き、落ち着いた冷静な口調で話す男は、カイロ家の現当主であるルルーニ・カイロ。
「楽観視するのは如何なものでしょう。正直、私はサブロー様がニ正面作戦をするとは考えられません。この時も虎視眈々と我らの動きを警戒しているのではないかと考えます。生半可な旗頭では、潰されるでしょう」
「カイロ卿は、あのクソガキのことを買い被っているようだな。所詮、世の中の理を知らぬ青臭いガキよ」
「孫をそこまでこき下ろすものではありませんよガロリング卿。事実、貴方の言う青臭いガキにタルカ郡もナバル郡も手玉に取られたのですから。我らもそうならないとは言えないでしょう。私はやるからには負ける確率は限りなく減らしたい。そのためには、亡きロルフ様の妻であるマーガレット殿の旗頭就任を求める」
「フン。マル卿もベア卿も欲を出し過ぎただけのこと。どうせロー辺りの知恵であろう。あのクソガキの功績ではあるまい」
レーニンの言葉にルルーニは、深く考え首を横に振る。
「ガロリング卿、8歳の子供にそんな考えは思い付かないと決め付けては、足を掬われましょう。我ら御三家が排除されるということは、他の貴族も容赦なく排除されるということ。長く続いた貴族制を我らの代で終わらせるわけには断じて、なりません」
「フン。カイロ卿は、心配性だな。心配せずともマーガレットにはもう既に打診してある。あのクソガキが亡き我が婿殿に砂を投げつけたその日にな。あんなクソガキでも娘にとっては、可愛い息子だ。その場で首を縦に振ることはなかったが、父の顔を立てて、旗頭となってくれるだろう」
「ガロリング卿は、先程から仮定の話ばかりです。サブロー・ハインリッヒは、子供であって、子供にあらず。タルカ郡を完膚なきまでに罠に嵌めて、大義名分を得ておきながら直ぐに攻め込もうとはしない。これは、内に不穏分子を抱えていることを理解している動き。我らは警戒されていると見るべきです。動くなら確実にサブロー・ハインリッヒの首を取らねばなりません!孫の首を取れるのですか?」
「カイロ卿、舐めないでもらおう。この計画を立てた時から、あのクソガキを殺す覚悟よ」
「貴方にあってもマーガレット殿にあると?」
「それは、ええぃ。そんなもの丸め込めば良いのだ!」
「だから行き当たりばったりで勝てるほど単純な相手では無いのです。あの男からは計り知れぬ策謀の匂いがする。こうして我らがここに集まって話している間にも何か恐ろしい策を仕込んでいる可能性だってあるのです!」
「ワシのことを仮定ばかりというが、なら貴様は憶測ばかりではないか!安心せい、娘のことはワシがよくわかっておるわ」
「まぁまぁ。ガロリング卿もカイロ卿も、それぐらいで。この場で決まりそうにないですなぁ。ここはそうですなぁ。マーガレット殿が我らの旗頭になってくれるというのならカイロ卿は問題ないんですなぁ?」
「あぁ、その場合は手を貸す事を約束する」
「なら、暫くはガロリング卿がマーガレット殿を説得するということで如何ですかなぁ?」
「うむ。問題ない」
「では、このあたりに、お腹が空きましたのでなぁ」
マイペースで、のほほんとしているがハルト卿も修羅場を潜り抜けてきた貴族の1人。
2人のヒートアップを収めると、一足先に席を立ち、それに続いて、彼らに続く貴族たち。
この場はこれにて終わることとなる。
「我らを蔑ろにして、奴隷を重用するサブロー様を当主と認められるだろうか?」
「聞いた話によるとタルカ郡との国境沿いにても奴隷と士族を率いて、奴らだけで敵を追い返したどころかタルカ郡を攻める大義名分まで得よった」
「勝てるなら我らも乗っていた。きちんと我らにそれを示さなかったのは、我らを遠ざける腹積もりなのは明らかである」
「我ら御三家は、今までハインリッヒ家に忠義を尽くしてきた。このような侮辱、看過できん。我らは、サブロー様に対抗できうる旗頭を立てねばならん」
ハインリッヒ家の御三家とは、貴族の爵位の最高位である公爵に付く、ガロリング家・ハルト家・カイロ家の3つであり、これに複数の兄弟筋の貴族が集まり、その勢力はただでさえ小さいオダ郡を2分する勢いとなっていた。
そしてこの公爵家の1つガロリング家は、ロルフ・ハインリッヒの妻マーガレット・ハインリッヒの実家である。
そうあろうことかサブローにとって祖父に当たる現ガロリング家当主のレーニン・ガロリングが率先して、孫の足を引っ張ろうとしていたのである。
「ガロリング卿、良いのですか?サブロー様は、貴方にとって孫に当たるが」
レーニンと呼ばれた男は、長い髭を上から下へと触りながら渋めの声で話し始める。
「あのクソガキが可愛い孫であったのは、3歳までのことだ。それからは、事あるごとに奴隷の扱いが酷いだの。女の扱いが酷いだのと青臭いことを言いよった。あれはこの世界の異端児よ。此度の鮮やかな手並みを見る限り、タルカ郡を相手にしている間に排除せねばなるまい」
この意見に頷きながら冷静でゆったりとした声で話すのは、モンテロ・ハルト、ハルト家の現当主である。
「確かにガロリング卿のおっしゃる通り、内と外で挟まれれば、サブロー様と言えども我らに泣きつくしかないですなぁ。ハッハッハ」
「あのクソガキは、一度心を折らねばわかるまい。奴隷や士族よりも頼りになるのは我ら貴族だということがな。事実、土地を治めているのは、我ら貴族である。あの馬鹿には、身を持って体験してもらうとしよう」
これらの話を目を閉じて聞き、落ち着いた冷静な口調で話す男は、カイロ家の現当主であるルルーニ・カイロ。
「楽観視するのは如何なものでしょう。正直、私はサブロー様がニ正面作戦をするとは考えられません。この時も虎視眈々と我らの動きを警戒しているのではないかと考えます。生半可な旗頭では、潰されるでしょう」
「カイロ卿は、あのクソガキのことを買い被っているようだな。所詮、世の中の理を知らぬ青臭いガキよ」
「孫をそこまでこき下ろすものではありませんよガロリング卿。事実、貴方の言う青臭いガキにタルカ郡もナバル郡も手玉に取られたのですから。我らもそうならないとは言えないでしょう。私はやるからには負ける確率は限りなく減らしたい。そのためには、亡きロルフ様の妻であるマーガレット殿の旗頭就任を求める」
「フン。マル卿もベア卿も欲を出し過ぎただけのこと。どうせロー辺りの知恵であろう。あのクソガキの功績ではあるまい」
レーニンの言葉にルルーニは、深く考え首を横に振る。
「ガロリング卿、8歳の子供にそんな考えは思い付かないと決め付けては、足を掬われましょう。我ら御三家が排除されるということは、他の貴族も容赦なく排除されるということ。長く続いた貴族制を我らの代で終わらせるわけには断じて、なりません」
「フン。カイロ卿は、心配性だな。心配せずともマーガレットにはもう既に打診してある。あのクソガキが亡き我が婿殿に砂を投げつけたその日にな。あんなクソガキでも娘にとっては、可愛い息子だ。その場で首を縦に振ることはなかったが、父の顔を立てて、旗頭となってくれるだろう」
「ガロリング卿は、先程から仮定の話ばかりです。サブロー・ハインリッヒは、子供であって、子供にあらず。タルカ郡を完膚なきまでに罠に嵌めて、大義名分を得ておきながら直ぐに攻め込もうとはしない。これは、内に不穏分子を抱えていることを理解している動き。我らは警戒されていると見るべきです。動くなら確実にサブロー・ハインリッヒの首を取らねばなりません!孫の首を取れるのですか?」
「カイロ卿、舐めないでもらおう。この計画を立てた時から、あのクソガキを殺す覚悟よ」
「貴方にあってもマーガレット殿にあると?」
「それは、ええぃ。そんなもの丸め込めば良いのだ!」
「だから行き当たりばったりで勝てるほど単純な相手では無いのです。あの男からは計り知れぬ策謀の匂いがする。こうして我らがここに集まって話している間にも何か恐ろしい策を仕込んでいる可能性だってあるのです!」
「ワシのことを仮定ばかりというが、なら貴様は憶測ばかりではないか!安心せい、娘のことはワシがよくわかっておるわ」
「まぁまぁ。ガロリング卿もカイロ卿も、それぐらいで。この場で決まりそうにないですなぁ。ここはそうですなぁ。マーガレット殿が我らの旗頭になってくれるというのならカイロ卿は問題ないんですなぁ?」
「あぁ、その場合は手を貸す事を約束する」
「なら、暫くはガロリング卿がマーガレット殿を説得するということで如何ですかなぁ?」
「うむ。問題ない」
「では、このあたりに、お腹が空きましたのでなぁ」
マイペースで、のほほんとしているがハルト卿も修羅場を潜り抜けてきた貴族の1人。
2人のヒートアップを収めると、一足先に席を立ち、それに続いて、彼らに続く貴族たち。
この場はこれにて終わることとなる。
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