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2章 オダ郡を一つにまとめる
92話 デイル・マルの動き
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サブロー・ハインリッヒが内乱の鎮圧をしている頃、タルカ郡を治めるデイル・マルは、ハザマオカのトラウマから攻め込めずにいた。
「あの城が忌々しい。敵の動きに変わりはあったか?」
「いえ、相変わらずハザマオカから動く気配はありません」
「内乱が始まれば隙が産まれて、奪う機会も出るかと思ったが、クソガキにとって、あの兵は動かさなくても鎮圧できる内乱ということか。やはり、動かずにいて正解か」
「ですが本当にこのまま手をこまねいていて良いのでしょうか?」
「お前、今なんて言った?」
「誰が手をこまねいているだ?それは遠回しに俺が無能だって、言ってんのか。アァ」
「いえ、そのようなことは。ですが一般論的に、内乱に乗じて、攻めるのは上策かと」
「成程、成程。要は静観してる俺が無能だと言いたいわけだな?」
「いえ、ただ一般論を。グフッ」
デイル・マルは、持っていた剣で、兵士を貫いた。
「テメェの一般論なんざ。知らねぇよ。ここでは、俺が法だ。俺が動かねぇって言ったら動かねぇんだよ。わかったか。アァ」
しかし、返答が帰ってくるわけもない。
既に、この兵士は絶命しているのだから。
「フン。この程度で死ぬとは、たわいもない。おい、コイツを処理しておけ」
「イエッサ!」
さらに数ヶ月が過ぎ、入ってくる報告は、サブロー・ハインリッヒが内乱を優勢に鎮圧し、既に反乱貴族の持つ3つの城が陥落したということである。
「どいつもこいつも全く役に立たない。内乱で弱れば、こちらに攻めてくる時間も稼げるかと思ったがそれすらできんのか。何がクソガキのことはよくわかってるだ。孫のことすらわからねぇ男と息子のことすら理解できない母が一緒になって、反乱したところで、この程度じゃねぇか。あーイライラするぜ。オラァ」
「カハッ」
近くにいた兵士のお腹をまるでサンドバッグでも殴るかのように殴り付けるデイル・マル。
「オラァ。オラァ」
「カハッ。おえっ」
「こんのクソガキがぁぁぁぁぁ」
「ゴホッ」
最後の一撃の威力は凄まじく、兵士の内臓にはとんでも無いダメージが蓄積され、血を吐いて、そのまま倒れた。
「ふぅ。スッキリしたぜ。おい、この動かなくなったゴミを掃除しておけ」
「イエッサ!」
そう、デイル・マルの治める土地で生きたければ従順でなければならない。
そして、理不尽にも耐えなければならないのだ。
しかし、不思議なことに誰もこの状況からの解放を望まない。
皆、恐れているのだ。
このデイル・マルという新興貴族から郡を治めるまでに成り上がった男を。
この男に性欲は無い。
それだけが女性にとっては、救いと言える。
「デイル様、またライ卿。いえ、あの小汚いサムとかいう男が訪ねてきています」
「そのような報告しかできないのか?」
「いえ、なんでも誓紙を持ってきたと」
「何故、早くそれを言わない。この馬鹿が!」
「ひっ。殺さないで。殺さないで」
「アァ?何だその反応は?まるで俺が悪者みたいだよな?オラァ」
「グフッ。やめへ。やめへ。きちんと報告しますから。お願いします。殺さないで」
「それをやめろって言ってんだ!きちんと報告すんのは、当たり前。殴られるんのも当たり前。お前は俺の何だ?」
「所有物です」
「そうだ。物を壊すのも俺次第だ。わかったか。オラァ」
「ガハッ」
デイル・マルという男は、とにかく短気であり、そして、やることを否定する人間が大嫌いなのだ。
そういうのは、ゴミのように潰さないと気が済まない。
「おい、お前。客人を迎えるのに、この血溜まりは何だ?きちんと掃除しておけ。良いな?」
「イエッサ!」
入り口で、サム・ライを出迎えるデイル・マル。
「これはこれは、サム殿。ドレッド殿は決心なされたようで何より。して、誓紙は何処かな?」
「これだ。サブロー・ハインリッヒに対して、4郡が裏切ることなく共に当たるという血判状だ」
「血判状とは、大きくでましたな。ヒヒヒ。誓いの強固さとして、これ程効力の高いものは無いでしょう。喜んで、押しましょう。すぐにアイツらも呼びますよ。ヒヒヒ」
「共にサブローを仕留めよう」
「して、ドレッド殿は、どのような切り札を手に入れたのかね?」
「な、何のことだ。我らは、内乱を優勢に進めるサブローに対して危機感を」
「そんな、表向きの建前なぞ何の意味もない。ヒヒヒ。強力な切り札、それも陛下が昔からお熱だった人間を確保したとしたら。ヒヒヒ」
「へ、変なことを言いなさるのだなマル卿」
「その切り札、当然こちらに渡してくれるのでしょうな?」
「た、例え。こちらがそんな強力なカードを手に入れていたとして、どうしてそちらに渡す必要がある?」
「ヒヒヒ。別にこちらは構わないんですよ。ナバルが単独で、サブローとやりあってくれても」
「な!?」
「陛下も言ってたでは無いですか。うちの郡に手を貸した場合は、クソガキに判断を委ねると。そちらが言い訳をしても、手を出そうとしたのは、誰の目から見ても明らか。ドレッド殿も詰めが甘い甘い」
「ぐっ。こうなるからやめるべきだと申したのだ。そちらの察しの通りだが、完全に掌握したわけでは無い。そういう約束を取り付けただけだ。これしか言えん」
「結構。結構。それで陛下の協力を得られるのなら安いものですからねぇ。ヒヒッ」
オダ郡の預かり知らぬところで、マーガレット・ハインリッヒは、勝手にやり取りされ、陛下への貢物という扱いにされているのである。
「あの城が忌々しい。敵の動きに変わりはあったか?」
「いえ、相変わらずハザマオカから動く気配はありません」
「内乱が始まれば隙が産まれて、奪う機会も出るかと思ったが、クソガキにとって、あの兵は動かさなくても鎮圧できる内乱ということか。やはり、動かずにいて正解か」
「ですが本当にこのまま手をこまねいていて良いのでしょうか?」
「お前、今なんて言った?」
「誰が手をこまねいているだ?それは遠回しに俺が無能だって、言ってんのか。アァ」
「いえ、そのようなことは。ですが一般論的に、内乱に乗じて、攻めるのは上策かと」
「成程、成程。要は静観してる俺が無能だと言いたいわけだな?」
「いえ、ただ一般論を。グフッ」
デイル・マルは、持っていた剣で、兵士を貫いた。
「テメェの一般論なんざ。知らねぇよ。ここでは、俺が法だ。俺が動かねぇって言ったら動かねぇんだよ。わかったか。アァ」
しかし、返答が帰ってくるわけもない。
既に、この兵士は絶命しているのだから。
「フン。この程度で死ぬとは、たわいもない。おい、コイツを処理しておけ」
「イエッサ!」
さらに数ヶ月が過ぎ、入ってくる報告は、サブロー・ハインリッヒが内乱を優勢に鎮圧し、既に反乱貴族の持つ3つの城が陥落したということである。
「どいつもこいつも全く役に立たない。内乱で弱れば、こちらに攻めてくる時間も稼げるかと思ったがそれすらできんのか。何がクソガキのことはよくわかってるだ。孫のことすらわからねぇ男と息子のことすら理解できない母が一緒になって、反乱したところで、この程度じゃねぇか。あーイライラするぜ。オラァ」
「カハッ」
近くにいた兵士のお腹をまるでサンドバッグでも殴るかのように殴り付けるデイル・マル。
「オラァ。オラァ」
「カハッ。おえっ」
「こんのクソガキがぁぁぁぁぁ」
「ゴホッ」
最後の一撃の威力は凄まじく、兵士の内臓にはとんでも無いダメージが蓄積され、血を吐いて、そのまま倒れた。
「ふぅ。スッキリしたぜ。おい、この動かなくなったゴミを掃除しておけ」
「イエッサ!」
そう、デイル・マルの治める土地で生きたければ従順でなければならない。
そして、理不尽にも耐えなければならないのだ。
しかし、不思議なことに誰もこの状況からの解放を望まない。
皆、恐れているのだ。
このデイル・マルという新興貴族から郡を治めるまでに成り上がった男を。
この男に性欲は無い。
それだけが女性にとっては、救いと言える。
「デイル様、またライ卿。いえ、あの小汚いサムとかいう男が訪ねてきています」
「そのような報告しかできないのか?」
「いえ、なんでも誓紙を持ってきたと」
「何故、早くそれを言わない。この馬鹿が!」
「ひっ。殺さないで。殺さないで」
「アァ?何だその反応は?まるで俺が悪者みたいだよな?オラァ」
「グフッ。やめへ。やめへ。きちんと報告しますから。お願いします。殺さないで」
「それをやめろって言ってんだ!きちんと報告すんのは、当たり前。殴られるんのも当たり前。お前は俺の何だ?」
「所有物です」
「そうだ。物を壊すのも俺次第だ。わかったか。オラァ」
「ガハッ」
デイル・マルという男は、とにかく短気であり、そして、やることを否定する人間が大嫌いなのだ。
そういうのは、ゴミのように潰さないと気が済まない。
「おい、お前。客人を迎えるのに、この血溜まりは何だ?きちんと掃除しておけ。良いな?」
「イエッサ!」
入り口で、サム・ライを出迎えるデイル・マル。
「これはこれは、サム殿。ドレッド殿は決心なされたようで何より。して、誓紙は何処かな?」
「これだ。サブロー・ハインリッヒに対して、4郡が裏切ることなく共に当たるという血判状だ」
「血判状とは、大きくでましたな。ヒヒヒ。誓いの強固さとして、これ程効力の高いものは無いでしょう。喜んで、押しましょう。すぐにアイツらも呼びますよ。ヒヒヒ」
「共にサブローを仕留めよう」
「して、ドレッド殿は、どのような切り札を手に入れたのかね?」
「な、何のことだ。我らは、内乱を優勢に進めるサブローに対して危機感を」
「そんな、表向きの建前なぞ何の意味もない。ヒヒヒ。強力な切り札、それも陛下が昔からお熱だった人間を確保したとしたら。ヒヒヒ」
「へ、変なことを言いなさるのだなマル卿」
「その切り札、当然こちらに渡してくれるのでしょうな?」
「た、例え。こちらがそんな強力なカードを手に入れていたとして、どうしてそちらに渡す必要がある?」
「ヒヒヒ。別にこちらは構わないんですよ。ナバルが単独で、サブローとやりあってくれても」
「な!?」
「陛下も言ってたでは無いですか。うちの郡に手を貸した場合は、クソガキに判断を委ねると。そちらが言い訳をしても、手を出そうとしたのは、誰の目から見ても明らか。ドレッド殿も詰めが甘い甘い」
「ぐっ。こうなるからやめるべきだと申したのだ。そちらの察しの通りだが、完全に掌握したわけでは無い。そういう約束を取り付けただけだ。これしか言えん」
「結構。結構。それで陛下の協力を得られるのなら安いものですからねぇ。ヒヒッ」
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