信長英雄記〜かつて第六天魔王と呼ばれた男の転生〜

揚惇命

文字の大きさ
105 / 166
2章 オダ郡を一つにまとめる

105話 スエモリの戦い(中編)

しおりを挟む
 スエモリ城に無事に辿り着いたサブロー・ハインリッヒは、軍議に移った。

「皆を家族の無用な戦に巻き込んだこと心苦しく思う。ここスエモリ城を治めるのは我が祖父レーニン・ガロリングであり、反乱軍の副当主。いや、表に飾りの母上を立てた実質的な支配者である。そして、我らが倒さねばならぬ敵だ。ワシのことを気遣う必要などない。爺様を。いや、このような戦を仕掛けた木偶の棒であるレーニンを打ち取るのだ。良いな?では、軍議を始める。レイヴァンド卿よ。スエモリを攻めるには如何するべきと考える?」

「はっ。サブロー様が作ったこの破城槌なるものの有用性は、グロスター卿が証明してくださいました。これを用いて、城門を破壊。動揺する敵兵力を各個撃破するのが良いかと考えます」

「であるか。それも一つの手であろう。マリーは、どう考える?」

「若様。このスエモリキャッスルは見た限り、木造建築が多いように感じます。人への被害を考える必要がないのであれば、火を用いて、焼き尽くせば、こちらの被害を最小限に甚大な被害を出せるかと」

「マリーよ。良いところに目を付けたな。ワシも火を用いるのが1番良いと考えておる」

 そこまで言うとセル・マーケットが口を挟む。

「恐れながらサブロー様に申し上げます。敵とはいえ、罪なき民まで焼くのは禍根を残すことになります。ここは一度、レイヴァンド卿の策で城門を破壊するのが良いのではないかと」

「ほぉ。セルよ。どうして、そう考える?」

「逃げ道ができれば、戦を心から望まない民は逃げ出します。残ったものは、ガロリング卿。いえレーニンと志を同じくするものか逃げられない事情のあるもの。それに火を用いれば復興に時間を要することになります。それは最悪の手段と心得ます。使わずに済むのならその方が良いでしょう」

「成程、良い。此度は、セルの意見を聞き入れよう。レイヴァンド卿よ。破城槌にて、城門を速やかに破壊。城壁を占拠せよ」

「はっ」

「破城槌の防衛の任務は横綱に任せる」

「おいどんでごわすか?」

「どうした不安か?」

「いや、ただの一兵卒に任せるには、大役すぎると思ったのでごわす」

「ハッハッハ。そうだな。確かに大役だ。だが安心せよ。スナイプ、高さがあるがどうだ?」

「まぁ、狙えなくは無い。要は、ポンチョ殿を援護せよと」

「流石、当主の御母堂は元気か?」

「ゴホッ。ゴホッ。何故、そこで母が。いえ、サブロー様のお陰で、動物の被害で死ぬものが減り、ようやく父の骸を弔ってやることができました」

「うむ。母子2人なのだ。無茶をするでないぞ」

「サブロー様。承知しました。お心遣い感謝致す」

「良い良い。まぁそういうことだ。横綱は上にだけ注意を向けて、時折来る矢の攻撃から破城槌を動かす者たちを守るのだ」

「まぁ、スナイプ殿の腕前なら安心でごわすな」

「まぁ、下から上に向かって矢を射ることは中々無い。山なりに落ちるからな。それを遥か上に構えて射るわけだ。撃ち漏らしが多くなる。しっかりと防衛は任せるぞ。ポンチョ殿」

「承知でごわす」

「ウマスキよ。出番が無いと思って安心していたのでは無かろうな?」

「そ、そ、そんなことはありませんよ。私達は、ショバタキャッスルで火付という仕事をしましたから今回はお留守番かなって。アハハ」

「今回は、軽装騎兵を活かした輸送任務を命じる。スナイプに届ける矢が尽きぬように管理せよ。戦うのはまだ怖かろう?」

「サブロー様のお心遣いに感謝します。確かに戦うのはまだ怖いです。剣を握ったこともありませんでしたし。でも、サブロー様の作った女性だけの軽装騎馬隊を任されているのです。これからは鍛錬します。此度の輸送任務、謹んでお受け致します」

「うむ。これで全体の動きの通達は済ませた。レイヴァンド卿は、破城槌で城門を壊した後、間伐入れずに精鋭騎兵で、城下は雪崩れ込み、抵抗せぬものに被害は加えないとだけ伝えよ」

「はっ」

 城壁の上に上がったレーニン・ガロリングは、大声で威嚇する。

「クソガキが思い上がりおって。その程度の兵力で、我が居城を攻め滅ぼせると考えるたか。返り討ちにして、貴様の首を討ち取ってくれるわ!」

「爺様のことは、本当に気に入っていた。だからこそこの国の階級制度がいかに可笑しいか気付いて欲しかった。このようなことになり残念だ。だが、こうなっては是非もなし。この手でその首、取らせてもらうぞレーニン!全軍、攻撃を開始せよ」

「防衛陣形、城壁の上から弓を射るのだ。敵を近づけさせるでないぞ」

「負けたらサブローは、貴族を容赦なく殺すぞ。お前たち、一歩も引くんじゃねぇぞ。城門を破らせるな。弓隊、構え。はな。グフッ」

「た、隊長の図上に矢が。一体どこから」

「下から弓が飛んできてるぞ」

「馬鹿な。下から弓を上に飛ばせるわけがねぇ。しかもあの距離から?」

 サブロー・ハインリッヒの後方で城壁の上を狙うように一列に並んだスナイプ・ハンター率いる弓隊が試行錯誤しながら弓を射っていた。

「スナイプ様は流石だ。1発目で敵の隊長を討ち取られた」

「ダニエル、無駄口を叩いている暇があるのか?また外れてるぞ」

「す、すみません。すぐに修正を」

 このような感じで風の流れを利用して重力を用いて、上に射った弓が重力を利用して落下してくる矢が突き刺さるように調整したのである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...