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2章 オダ郡を一つにまとめる
41話 ドレッドとレーニンの密約
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レーニンが娘のマーガレットを旗頭として担ぐ少し前のこと。
レーニンは、ナバル郡のドレッドの屋敷にいた。
「ドレッド様、此度の会談をお受けくださり感謝致します」
「よく来てくださったレーニン殿。して、サブローからオダ郡を奪う算段が付いたとは真か?」
「はっ。我が娘、マーガレットを新たな神輿に担ぎ、サブローの統治に反対している貴族連中と商人の協力を得ることとなっております」
正確にはまだなってないがもうなっていると話を盛るレーニン。
「内からはレーニン殿、外からはデイル殿に挟まれれば、サブローとて終わりだな。で、孫を潰してまで、何が欲しい?」
「ナバル郡の属郡として、オダ郡の郡守としての地位を賜りたく」
「大きく出たが。いきなり我らが治めるよりは角が立たなくて良いか。許可するからには失敗は許さん」
「はっ。必ずやサブローを討ち、ドレッド様にオダ郡を献上致す」
「陛下への言い訳はどう考えている?」
「我が娘マーガレットを側妃にすることで便宜を図ってもらおうかと」
「成程な。陛下はマーガレット殿にお熱だ。デイル殿がサブローが全てを飲むと言ったにも関わらずそれを飲まなかったことで御立腹するぐらいにな」
「孫が勝手に我が娘を陛下に差し出すことに納得したのは許せませんが使えるものは使わねばと」
「娘や孫すら踏み台か。その野心、面白い。表立って援護はできぬがサブローに支払う賠償金を遅らせタルカを上手く動かしてやる。必ずクーデターを成功させるのだ。良いな?」
「はっ。お任せくだされ。貴族の大半がこちらに付いたのだ。サブローに何ができようものか」
「デイルのように足下を掬われぬようにな」
「そのようなことにはなりませんからドレッド様は吉報をお待ちくだされ」
レーニンはドレッドとの話がまとまって意気揚々とオダ郡へと帰っていく。
ドレッドは、レーニンの背中が見えなくなるまで見送ると呟く。
「サブローよ。外戚にクーデターを起こされるなどやり過ぎたようだな。デイルに内乱状態であることを告げ、より確実にオダ郡を制するとしよう。陛下はあくまでタルカとオダの戦争に干渉するなと言っただけだからな。内乱となれば、被害を止めるためにやむなく出陣したという名分もたつだろうよ。ハーッハッハッハッ」
そしてドレッドは、高笑いしながらデイルへと書状を書いていた。
レーニンは帰る道すがらドレッドと話がまとまったことに喜んでいた。
「ルルーニの奴め。最もらしいことを述べて、情報統制したつもりであろうが残念だったな。このオダ郡をナバル郡の属郡にして、ワシが郡主になるためにせいぜい利用させてもらうとしよう。サブローよ。お前にオダ郡を治める資格などないわ」
ドレッドが帰るとガロリング家の元執事であり、マーガレットの世話役として、ハインリッヒ家の執事となったロレンスがマーガレットと共に訪ねてきていた。
「おぉ、我が娘に、ロレンスよ息災であったか。ロルフ殿が亡くなって、辛かったであろう。ここに来たということは、決心は付いたのか?」
「相変わらず、すぐに本題を求める癖は直りませんね父上。今まで何処かに行かれていたようですが何処に?」
「お前も変わらんな。帰って早々、ワシがどこに行っていたかを気にかけるとはな。なーに、すこしベア卿のところにな。協力を取り付けてきたまでの事」
「そうですか」
マーガレットは、心の中で深い溜息を付く。
父は、サブローのことを殺すだけで飽き足らずこのオダ郡をナバル郡に売り渡して、1郡守としてドレッドに支配される道を選んだ。
それに引き換え、強大なタルカ・ナバルの連合軍に恐れず立ち向かい、タルカを攻める大義名分をルードヴィッヒ陛下から勝ち取ったサブローが誇らしいと。
誰がどう見てもどちらがオダ郡のことを本気で考えてくれる領主なのか一目瞭然だと。
だからマーガレットには迷いが吹っ切れた。
我が子のために膿は全て出し尽くしてあげようと。
「ロレンス、少し出ていなさい」
「はい。外でお待ちしておりますマーガレット様」
ロレンスは、深々と一礼をして、部屋を後にする。
「どうしてロレンスを外に出す必要がある?」
「ロレンスは、ハインリッヒ家の執事です。父上は、これから話すことをサブローに露見しても構わないと?」
「アイツは、ハインリッヒ家の執事である前に我がガロリング家の執事だ。どちらを優先するか一目瞭然だろう」
「頭ごなしに何でも決める父上らしいですわね。そんなの私がハインリッヒ家に嫁ぐ前の話です。今のロレンスは、サブローに礼儀作法を教える程の関わりがあります。父上よりもサブローを選ぶ可能性が無いとは言えない以上、遠ざけるのが得策では?」
「ならお前がワシと会っていることもまずいではないか」
「いいえ。娘が父に会いに行っただけのこと。何も問題はありません」
「そういうものか?」
「そういうものです。で、本題の件ですがお受けしましょう。ただ、旗頭となるからには中途半端は許しません。貴族たちには日和見は許さないようにお願いします父上」
「承知した。娘よ。サブローがめちゃくちゃにしたこのオダ郡をロルフ殿の愛した状態に戻そうぞ」
「えぇ、そうね」
短く呟くとマーガレットは、長居は無用と足早にその場を後にするのだった。
レーニンは、ナバル郡のドレッドの屋敷にいた。
「ドレッド様、此度の会談をお受けくださり感謝致します」
「よく来てくださったレーニン殿。して、サブローからオダ郡を奪う算段が付いたとは真か?」
「はっ。我が娘、マーガレットを新たな神輿に担ぎ、サブローの統治に反対している貴族連中と商人の協力を得ることとなっております」
正確にはまだなってないがもうなっていると話を盛るレーニン。
「内からはレーニン殿、外からはデイル殿に挟まれれば、サブローとて終わりだな。で、孫を潰してまで、何が欲しい?」
「ナバル郡の属郡として、オダ郡の郡守としての地位を賜りたく」
「大きく出たが。いきなり我らが治めるよりは角が立たなくて良いか。許可するからには失敗は許さん」
「はっ。必ずやサブローを討ち、ドレッド様にオダ郡を献上致す」
「陛下への言い訳はどう考えている?」
「我が娘マーガレットを側妃にすることで便宜を図ってもらおうかと」
「成程な。陛下はマーガレット殿にお熱だ。デイル殿がサブローが全てを飲むと言ったにも関わらずそれを飲まなかったことで御立腹するぐらいにな」
「孫が勝手に我が娘を陛下に差し出すことに納得したのは許せませんが使えるものは使わねばと」
「娘や孫すら踏み台か。その野心、面白い。表立って援護はできぬがサブローに支払う賠償金を遅らせタルカを上手く動かしてやる。必ずクーデターを成功させるのだ。良いな?」
「はっ。お任せくだされ。貴族の大半がこちらに付いたのだ。サブローに何ができようものか」
「デイルのように足下を掬われぬようにな」
「そのようなことにはなりませんからドレッド様は吉報をお待ちくだされ」
レーニンはドレッドとの話がまとまって意気揚々とオダ郡へと帰っていく。
ドレッドは、レーニンの背中が見えなくなるまで見送ると呟く。
「サブローよ。外戚にクーデターを起こされるなどやり過ぎたようだな。デイルに内乱状態であることを告げ、より確実にオダ郡を制するとしよう。陛下はあくまでタルカとオダの戦争に干渉するなと言っただけだからな。内乱となれば、被害を止めるためにやむなく出陣したという名分もたつだろうよ。ハーッハッハッハッ」
そしてドレッドは、高笑いしながらデイルへと書状を書いていた。
レーニンは帰る道すがらドレッドと話がまとまったことに喜んでいた。
「ルルーニの奴め。最もらしいことを述べて、情報統制したつもりであろうが残念だったな。このオダ郡をナバル郡の属郡にして、ワシが郡主になるためにせいぜい利用させてもらうとしよう。サブローよ。お前にオダ郡を治める資格などないわ」
ドレッドが帰るとガロリング家の元執事であり、マーガレットの世話役として、ハインリッヒ家の執事となったロレンスがマーガレットと共に訪ねてきていた。
「おぉ、我が娘に、ロレンスよ息災であったか。ロルフ殿が亡くなって、辛かったであろう。ここに来たということは、決心は付いたのか?」
「相変わらず、すぐに本題を求める癖は直りませんね父上。今まで何処かに行かれていたようですが何処に?」
「お前も変わらんな。帰って早々、ワシがどこに行っていたかを気にかけるとはな。なーに、すこしベア卿のところにな。協力を取り付けてきたまでの事」
「そうですか」
マーガレットは、心の中で深い溜息を付く。
父は、サブローのことを殺すだけで飽き足らずこのオダ郡をナバル郡に売り渡して、1郡守としてドレッドに支配される道を選んだ。
それに引き換え、強大なタルカ・ナバルの連合軍に恐れず立ち向かい、タルカを攻める大義名分をルードヴィッヒ陛下から勝ち取ったサブローが誇らしいと。
誰がどう見てもどちらがオダ郡のことを本気で考えてくれる領主なのか一目瞭然だと。
だからマーガレットには迷いが吹っ切れた。
我が子のために膿は全て出し尽くしてあげようと。
「ロレンス、少し出ていなさい」
「はい。外でお待ちしておりますマーガレット様」
ロレンスは、深々と一礼をして、部屋を後にする。
「どうしてロレンスを外に出す必要がある?」
「ロレンスは、ハインリッヒ家の執事です。父上は、これから話すことをサブローに露見しても構わないと?」
「アイツは、ハインリッヒ家の執事である前に我がガロリング家の執事だ。どちらを優先するか一目瞭然だろう」
「頭ごなしに何でも決める父上らしいですわね。そんなの私がハインリッヒ家に嫁ぐ前の話です。今のロレンスは、サブローに礼儀作法を教える程の関わりがあります。父上よりもサブローを選ぶ可能性が無いとは言えない以上、遠ざけるのが得策では?」
「ならお前がワシと会っていることもまずいではないか」
「いいえ。娘が父に会いに行っただけのこと。何も問題はありません」
「そういうものか?」
「そういうものです。で、本題の件ですがお受けしましょう。ただ、旗頭となるからには中途半端は許しません。貴族たちには日和見は許さないようにお願いします父上」
「承知した。娘よ。サブローがめちゃくちゃにしたこのオダ郡をロルフ殿の愛した状態に戻そうぞ」
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短く呟くとマーガレットは、長居は無用と足早にその場を後にするのだった。
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