信長英雄記〜かつて第六天魔王と呼ばれた男の転生〜

揚惇命

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2章 オダ郡を一つにまとめる

117話 エルフの特効薬による治療

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 私を信じてくれるなら仮面を取ってほしいというマリーの申し出にできませんという当然の言葉が返ってきて、どうしようかと思案しているマリー。
 この静寂を打ち破ったのはアヤメの一言だった。

「仮面を取れば良いのね?」

「アヤメ、何を言ってるの。それは主人の決めた掟に逆らうことになる。絶対にできないのよ」

「でも、私はパパにもう一度、頭を撫でて褒めてもらいたい。パパのしんどそうな声じゃなくて元気な声が聞きたい。パパに抱きしめてもらいたいの。ママは、私と同じ気持ちじゃないの?」

「そ、それは」

 困惑するのも当然よね。
 それにしてもこの仮面とマスク、無理矢理外そうとしたのですがまるで身体にくっ付いているかのように外せませんでした。
 恐らくアーティファクトの一種。
 どうして、ダンジョンの存在しないこの大陸にこのようなものがあるのか不思議なのですが。
 そのことについても聞いてみたいので、今は若様と同じように私もトガクシを味方に加えるべきだと判断しています。
 ちなみにアーティファクトとは、毎回マップの変わるダンジョンの中にある宝箱から入手できるレアアイテムのことです。
 その効果は、持ち主自体にしか着脱ができないものから魔法を阻害するものまで、様々なものが存在しています。
 話が脱線してしまいましたね。
 アヤメの提案は嬉しいですが彼女だけ取れば良いというわけではありません。
 互いの信用が無ければ。

「ワシらも仮面を取れば良いのですな?」

「!?本気ですか」

「無論じゃ。大旦那の命が助かるのなら顔を晒すことに躊躇いなどあるまい。奥方様、これは今里を大旦那から預かるワシの決定です。奥方様には何の落ち度もあるまい」

「ダンゾウ。分かりました。主人の信頼厚い貴方がそこまで言うのでしたら全員、仮面を外しなさい」

「しかし、チヨメ様」

「構いません。それで主人の命が助かるのなら。それはこれは、里を預かるダンゾウの決定です」

 全員が仮面を外すと服まで変わる。

「まさかこれ程のアーティファクトだとは思いませんでした」

「!?そう。知っていらしたのね」

「はい。この大陸には存在していないと思っていたもので、驚きました」

 マリーの姿が金髪碧眼のエルフの姿に変わる。

「えっ!?こ、これもアーティファクトなのママ?」

「いえ、姿がエルフに変わるアーティファクトの存在など聞いたことがありません。それにこれは」

「お察しの通り正真正銘、千年の時を生きる本物のエンシェントエルフですよ」

「やっぱり。そうなんですね。なら、貴方にならお話ししておきましょう。かつて私の一族は歩き巫女として、世界を救済する旅をしていたと聞きます。その時にアーティファクトの存在も自分たちと姿の違う存在、亜人や魔物の存在を発見したと。ここトガクシの里の地下に魔物の生息しているダンジョンがあります。私たちは、そのダンジョンから魔物が溢れ出ないように間引きをしているのです。ですが、主人の薬のための膨大な金額を稼ぐためにやむおえず間引きを中止する他ありませんでしたの」

 話を聞いてる間にもマリーは、エルフの特効薬を作り上げていた。
 作り方はとっても簡単で、エルフだけが知る薬草の数々をすり潰して調合するだけである。
 エルフ用ではなく人間用に軽めに調整するのが一苦労していた。

「できました。これを飲ませてください。先ほどの話について、お聞きします。間引きを中止して、今日で何日目ですか?」

「えーっと。主人が倒れて、今日で10日目ですから」

「危険な領域ですね。すぐに案内してください。暫く魔物が増えないように徹底的に燃やします」

 ダンジョンとは厄介なもので、際限なく魔物が増え続けて、間引きをするものが居なければ、外に溢れ出すのです。
 トガクシの面々の力量が高かったことの理由に説明が付きましたね。
 アーティファクトの力と鍛錬の賜物だったわけです。
 それに実戦経験の豊富さも合わさって。
 ですが増えすぎた魔物の処理は荷が重いでしょう。
 ここは、私がもう一肌脱ぐとしましょう。
 ほっておいたら若様にも被害が出かねませんから。

「たった10日で何が危険なのだ」

「そう言うのでしたら一緒に来て構いませんよ。ちょうどダンジョンまでの案内役が必要でしたから」

「フン。足手纏いになるなよ。こっちだ」

 案内されたダンジョンに入ると。

「馬鹿な!?ゴブリンがこんなに」

「下がって。業火の炎にで全てを焼き尽くせ。ファイアーボール」

「グギギ」

「でもこれでゴブリンは。はっ嘘だろ!?」

「今度は、スライムの群れですか」

 炎を嫌うはずなのですが向かってくるということは、それだけ後ろもつっかえているということですね。
 全く、これは使いたくなかったのですが、仕方ありませんね。

「全知全能の炎の精霊よ。私の言葉に耳を傾け、その力を貸すことを乞い願う。サンフレアー」

 マリーの手から放たれた太陽のような炎がダンジョンを突き進んで、全てを焼き尽くして行く。
 後に残ったのは。

「マジかよ。こんなにたくさんのアーティファクトが」

「これは、貴方たちで外に漏れないように大切に保管してください。悪しき者の手に渡らぬように」

「あ、あぁ。足手纏いになるなよなんて、失礼した。マリー殿が居なければ」

「構いませんよ。私にとっても大事な人を守るために必要なことでしたので、憎まれ口を叩きながらも案内してくれたこと感謝します」

 こうして、イレギュラーはあったものの里に戻るとすっかり元気になって、アヤメを片腕で持ち上げるトガクシの頭領、モリトキの姿があった。
 モリトキを一言で言い表すなら筋肉隆々。
 里だけでなくこの大陸を守り抜いてきた威厳と至る所にある傷が厳つさを際立たせている。
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