信長英雄記〜かつて第六天魔王と呼ばれた男の転生〜

揚惇命

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2章 オダ郡を一つにまとめる

43話 反サブロー連合の発足を知る

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 サブローの元に貴族合同での宣戦布告と思わせる書面が届けられたのは、マルケス商会の協力を取り付けて、数日後のことだった。

「思ったよりも早く動いたと思ったがまさか母上まで絡むとは、な。ワシは家族を手にかけねばならぬ因果でも背負っているのか」

 サブローの消え入りそうな程の小さなつぶやき声に反応するロー。

「若?」

「いや、何でもない。爺様がワシを認めぬと貴族だけでなく母上を巻き込んで、反サブロー連合なるものを発足したそうだ」

「若様、それは何でもなくないのでは?」

「いや、爺様がワシのことをよく思っていないことはわかっていた。何れ、こうなるだろうこともある程度の予測はしていたのでな。そのことは、別に気にすることでもない。寧ろ膿を出し切るために利用する気でいたぐらいだ。だが、まさか母上を連合の旗頭に据え、あくまで裏で取り仕切るつもりのようだな。この様子だと責任も全て母上に取らせる腹積りだろうな」

「若。こうなった以上、マッシュたちを呼び戻しますか?」

「いや、マッシュには、タルカを牽制していてもらう必要がある。現有戦力で対処する。ロー爺、兵はどれ程集められる?」

「私兵として、歩兵2百、騎兵3百」

「相手の兵力の4分の1程度と行ったところか十分だ。感謝する」

「獅子奮迅の活躍をして見せましょうぞ」

 ローが鍛えた選りすぐりの精鋭5百である。

 遅れは取らないだろう。

 しかし、兵が多いに越したことはない。

 悩んでいるサブローにルミナが話しかける。

「ねーねーサブロー様」

 ルミナは、サブローの元にやって来て金平糖の虜となった。

 これを作れるサブローのことを心から尊敬して、心を許し、領主様呼びからサブロー様呼びに変わった。

「ルミナか。どうした?金平糖の催促か?」

「もう、そんなに食い意地張ってないもん。ってそうじゃなくて、養父様に頼めば、レオにぃとルカにぃを貸してくれると思うよ」

「レオとは、あの面白い男か?強いのか?」

「化け物かな。敵と認識した相手にレオにぃは、容赦ないから。グラン商会の雇った暗殺者とか野盗とかは、徹底的に殺して、何も知らない金で雇われた傭兵とかは見逃してたかな」

「ほぉ。それは心強い。あのルカというのは利発そうな男だな?」

「うん。ルカにぃは、レオにぃをコントロールするためにも必要。レオにぃだけだと。うん。ちょっと何が起こるかわからない」

「成程な。ルカが策を立て、それを元にレオが動くというわけか」

「違うよ~。ルカにぃがレオにぃの手綱を握ってるだけだよ~。レオにぃは、お馬さんだから直進しかできないもん」

 ルミナよ。

 その言い方は、レオが馬鹿だからルカが居ないと何もできないと言ってるのと同義だと思うが。

 竜人族とやらの感性は違うのだろうか。

「そうか」

「そうだよ~」

 マリーに竜人族のことを聞いたらエルフよりも長寿らしく、ルミナは言動も見た目は歳若いと思っていたが、これで100歳は超えているとのことだ。

 エルフだと子供時代が終わり、青年時代が始まる期間で、竜人族だと後100年程は、こんな感じらしいが。

 空間の切れ目に消えたルミナがすぐに帰ってきた。

「ルカにぃもレオにぃも協力してくれるって、言ってた」

「そ、そうか。た、助かる」

 第六天魔王と恐れられたワシとしたことが生きた世界には、無い魔法の類に驚かされてしまった。

 マリー曰く、ルミナは転移魔法の使い手らしく、このように一瞬で移動できるらしい。

 便利なのだが複数を同時に移動させることはできず、せいぜい2人までが限度らしいが。

 マリーから人を伴っての転移は、魔法力を相当使うらしく、ごく稀に空間の裂け目に落ちて、無事に転移できない危険があると聞き、ワシは遠慮することにした。

 転移に失敗して死ぬというのは、ごめん被るからな。

「若様、ルミナに褒美を与えてください」

「あっあぁ。そうだな。金平糖で良いのか?」

「うん。お姉ちゃんがこの甘いのじゃなかった。金平糖?が好きなのわかるもん。だってこんなに魔法力が溢れてるなんて~」

「ん?」

「若様にとっては不思議かもしれませんが、この金平糖とやらには、私たち魔法師にとって気軽に魔法力が補給できてしまうのです。だからむやみやたらに亜人族にそれを渡してはダメですよ」

「魔法力が気軽に補給できるのは良い事なのではないか?」

「有り余る魔法力は魔法の暴走に繋がります。最悪、このオダ郡は軽く吹き飛んでしまいますが」

 マリーの奴め。

 真顔でとんでもないことを言いよって。

 それにしても金平糖とは、もしかして危ない南蛮菓子であったのか?

 確かに中毒性になる味ではあったが。

 まぁ、そう言われては、認めるしかあるまい。

「承知した。魔法を使う時以外、渡さないと誓おう」

「ありがとうこざいます」

 マリーがハイネルの来訪を知らせに来る。

「フロレンス卿が来ておられます。至急、相談したいことがあるとのことです。どうされますか若様?」

「勿論、会おう」

「では、お連れします」

 間も無くして、ハイネルが姿を現した。

「やぁ、急に訪ねて悪かったね」

「構わん。至急の用事とは?」

「父さんがガロリング卿に加担しなかった中立派の切り崩しを行っているんだけど。その中の。まぁ、ラルフ様の時代に公爵家を賜り、ロルフ様の時に没落させられたうちを含めた旧御三家の現当主が君にあってから決めたいって言ってきてね。父さんが言うには、ラルフ様の頃の御三家は皆、領内統治だけでなく戦にも長けた歴戦の猛者たちだから協力を取り付けたいと。君に手間をかけるけど会ってくれるかい?」

 サブローは、気楽に話してくれる人間が居なかったので、倍ほど歳は離れているがハイネルとは、友人付き合いのような砕けた言葉で話してもらっている。

「勿論、ハンネス老の推薦なら会わせてもらおう。調略、感謝すると伝えてくれ」

「わかったよ。こちらの要件は、それだけだから。こちらも君の勝利ために領内の兵を動員しておくよ」

「感謝する」

「良いんだよ。君を選んだ僕の目に狂いは無かったんだから。それにまた乱そうとするガロリング卿は許さないからね」

 そう言ってハイネルは足早にサブローの元を後にするのだった。
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