信長英雄記〜かつて第六天魔王と呼ばれた男の転生〜

揚惇命

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2章 オダ郡を一つにまとめる

115話 暗殺者との激闘

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 サブロー・ハインリッヒが何者かの気配に気付き、マリーとロー・レイヴァンドを遠ざけると斬りかかってきた忍び装束に布マスクと仮面で顔を隠した小太刀を使う何者かと戦闘を開始する。

「小僧の癖にここまで動けるとは、サブロー・ハインリッヒという男を侮っていた」

「見たところうぬは頭領と名乗った割には1人のようだが何か理由でもあるのか?」

「小僧の暗殺に大事な部下を巻き込まなかっただけのこと。こうなるのなら協力させるべきだったと後悔している」

「ワシにとっては、有難いな。こうして、うぬと話せる機会を得られるのであるからな」

「フッ。全く、調子の狂う小僧だ。しかし、金のため死んでもらうぞ」

「依頼主のためではなく金のためか。何やら事情がありそうだな」

「勝手に推測すればいい。小僧が死ぬことに変わりはないのだからな」

「ワシのことを小僧、小僧と呼ぶが。うぬも似たようなものであろう。ちびっ子よ」

「わ、私は小さくなんてない!」

「私?」

「何のことだ?俺が小さいわけがないだろう」

「そうか、勘違いなら済まなかった。続けよう」

 ほぉ。
 改めて見ると忍びに良く似ている。
 それに此奴、男口調だが中身は女か。
 どうりで、身軽に動けるわけだ。
 しかし、簡単に気配を察知されるあたり、忍びとしては素人の領域と言える。
 とても、頭を張る程の腕とは思えん。
 だが、小太刀を用いた暗器術は精錬されている。
 どちらかと言うと武将に近い。
 武器の手入れも行き届いている。
 それよりここまで使いこなすのに相当努力したのも見て取れる。
 此奴は、死なせるには惜しい人材だ。
 それに槍など持たせても使いこなすだろう。
 色々と成長が楽しみでもあるな。
 しかし、だとすれば腕を買われただけの鉄砲玉か?
 それにしては、頭領を騙る辺り、近親者の可能性の方が高いか?
 それで金が必要ときた。
 成程、だいたい読めてきたな。

「考え事をしているなど随分と余裕のようだな」

 ガキーン。

「暗殺慣れしているのでな。この程度なら考え事しながらでも相手できるのだ」

「舐められたものだ」

 さて、一つ驚かせてやるとしよう。
 反応を見るのが楽しみだ。

「どうした舐められるのは嫌か?なら、かかってきたらどうだ?」

「言わせておけば、その言葉後悔させてやる」

 向かってきた暗殺者の服をザクリと切り裂く。

「きゃっ!?この卑怯者!服を斬るなんて、この変態!」

「変態?男が何を言っている?それで、どうする?まだ、続けるか?」

「きょ、今日のところは見逃してあげるわよ!」

 暗殺者の道を遮るマリー。

「何処に行かれるおつもりですか?若様に手を出して、黙って見逃すとでも?」

「あの人は、手を出すなって言ってたじゃない。こんなの反則よ!」

「確かにワシは、手を出すなと言ったがそれは、一騎討ちに関してのこと。終わった後のことまで責任は持たん。マリーは、怒らせると怖いぞ~」

「ひぃっ。良いわよ。眼鏡かけた女は根暗って相場は決まってるんだから!」

「言ってくれますね。これでも若様の護衛なんですよ。私」

「へっ?嘘?」

 小太刀で斬りかかる暗殺者の腕にマリーは手刀で、小太刀を落とし、無力化して、腕を背後に回して、縄で縛る。

「ちょっと話しなさいよこの暴力女!暴力反対!暴力反対!」

「若様を暗殺しようとした小娘が何を言ってるんです?」

「仕方ないじゃない!目の前で10億も積まれたんだから」

「へぇ。この腕の小娘に10億も払う人がいたんですね。誰ですか?」

「はっ。言わないわよ。トガクシは例え死んでも依頼主の名前は明かさないの。残念でしたぁ。アッカンベーだ」

「貴方、自分の立場がわかってるのかしら?」

「ククク。ハッハッハッハ。実に面白い女子だ。マリーがあそこまで遊ばれているとはな」

「若様があんなこと言わなければ殺してますよ。で、どうするんですか?依頼人の名前は明かしませんよきっと。それにお金が必要なら説得は無理だと思いますけど。殺しておく方が今後のためです」

「マリーがそう思うのは無理もない。だが、10億もの大金が必要なほどの病気とやらに興味があってな」

「えっ!?ひょっとして、サブロー・ハインリッヒってエスパーなの?どうして、10億ってわかったの?」

「ハハハ。凄かろう。凄かろう」

 此奴、さっき自分で口走ったことを覚えていない?
 これは大いに利用するとしよう。

「ほほぉ。父君が病気とな」

「何で、何で、わかったの!?」

 マリーもロー・レイヴァンドも笑いを堪えるのに必死なようだな。
 後一押しだな。
 ここからは推測になる間違えていたら全てが水の泡だ。
 しかし、此奴の服装を見る限り、ワシの世界と同じであるならば、恐らく此奴の暮らす里があるはずだ。

「凄かろう。ほほぉ。里に医者が訪ねてきたとな。その男に父君の病を治すには大金が必要だと言われたか。ふむぅ。可哀想に」

「・・・・・・」

 この沈黙は、盛大にやらかしたか。
 しかし、ここでワシが間違えていたなどと言うことなどできん。
 こちらもダンマリを決めるとしよう。

「・・・・・・。はぁ。そんなことまでわかっちゃうのね。もう完敗。そうよ。その通りよ。だからパパの病を治すためにお金が必要なの。他のみんなもパパのために今までは受けてこなかった依頼でも受けて、必死に金を稼いでるのよ。皆、パパに命を救われた恩を返そうとしてるの。依頼主については明かさないけど。見逃してくれない?」

「尚のこと。見逃すことはできん。ワシはお前が欲しい」

「へっ?それってそのプロポーズ。ど、ど、ど、どうしよう」

「いや違うが?」

「ぷっ。若様、今の言い方は勘違いするのも無理はないかと」

「ハハハ。いけませんぞ若。俺の目の黒いうちはこんな暗殺者の小娘など認めませんぞ」

「はぁ。勘違いさせたのならすまない。ただワシは、配下としてお前が」

「もう照れなくても良いのに~結婚かぁ。純白のウェディングドレスを着るんだよね~ウフフ。はっ、何よ。アンタなんかと結婚なんてしないんだから!」

「だから違うと言っておるだろうが!」

 この後、サブロー・ハインリッヒは何とか誤解を解き、暗殺者の父の病について詳しく聞くとマリーが簡単に治せると言い暗殺者に付いて、トガクシの里まで行くこととなるのだった。
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