88 / 166
2章 オダ郡を一つにまとめる
88話 ナルミキャッスルの降伏
しおりを挟む
タンゲ砦に入ったハイネル・フロレンスは、敵方の城、ナルミキャッスル攻略のため連日、真実を織り交ぜた偽報を流し続けた。
「き、聞いたかあの噂」
「あの噂?」
「オダ郡の領主様が公爵家のモンテロ・ハルトを討ち取った話だ」
「あぁ。貴族が殺されるなんて前代未聞のことだ。オダ郡の領主様の怒りは、相当なものと思う。ここは大丈夫かねぇ」
「噂では、オダ郡の領主様は、才あるものは、奴隷だろうが農民だろうが女だろうが身分を問わず士卒として、雇ってくれるそうだぜ」
「本当かよ。じゃあ、俺も一山当てれば、ぐふふ」
「おーい、聞いたか?」
「オダ郡の領主様の件なら、さっき」
「いや、今度はオダ郡の領主様の片腕となられたグロスター卿が馬鹿息子共々デビ侯爵家を滅亡させたらしい」
「本当かよ。あの坊ちゃんには、前領主様の時、娘が無理やり乱暴されても相手が貴族ってことで、何のお咎めもくだされなかった。死んで、せいせいするぜ」
この話を聞いていた傭兵風の男たちが小声で話す。
「どうやら、今度のオダ郡の領主様は、常識のわかる御方のようだ。我らももう一度、信じてみるのはどうだ?」
「先先代様は、戦で亡くなったものたちまで気にかけて、ケアされる良き君主であり聖人であられた。どうしてあのような聖人君主からあのようなクズが産まれたのかと思ったがこの郡を神はまだ見放されていなかったということか。バルガス、烈苛団を集めろ。この城を手土産にサブロー・ハインリッヒに謁見する」
「まぁ、そうなるわな。アイツらもエドの呼びかけを今か今かと待ってるだろうさ。さて、一丁戦も知らぬ貴族どもに戦の恐ろしさを刻みつけてやるとしますか」
烈苛団とは、先先代君主であるラルフ・ハインリッヒが選抜した選りすぐりの傭兵集団であり、古今東西あらゆる武器を使いこなし、暴れ回った戦闘特化の特殊傭兵団である。
元々は、皆奴隷だったためロルフ・ハインリッヒのやり方に嫌気がさし、こうして隠れた。
それが、このナルミキャッスルだった。
日がな一日、田畑を耕し、農民として暮らしていた彼らの目は、まだ光を失っていなかったのだ。
もう一度、武器を持ち戦う覚悟を決めた戦闘のプロ集団の本気を踏ん反り返っていた貴族に止められるわけもなく。
このアイランド公国における城の定義は、城下町と城が合わさった形となっていて、あっという間に城を取り囲まれてしまった。
このナルミキャッスルの元々の城主は、先の戦いで、奇襲を仕掛けて返り討ちとなったモンテロ・ハルトであり、モンテロ・ハルト亡き後は、色欲貴族のエッツィ・ハッスルが遊興に耽っていた。
「ホレホレ、何処に行く。ここかのぉ。柔らかいのぉ」
「いや~ん。エッツィ様のエッチ~」
「たわわに実ったこのお山さんが堪らんわい」
「もう、目隠ししてるのに、エッチなところばかり触るんですから~。帯はここですよ。エッツィ様」
「目が見えんことを良いことに好き勝手できるから、この遊びはやめられんのじゃよ~それそれ~」
「あ~れ~。いや~ん、服がはだけちゃった」
「うほほ~。それでは、アワビを」
「エッツィ様!大変です!城下町で農民たちによる一揆が!」
「うるさいのぉ。ワシは、今忙しいんじゃ。適当にあしらっておけ。さてさて、可愛い猫ちゃんは何処かのぉ」
「エッツィ様、ここですよ~」
「おっとと~」
「きゃっ。もう、的確に倒れてきて押し倒すなんて、本当は見えてるんじゃないですかぁ?」
「この2つのお山に顔が包まれる感触が堪らんわい」
「もう、エッチなんですからぁ。パフっパフっ」
「ほほ~。天にも昇る心地じゃ~」
このエッツィ・ムラムラ、歳は70を超えるが生涯現役を掲げ、割と女性にモテるのだから不思議だ。
そして、遊びはあくまで遊び。
素人に手を出したことはない。
色欲を極める男である。
それ以外には、全く興味を示さない。
「エッツィ様!一揆勢が間も無くここに」
「ムラムラ卿、覚悟!」
「いやーーーーーー!エッツィ様ー」
2本の指で剣を挟むエッツィ・ハッスル。
「やれやれ、ワシの遊びを邪魔して、攻めてきたのは誰かと思えば、お主であったかエド」
「エッツィ、下の剣だけ磨いてきたと思えば、その腕、錆びついていないようだ。それでこそ、我が相手にふさわしい」
「面白いことを言うものじゃ。誰が今まで匿ってきてやったと思っておるんじゃ。恩を仇で返しよって、サブローとやらに未来でも感じたのか?」
「そのことには感謝している。顔見知りであるにも関わらずお前は、報告をしなかったからな」
「ホッホッホ。ワシは、女と戯れたいだけじゃ。それ以外に興味はないのぉ。だが、殺すというのであれば、容赦せんぞい」
「この城を貰い受けたい」
「何じゃ。そんなことか。この城は、今や誰のものでも無かろうて、勝手にせよ。ワシは、もう剣を振るのは、こっちだけと決めておるのでな」
「残念だ。戦場で、何度剣を折られても相手の剣を真剣白刃取りで、奪い取って、切り殺し続けた剣聖ともあろう男が」
「過去の話じゃ。ワシが忠を尽くすのは、今は亡きラルフ様だけぞ。例え、その孫の覇気がいくらラルフ様に似ておっても全くの別物ゆえな。さーて、可愛い子猫ちゃんたち、続きを楽しもうかのぉ」
「いや~ん。エッツィ様の絶倫~」
後ろ目で、エッツィ・ハッスルを見ながらエドは小さく呟いた後、声を大にして言う。
「余生をそうやって楽しむことにしたのだなエッツィ。白旗を掲げよ。我らは、サブロー・ハインリッヒに降伏する」
エッツィ・ハッスル、かつて剣聖と呼ばれた男の今の武器もまた、形を変えた剣なのである。
タンゲ砦で、謀略を張り巡らせていたハイネル・フロレンスの目に信じられないものが。
それは白旗。
紛れもなく降伏の旗が掲げられていたのである。
「アハハ。これは、全くの予想外。罠では無いと思いたいね」
ハイネル・フロレンスは、恐る恐るナルミキヤッスルへと入り、エドと会談。
降伏が紛れもないこと。
貴族ではないことからこの戦いが終わるまで、一市民として扱うことで、決着した。
「き、聞いたかあの噂」
「あの噂?」
「オダ郡の領主様が公爵家のモンテロ・ハルトを討ち取った話だ」
「あぁ。貴族が殺されるなんて前代未聞のことだ。オダ郡の領主様の怒りは、相当なものと思う。ここは大丈夫かねぇ」
「噂では、オダ郡の領主様は、才あるものは、奴隷だろうが農民だろうが女だろうが身分を問わず士卒として、雇ってくれるそうだぜ」
「本当かよ。じゃあ、俺も一山当てれば、ぐふふ」
「おーい、聞いたか?」
「オダ郡の領主様の件なら、さっき」
「いや、今度はオダ郡の領主様の片腕となられたグロスター卿が馬鹿息子共々デビ侯爵家を滅亡させたらしい」
「本当かよ。あの坊ちゃんには、前領主様の時、娘が無理やり乱暴されても相手が貴族ってことで、何のお咎めもくだされなかった。死んで、せいせいするぜ」
この話を聞いていた傭兵風の男たちが小声で話す。
「どうやら、今度のオダ郡の領主様は、常識のわかる御方のようだ。我らももう一度、信じてみるのはどうだ?」
「先先代様は、戦で亡くなったものたちまで気にかけて、ケアされる良き君主であり聖人であられた。どうしてあのような聖人君主からあのようなクズが産まれたのかと思ったがこの郡を神はまだ見放されていなかったということか。バルガス、烈苛団を集めろ。この城を手土産にサブロー・ハインリッヒに謁見する」
「まぁ、そうなるわな。アイツらもエドの呼びかけを今か今かと待ってるだろうさ。さて、一丁戦も知らぬ貴族どもに戦の恐ろしさを刻みつけてやるとしますか」
烈苛団とは、先先代君主であるラルフ・ハインリッヒが選抜した選りすぐりの傭兵集団であり、古今東西あらゆる武器を使いこなし、暴れ回った戦闘特化の特殊傭兵団である。
元々は、皆奴隷だったためロルフ・ハインリッヒのやり方に嫌気がさし、こうして隠れた。
それが、このナルミキャッスルだった。
日がな一日、田畑を耕し、農民として暮らしていた彼らの目は、まだ光を失っていなかったのだ。
もう一度、武器を持ち戦う覚悟を決めた戦闘のプロ集団の本気を踏ん反り返っていた貴族に止められるわけもなく。
このアイランド公国における城の定義は、城下町と城が合わさった形となっていて、あっという間に城を取り囲まれてしまった。
このナルミキャッスルの元々の城主は、先の戦いで、奇襲を仕掛けて返り討ちとなったモンテロ・ハルトであり、モンテロ・ハルト亡き後は、色欲貴族のエッツィ・ハッスルが遊興に耽っていた。
「ホレホレ、何処に行く。ここかのぉ。柔らかいのぉ」
「いや~ん。エッツィ様のエッチ~」
「たわわに実ったこのお山さんが堪らんわい」
「もう、目隠ししてるのに、エッチなところばかり触るんですから~。帯はここですよ。エッツィ様」
「目が見えんことを良いことに好き勝手できるから、この遊びはやめられんのじゃよ~それそれ~」
「あ~れ~。いや~ん、服がはだけちゃった」
「うほほ~。それでは、アワビを」
「エッツィ様!大変です!城下町で農民たちによる一揆が!」
「うるさいのぉ。ワシは、今忙しいんじゃ。適当にあしらっておけ。さてさて、可愛い猫ちゃんは何処かのぉ」
「エッツィ様、ここですよ~」
「おっとと~」
「きゃっ。もう、的確に倒れてきて押し倒すなんて、本当は見えてるんじゃないですかぁ?」
「この2つのお山に顔が包まれる感触が堪らんわい」
「もう、エッチなんですからぁ。パフっパフっ」
「ほほ~。天にも昇る心地じゃ~」
このエッツィ・ムラムラ、歳は70を超えるが生涯現役を掲げ、割と女性にモテるのだから不思議だ。
そして、遊びはあくまで遊び。
素人に手を出したことはない。
色欲を極める男である。
それ以外には、全く興味を示さない。
「エッツィ様!一揆勢が間も無くここに」
「ムラムラ卿、覚悟!」
「いやーーーーーー!エッツィ様ー」
2本の指で剣を挟むエッツィ・ハッスル。
「やれやれ、ワシの遊びを邪魔して、攻めてきたのは誰かと思えば、お主であったかエド」
「エッツィ、下の剣だけ磨いてきたと思えば、その腕、錆びついていないようだ。それでこそ、我が相手にふさわしい」
「面白いことを言うものじゃ。誰が今まで匿ってきてやったと思っておるんじゃ。恩を仇で返しよって、サブローとやらに未来でも感じたのか?」
「そのことには感謝している。顔見知りであるにも関わらずお前は、報告をしなかったからな」
「ホッホッホ。ワシは、女と戯れたいだけじゃ。それ以外に興味はないのぉ。だが、殺すというのであれば、容赦せんぞい」
「この城を貰い受けたい」
「何じゃ。そんなことか。この城は、今や誰のものでも無かろうて、勝手にせよ。ワシは、もう剣を振るのは、こっちだけと決めておるのでな」
「残念だ。戦場で、何度剣を折られても相手の剣を真剣白刃取りで、奪い取って、切り殺し続けた剣聖ともあろう男が」
「過去の話じゃ。ワシが忠を尽くすのは、今は亡きラルフ様だけぞ。例え、その孫の覇気がいくらラルフ様に似ておっても全くの別物ゆえな。さーて、可愛い子猫ちゃんたち、続きを楽しもうかのぉ」
「いや~ん。エッツィ様の絶倫~」
後ろ目で、エッツィ・ハッスルを見ながらエドは小さく呟いた後、声を大にして言う。
「余生をそうやって楽しむことにしたのだなエッツィ。白旗を掲げよ。我らは、サブロー・ハインリッヒに降伏する」
エッツィ・ハッスル、かつて剣聖と呼ばれた男の今の武器もまた、形を変えた剣なのである。
タンゲ砦で、謀略を張り巡らせていたハイネル・フロレンスの目に信じられないものが。
それは白旗。
紛れもなく降伏の旗が掲げられていたのである。
「アハハ。これは、全くの予想外。罠では無いと思いたいね」
ハイネル・フロレンスは、恐る恐るナルミキヤッスルへと入り、エドと会談。
降伏が紛れもないこと。
貴族ではないことからこの戦いが終わるまで、一市民として扱うことで、決着した。
1
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる