91 / 166
2章 オダ郡を一つにまとめる
91話 焦るレーニン・ガロリング
しおりを挟む
マルネキャッスル・ナルミキャッスル・オオタカキャッスルの三城を失い包囲されつつある現状に焦るレーニン・ガロリングは、なりふり構わずナバル郡を治めるドレッド・ベアとタルカ郡を治めるデイル・マルの両方に檄文を送る。
「あのクソガキに付いた過去の栄光どもが。ベア卿に手紙を送りつけろ。マーガレットを妻にオダ郡を差し出すゆえ、援軍を送れとな」
「しかし、それではオダ郡の統治は」
「煩い!あんなクソガキにやるぐらいならオダ郡に拘る必要などない。マーガレットにも良い加減、動けと言え」
「はっはい」
イライラして、荒れてそこら中の椅子や机を蹴り飛ばし、台をバンバンと叩き怒り散らすレーニン・ガロリングを前に、従うしかなかった。
「そう。お父様が迷惑をかけたわね」
「それでは、ようやく動いてくださるのですね?」
「それとこれとは話は別よ。前も言った通り、この地はお父様だけでなくサブローにとって、喉元なの。私が動けば、サブローはショバタを捨ててでもここを取るわ」
「それならそれで勝ちでは、ここはあくまで急造した城。それに引き換えショバタは、本拠地の城です」
「わかっていないわね。他の城は急造した城に落とされたのではなくて?」
「それは。だからこそ、ここでショバタを落とせば、我らの勝ちです」
「馬鹿ね。ここで、ショバタを落としてもサブローの負けでは無いわ」
「もしや、息子可愛さに我らの提案を拒んでいるのでは、ありませんな!」
「息子可愛さならそもそもお父様に付きはしないわ。それよりも動かす人員がいるのではなくて?サブローは、ショバタに民を置いてなかったそうね」
「そこまでは、わかりかねます。囮として使いモンテロ様を壊滅させたとしか」
「えぇ。そんなこともわからないようね貴方は。貴族のあり方を変えようとするサブローが囮として使う城に民を置いておくかしら?答えは否よ。なら、その民はどこに配置したか。後方に突然現れた城が1つあったわよね?」
「はい」
「なら、そこを攻めてみるべきだと思うわよ。残りの貴族たちを連れてね」
「そのような後方の城など攻める必要など無い。早くショバタを」
「もう。はいはい。わかりました。攻めれば良いんでしょ」
「あ、ありがとうございます」
「私も動くから後方の城は攻めなさい。良いわね?」
「だから後方の城など」
「揺動もできないのかしら?」
「か、かしこまりました」
こうして去っていく、レーニン・ガロリングの伝令を見送り溜め息をつくマーガレット・ハインリッヒに、毛布をかけるルルーニ・カイロ。
「マーガレット様、夜は冷えますよ」
「ありがとうルルーニ。はぁ。まだ早いのだけどサブローの顔を拝んであげましょうか」
「ここを降りれば、サブロー様は」
「間違いなく、今も機会を伺っているでしょうね。全く、お父様は遊び感覚だから困るわ。まぁ、お陰で多くの貴族が死ぬことにはなったけどね。サブローもサブローよ。城をこの速さで落としたらどうなるか。ふーん。成程ね。私を釣り出したいのね。クスクス。まぁ、そろそろ佳境ではあるし、ここを返しても良いのだけど。息子の方から会いたいだなんて、母として嬉しいわね」
「マーガレット様」
「あら、しんみりさせてごめんなさいね。ここは寒いわ。中に入るわ」
「はい。あったかいココアをお入れします」
「まぁ。それは嬉しいわ。でもルルーニ、貴方は私の執事じゃ無いんだからそこまで世話を」
「前も言いましたが好きなんですマーガレット様が。一方的に世話を焼くぐらいは良いでしょう?」
「ふふっ。私を堕とせるようにせいぜい頑張りなさいな。でもロルフの壁は高いわよ。良い為政者ではなかったかもしれないけど私にとっては、たった1人の愛する人であり、子を成したのですもの」
「今は、その言葉だけで充分です」
「そう」
数日後のナバル郡。
「ほぉ。俺にマーガレットを輿入れさせるとな?」
「はい。ですので、どうかこの内乱に乗じて、オダ郡を」
「ふむぅ。魅力的な提案だが。そんなことをすれば、俺が陛下に睨まれるのでな。養女として貰い受けることを許可するのであれば、援軍を送ってやろう。こちらとしてもサブローを放置すれば、いずれ我が領地にも影響があることはわかっているのでな」
「わかりました。レーニン様に掛け合います。しかし、現状、追い込まれているのは明らか。お願いします。どうかどうか」
「わかった。わかった。マリーカ郡とチャルチ郡にも参戦させるゆえ、俺の提案はきちんとレーニンに伝えよ」
「かしこまりました」
レーニン・ガロリングの伝令がその場を後にするとドレッド・ベアは含み笑いをしていた。
「追い詰められて、こうも上手くいくとはな。レーニンよ。お前は、娘を陛下にとっとと差し出して、介入させれば良かったのだ。しかし、それをしなかったからこそ。俺の手元に最強のカードが来るのだがな」
「しかし、ドレッド様。マル卿は頑なに動きません。パルケス卿もプリスト卿も動かないでしょう。どうされるつもりか?」
「サム。何、誓紙ではなく血判状で、4郡の繋がりを確実にするのだ。デイルに届けるのだ。良いな」
「本当に良いのですな?最悪、陛下を敵に回すことに。成程、そのためのマーガレットでしたか。心得ました」
「察しが良くて助かる」
この危機にサブロー・ハインリッヒはどうするのか。
「あのクソガキに付いた過去の栄光どもが。ベア卿に手紙を送りつけろ。マーガレットを妻にオダ郡を差し出すゆえ、援軍を送れとな」
「しかし、それではオダ郡の統治は」
「煩い!あんなクソガキにやるぐらいならオダ郡に拘る必要などない。マーガレットにも良い加減、動けと言え」
「はっはい」
イライラして、荒れてそこら中の椅子や机を蹴り飛ばし、台をバンバンと叩き怒り散らすレーニン・ガロリングを前に、従うしかなかった。
「そう。お父様が迷惑をかけたわね」
「それでは、ようやく動いてくださるのですね?」
「それとこれとは話は別よ。前も言った通り、この地はお父様だけでなくサブローにとって、喉元なの。私が動けば、サブローはショバタを捨ててでもここを取るわ」
「それならそれで勝ちでは、ここはあくまで急造した城。それに引き換えショバタは、本拠地の城です」
「わかっていないわね。他の城は急造した城に落とされたのではなくて?」
「それは。だからこそ、ここでショバタを落とせば、我らの勝ちです」
「馬鹿ね。ここで、ショバタを落としてもサブローの負けでは無いわ」
「もしや、息子可愛さに我らの提案を拒んでいるのでは、ありませんな!」
「息子可愛さならそもそもお父様に付きはしないわ。それよりも動かす人員がいるのではなくて?サブローは、ショバタに民を置いてなかったそうね」
「そこまでは、わかりかねます。囮として使いモンテロ様を壊滅させたとしか」
「えぇ。そんなこともわからないようね貴方は。貴族のあり方を変えようとするサブローが囮として使う城に民を置いておくかしら?答えは否よ。なら、その民はどこに配置したか。後方に突然現れた城が1つあったわよね?」
「はい」
「なら、そこを攻めてみるべきだと思うわよ。残りの貴族たちを連れてね」
「そのような後方の城など攻める必要など無い。早くショバタを」
「もう。はいはい。わかりました。攻めれば良いんでしょ」
「あ、ありがとうございます」
「私も動くから後方の城は攻めなさい。良いわね?」
「だから後方の城など」
「揺動もできないのかしら?」
「か、かしこまりました」
こうして去っていく、レーニン・ガロリングの伝令を見送り溜め息をつくマーガレット・ハインリッヒに、毛布をかけるルルーニ・カイロ。
「マーガレット様、夜は冷えますよ」
「ありがとうルルーニ。はぁ。まだ早いのだけどサブローの顔を拝んであげましょうか」
「ここを降りれば、サブロー様は」
「間違いなく、今も機会を伺っているでしょうね。全く、お父様は遊び感覚だから困るわ。まぁ、お陰で多くの貴族が死ぬことにはなったけどね。サブローもサブローよ。城をこの速さで落としたらどうなるか。ふーん。成程ね。私を釣り出したいのね。クスクス。まぁ、そろそろ佳境ではあるし、ここを返しても良いのだけど。息子の方から会いたいだなんて、母として嬉しいわね」
「マーガレット様」
「あら、しんみりさせてごめんなさいね。ここは寒いわ。中に入るわ」
「はい。あったかいココアをお入れします」
「まぁ。それは嬉しいわ。でもルルーニ、貴方は私の執事じゃ無いんだからそこまで世話を」
「前も言いましたが好きなんですマーガレット様が。一方的に世話を焼くぐらいは良いでしょう?」
「ふふっ。私を堕とせるようにせいぜい頑張りなさいな。でもロルフの壁は高いわよ。良い為政者ではなかったかもしれないけど私にとっては、たった1人の愛する人であり、子を成したのですもの」
「今は、その言葉だけで充分です」
「そう」
数日後のナバル郡。
「ほぉ。俺にマーガレットを輿入れさせるとな?」
「はい。ですので、どうかこの内乱に乗じて、オダ郡を」
「ふむぅ。魅力的な提案だが。そんなことをすれば、俺が陛下に睨まれるのでな。養女として貰い受けることを許可するのであれば、援軍を送ってやろう。こちらとしてもサブローを放置すれば、いずれ我が領地にも影響があることはわかっているのでな」
「わかりました。レーニン様に掛け合います。しかし、現状、追い込まれているのは明らか。お願いします。どうかどうか」
「わかった。わかった。マリーカ郡とチャルチ郡にも参戦させるゆえ、俺の提案はきちんとレーニンに伝えよ」
「かしこまりました」
レーニン・ガロリングの伝令がその場を後にするとドレッド・ベアは含み笑いをしていた。
「追い詰められて、こうも上手くいくとはな。レーニンよ。お前は、娘を陛下にとっとと差し出して、介入させれば良かったのだ。しかし、それをしなかったからこそ。俺の手元に最強のカードが来るのだがな」
「しかし、ドレッド様。マル卿は頑なに動きません。パルケス卿もプリスト卿も動かないでしょう。どうされるつもりか?」
「サム。何、誓紙ではなく血判状で、4郡の繋がりを確実にするのだ。デイルに届けるのだ。良いな」
「本当に良いのですな?最悪、陛下を敵に回すことに。成程、そのためのマーガレットでしたか。心得ました」
「察しが良くて助かる」
この危機にサブロー・ハインリッヒはどうするのか。
1
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活
仙道
ファンタジー
リメイク先:「視線が合っただけで美少女が俺に溺れる。異世界で最強のハーレムを作って楽に暮らす」
ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。
彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる