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2章 オダ郡を一つにまとめる
116話 トガクシの里
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サブロー・ハインリッヒを暗殺しようとして、捕まった暗殺者の小娘とマリーは、トガクシの里に向かっていた。
「ねぇ。良い加減この縄、外してよ」
「ダメです。若様の暗殺をしようとしたこと私は絶対に許しませんから」
「はぁ。これだからショタコンは嫌なのよ」
「ショタコンじゃありません。護衛として、当然の判断です」
「はいはい。あの領主様、見た目は悪くないもんね」
「だからショタコンではないと言っていますが」
「もう怖いって、そんなに睨まないでよ」
「貴方が変なことを言うからです」
「この森を抜けたらすぐ着くわ。本当にこれ外してくれない?このままだと里のみんなに囲まれるわよ」
「それを早く言いなさい。もう遅いですが」
周りに黒装束にマスクと仮面で顔を隠した集団が現れた。
「アヤメ様を返して頂こう咎人よ」
「いきなり咎人呼ばわりとは、最初にコチラに手を出してきたのは、そちらですよトガクシ」
「ほぉ。我らのことを知っている人間か。アヤメ様、今お助けしますぞ」
「爺や。やめなさい。この人は、私が暗殺の依頼を受けたサブロー・ハインリッヒに仕えている相当腕の立つ護衛よ。この通り、私が後ろ手に縛られるぐらいのね。パパ。いえ頭領の元に案内しなさい」
「しかし、我らトガクシは傭兵集団。例えアヤメ様の命といえども余所者を里に入れることなどできない」
「貴方の意見はもっともね。でも、今この里のことについて、決定権を持つのは爺やのはずよ。黙ってなさい」
少し考え込む爺やと呼ばれた男。
「アヤメ様、一つ確認をしたいのじゃが。その余所者が害を為すことは無いのですな?」
「!?良いのですか。余所者を里に入れるなどという決定をしたことが頭領に知られれば」
「責任は全てワシが持とう。アヤメ様、如何ですかな?」
「害どころか。この人はパパの病を簡単に治せると言ったわ。万が一、パパを毒殺するそぶりを見せたらその時、皆で囲んで殺せば良い」
「頭領の病を簡単に治せると?」
「馬鹿な!?アヅチキャッスルから遠路はるばる来たという医者から大金が必要だと言われたのだ。簡単に治せるなど嘘に決まっている。頭領に害を」
「よせ。万が一、大旦那の病を治せるというのならこの話に飛び乗るのも悪くなかろうて」
「しかし」
「アヤメ様のいう通り、今の里の決定権はワシにある。ここは賭けてみるのも良いかとな。アヤメ様、話は纏まりましたぞ。こちらへ。頭領の元へ案内しましょう」
「ありがとう爺や」
成程。
若様の暗殺を謀った彼女の力量がお世辞にも良いとはいえなかったので、私1人で十分だと考えていましたが。
音もなくあの数の人間に取り囲まれたのは初めてです。
私の風の魔法の探知にも全く引っかかりませんでした。
ひょっとしたら若様の言う通り、良い拾い物なのかもしれませんね。
さて、私の見立てだと頭領の病は、薬によるものだと推測しています。
確か彼女。
いえ、アヤメというのでしたね。
アヤメから聞いた話では、トガクシの頭領とやらは、風邪を拗らせただけだったのが医者の薬を飲んでから寝込むようになったと。
普通はこの時点で医者を怪しむものですが。
医者の説明とやらで、この薬を飲めば、数ヶ月ほど、意識が朦朧として、動けなくなりますが。
数ヶ月後にはピンピンと動けるようになると。
それで医者の言う高い金額の薬を借金をしてまで買ったのでしたか。
その額が10億。
何だか、アヤメに依頼を持ってきた人間の金額と一致するのは気のせいなどと切り捨てで良い状況ではないですね。
はぁ。
私は頭を使うのは苦手です。
どちらかというと身体を動かす方が得意なのですが。
私の作るエルフの特効薬ならどんな病でとたちまち治せるでしょう。
人間用に調整は必要ですが。
「何してるのよ。こっちよ。早く」
「すみません。では、失礼します」
里に入ると男女問わず。
皆が、黒装束にマスクと仮面で顔を隠して、生活していた。
「外の人から見たら我らのことを不思議に思うかもしれませんな。ですが、我らはお互いの顔を隠して、生活しているのじゃ。それは日常生活においてもな。といってもああして外に出ている時だけですがな。理由は簡単なこと。外では何処に目があるか分かりませんからな。家の中以外では、常に警戒しているということですじゃ」
「詳しい説明をありがとうございます」
「ここが私の家だよ。ただいまパパ」
「うぅ」
「アヤメ、静かになさいな。あら、そちらの方は?」
「ママ。こちらの人は、私が暗殺の任務を失敗したサブロー・ハインリッヒの護衛の人で」
「マリーと申します。病について何かお力になれるかとこちらに、少し診察させていただいても構いませんか?」
「まぁ、女性で医者だなんて凄いわね。本当にオダが女性にとって住みやすくなったという噂は嘘ではなかったのね。失礼しました。アヤメの母で、モリトキの妻のチヨメと言います。こちらへどうぞ」
息が荒い。
ゼェゼェと肩で息をしている。
成程、軽い風邪から重い風邪へと変化させる薬を用いたわけですか。
でもこの程度なら。
「はぁ。このことは他言無用でお願いしたいのですが。この病は簡単に治せます」
「ホントなの!?パパ、良くなるの?」
「えぇ」
「他言無用でお願いしたいというのは?」
「私を信用してくださるのならここにいる全員、この場でだけ仮面を取ってくださいませんか?」
「それは、できません」
まぁ、当然の反応ね。
どうしたものかしら。
エルフの特効薬を作るには正体を明かす必要があるし、そのためには、向こうにも仮面を取って貰うのが良い。
それにしてもすごい嗅覚ね。
余所者が来ることをわかって、咄嗟に仮面を付けたってところかしら。
はぁ。
どうしようかしら。
「ねぇ。良い加減この縄、外してよ」
「ダメです。若様の暗殺をしようとしたこと私は絶対に許しませんから」
「はぁ。これだからショタコンは嫌なのよ」
「ショタコンじゃありません。護衛として、当然の判断です」
「はいはい。あの領主様、見た目は悪くないもんね」
「だからショタコンではないと言っていますが」
「もう怖いって、そんなに睨まないでよ」
「貴方が変なことを言うからです」
「この森を抜けたらすぐ着くわ。本当にこれ外してくれない?このままだと里のみんなに囲まれるわよ」
「それを早く言いなさい。もう遅いですが」
周りに黒装束にマスクと仮面で顔を隠した集団が現れた。
「アヤメ様を返して頂こう咎人よ」
「いきなり咎人呼ばわりとは、最初にコチラに手を出してきたのは、そちらですよトガクシ」
「ほぉ。我らのことを知っている人間か。アヤメ様、今お助けしますぞ」
「爺や。やめなさい。この人は、私が暗殺の依頼を受けたサブロー・ハインリッヒに仕えている相当腕の立つ護衛よ。この通り、私が後ろ手に縛られるぐらいのね。パパ。いえ頭領の元に案内しなさい」
「しかし、我らトガクシは傭兵集団。例えアヤメ様の命といえども余所者を里に入れることなどできない」
「貴方の意見はもっともね。でも、今この里のことについて、決定権を持つのは爺やのはずよ。黙ってなさい」
少し考え込む爺やと呼ばれた男。
「アヤメ様、一つ確認をしたいのじゃが。その余所者が害を為すことは無いのですな?」
「!?良いのですか。余所者を里に入れるなどという決定をしたことが頭領に知られれば」
「責任は全てワシが持とう。アヤメ様、如何ですかな?」
「害どころか。この人はパパの病を簡単に治せると言ったわ。万が一、パパを毒殺するそぶりを見せたらその時、皆で囲んで殺せば良い」
「頭領の病を簡単に治せると?」
「馬鹿な!?アヅチキャッスルから遠路はるばる来たという医者から大金が必要だと言われたのだ。簡単に治せるなど嘘に決まっている。頭領に害を」
「よせ。万が一、大旦那の病を治せるというのならこの話に飛び乗るのも悪くなかろうて」
「しかし」
「アヤメ様のいう通り、今の里の決定権はワシにある。ここは賭けてみるのも良いかとな。アヤメ様、話は纏まりましたぞ。こちらへ。頭領の元へ案内しましょう」
「ありがとう爺や」
成程。
若様の暗殺を謀った彼女の力量がお世辞にも良いとはいえなかったので、私1人で十分だと考えていましたが。
音もなくあの数の人間に取り囲まれたのは初めてです。
私の風の魔法の探知にも全く引っかかりませんでした。
ひょっとしたら若様の言う通り、良い拾い物なのかもしれませんね。
さて、私の見立てだと頭領の病は、薬によるものだと推測しています。
確か彼女。
いえ、アヤメというのでしたね。
アヤメから聞いた話では、トガクシの頭領とやらは、風邪を拗らせただけだったのが医者の薬を飲んでから寝込むようになったと。
普通はこの時点で医者を怪しむものですが。
医者の説明とやらで、この薬を飲めば、数ヶ月ほど、意識が朦朧として、動けなくなりますが。
数ヶ月後にはピンピンと動けるようになると。
それで医者の言う高い金額の薬を借金をしてまで買ったのでしたか。
その額が10億。
何だか、アヤメに依頼を持ってきた人間の金額と一致するのは気のせいなどと切り捨てで良い状況ではないですね。
はぁ。
私は頭を使うのは苦手です。
どちらかというと身体を動かす方が得意なのですが。
私の作るエルフの特効薬ならどんな病でとたちまち治せるでしょう。
人間用に調整は必要ですが。
「何してるのよ。こっちよ。早く」
「すみません。では、失礼します」
里に入ると男女問わず。
皆が、黒装束にマスクと仮面で顔を隠して、生活していた。
「外の人から見たら我らのことを不思議に思うかもしれませんな。ですが、我らはお互いの顔を隠して、生活しているのじゃ。それは日常生活においてもな。といってもああして外に出ている時だけですがな。理由は簡単なこと。外では何処に目があるか分かりませんからな。家の中以外では、常に警戒しているということですじゃ」
「詳しい説明をありがとうございます」
「ここが私の家だよ。ただいまパパ」
「うぅ」
「アヤメ、静かになさいな。あら、そちらの方は?」
「ママ。こちらの人は、私が暗殺の任務を失敗したサブロー・ハインリッヒの護衛の人で」
「マリーと申します。病について何かお力になれるかとこちらに、少し診察させていただいても構いませんか?」
「まぁ、女性で医者だなんて凄いわね。本当にオダが女性にとって住みやすくなったという噂は嘘ではなかったのね。失礼しました。アヤメの母で、モリトキの妻のチヨメと言います。こちらへどうぞ」
息が荒い。
ゼェゼェと肩で息をしている。
成程、軽い風邪から重い風邪へと変化させる薬を用いたわけですか。
でもこの程度なら。
「はぁ。このことは他言無用でお願いしたいのですが。この病は簡単に治せます」
「ホントなの!?パパ、良くなるの?」
「えぇ」
「他言無用でお願いしたいというのは?」
「私を信用してくださるのならここにいる全員、この場でだけ仮面を取ってくださいませんか?」
「それは、できません」
まぁ、当然の反応ね。
どうしたものかしら。
エルフの特効薬を作るには正体を明かす必要があるし、そのためには、向こうにも仮面を取って貰うのが良い。
それにしてもすごい嗅覚ね。
余所者が来ることをわかって、咄嗟に仮面を付けたってところかしら。
はぁ。
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