信長英雄記〜かつて第六天魔王と呼ばれた男の転生〜

揚惇命

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2章 オダ郡を一つにまとめる

69話 馬レースは大盛り上がり

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 やはり名前が無いというのは不便なものだ。
 といっても日の本も然程変わらぬが、女性の地位の向上は、なかなかままならぬものだな。
 落ち着いたらメモ用紙とやらに好きな名前を書いてもらうというのもアリだな。
 いや、今回の登録名みたいなことになりかねんか?
 流石に自分の名前でそれはないと思いたいが。
 登録名が長いので、馬の名前で応援している領民が多いな。

「マロン、そこだそこでスパートをかけんだよ。何してんだ。そこだそこで抜くんだよ。おい、失速すんな。待て、やめろやめろやめろ。俺の金がぁぁぁぁぁぁぁ」

「シロ、嘘。初級コースの勢いは、どうしたんですの?まだ疲れないで、白馬に乗った王子様が現れるまで、駆け抜けて~」

「ブルーミントよ行くのじゃ」

「シカ、冗談だよなぁ。疲れで失速しちまったのかよ。おい」

「クロマルは、やはり良いですね。その調子です。ブルーミントに迫れていますよ。頑張りなさい」

 やはりレースとなれば、初級の直線で良い成績を残していたシロもシカも速度を落として、一定で走るブルーミントが徐々に追い上げて、今や一位、これには観客も落胆と驚嘆が入り乱れている。
 そこに紛れて、攻めたハンネスと対照的に落胆が激しいのが安定を取ったはずのゴルド、クロマルは落ち着いた走りで、ブルーミントを追う展開か。
 なかなか、初級コースで振り回されていたのが嘘のようではないか。
 ハイネルの奴も実況に熱が入ってきているな。

「おーっと、これはどうしだことでしょうか。優勝候補の筆頭と思われていた『シロ』がどんどん失速している~」

「シロ、まだよ。まだ行ける。そうでしょ」

「ヒヒーン。ブルブル」

「大穴と思われていた『ブルーミント』が安定の走りで、ぐいぐいと迫っていき、その背を捉えている~」

「ブルーミントちゃん、そのまま駆け抜けるのですわ!」

「ヒヒーン?ブルブル?」

「おっと、ここで2番人気の『シカ』まで、速度を落とした~。優勝候補と思しき2頭の失速に観客も頭を抱えているぞ~」

「はわわ。シカ様、私の手綱捌きが悪いばかりにすみませんすみません」

「ヒヒーン!ブルブル!」

「初級コースで振り回していたのは、どこの誰だったんだ!『クロマル』が怒涛の追い上げで迫っているぞ~」

「誰が乗ってると思ってんねん。うちが乗るクロマルは最速やで。なっ」

「ヒヒーン!!ブルブル!!」

「ここで順位の入れ替わりをお伝えする。現在一位を走るのは『ブルーミント』2位に『シロ』3位に『クロマル』4位に『シカ』5位に『マロン』となっている」

「私の乗るシロが抜かされるなんて、まだやれる。そうよね?」

「うちのクロマルも迫ってるで」

「なっ、嘘でしょ。シロもシカもうちが提供した早い馬なのよ」

「御嬢様、はわわ。すみませんすみません」

「マロン、まだよ。まだスパートの時じゃない。最後の直線に全てをかけるの。わかった?」

「ヒヒーン!!!」

「さぁ、勝負は間も無く、最後の直線。依然として1位はブルーミント。ブルーミント。まさかの大穴がここで勝つのか!」

「ブルーミントちゃん、私たちがもう少しで1位ですわよ」

「うち、今日で仕事辞めんねん。クロマル、夢見させてや!」

「まさか、このワタクシのシロが抜かされますなんて」

「はわわ。御嬢様、私の手綱捌きが悪いばかりにシカに乗りこなせなくて、すみませんすみません」

「マロン、今よ!直線で光るその脚を観客の皆さんに見せつけてやるのです!」

「ヒヒーン!!!」

「おーっと、これは予想外も予想外。5位から残りの馬を抜き去り、初めにゴールしたのは、『マロン』だぁ!!!惜しくも敗れはしましたが走り抜いた馬と見事な手綱捌きに盛大な拍手を」

「うおっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!信じてたぜマロンならやってくれるって信じてたぜおれぁ」

「白馬が負けちゃいましたのね。でも、良い勝負でしたわ。私の美貌には敵いませんけど」

「ガッハッハ。負けはしたが面白い勝負であったなハンネスよ」

「フォッフォッフォッ。そうじゃな。倅の実況も様になっておったわい」

「やはり、私の目に狂いはありませんでした。良い走りでした。ですがそれを上回る勝負強さをマロンが発揮しただけのことです。1レース目から白熱していて楽しめました」

「取り敢えず流れに身を任せて、マロンの単勝権、買ったら当たった?いやいや、こんなことマーガレット様になんて言えば。お祭りで賭け事してたから買ったら当たって、お金増えたんですよね。アハハは、まずすぎる。万が一大穴が来た時のことを考えて、3番人気にしておいたのに。どうしたら」

「何を悩んでいるのか知らぬがそのお金を返そうとしてもワシは受け取らぬことはお伝えしよう。勿論、領民の誰からもな。それは、正当な権利だからだ。なーに、まだレースは1つ目。その金で続きを楽しめば良い」

「アハハ。そうします(次で、増えた分還元できるように)」

 なんて、考えていたルルーニ・カイロであるが、この後も賭ける馬、賭ける馬が勝利を重なる展開となり、いつの間にか領民に囲まれ、どの馬を推すんだとか言われて、助言する羽目になり、最後のレースとなる。
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