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2章 オダ郡を一つにまとめる
118話 トガクシの協力
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マリーがダンジョンの魔物の間引きをあらかた済ませて、トガクシの里に帰るとすっかり元気になった頭領のモリトキが起き上がっていた。
「話は娘と妻から聞いた。俺を助けるためとはいえ、トガクシの掟を破ったことは、許すことはできん。連帯責任として全員に罰を与える」
「御自身の命よりも掟が大事と言うのですか?」
「それが我らトガクシの務め。余所者は黙っていてもらおう。それに、ダンジョンの魔物の間引きを放り出して、暗殺任務などを受けていたなど。見過ごすことはできん」
「それが恩人に対するトガクシのやり方だと捉えて良いのですね」
「なんとでも言うがいい。助けてくれたことには感謝する。騙されていたとはいえ、あのような得体の知れない薬を飲んだことは俺の落ち度だ。だが、どのような理由があろうとトガクシの掟を破ることは許さん」
「私はトガクシの掟よりもパパが大事だよ。パパは、ママや私が同じ状態で、救える方法があるのにトガクシの掟を優先するの?」
「当然だ。それがトガクシの掟。先祖代々、受け継いできたトガクシの掟なのだ。我らは、この地にて魔物を決して外に出さないように守り抜く。そのためのトガクシの掟だ」
「ですが大旦那様。我らにとって、貴方様は里の長であると同時に行き場を失った我らを迎え入れてくださった恩人じゃ。辛そうなお姿をずっと見ていられなかったゆえ、全ての罪は里を臨時で預かる身であったワシにある。せめて、若いもんへの罰は不問にして貰えまいか?」
「ならんと言いたいところだが相手がエルフとなれば話は別だ。聞きたいことが山程ある。ゆえに皆への罰は、2度とダンジョンの魔物を溢れさせぬように間引きを徹底することだ。良いな」
「は。ははぁ」
「では下がれ。俺は、このエルフの女性と話がある」
頭領の言葉に集まっていたトガクシの忍者たちが解散し、この場には頭領のモリトキ、妻のチヨメ、娘のアヤメが残った。
「ふぅ。お客人、見苦しいところを見せた。威厳を保つためには仕方のないことなのだ理解せよ」
「では、先ほどのは表向きの体裁だと捉えて良いのですね」
「うむ。俺の命を救ってくれたこと感謝する。それにしても噂に聞くエルフと逢えようとは、俺が死んで、向こうに行く時ご先祖様に良い土産話ができたというものだ」
「パパ。じゃあ、さっきのは全て」
「嘘ではない。俺は家族よりもトガクシの掟を重要視しておる。ご先祖様より託された想いゆえ、それを放り出すことはできんのだ。しかし、家族を見捨てることもまたできんだろう。だが天秤にかけるほどトガクシの掟は、俺にとって大事なことなのだ。許せ」
「アヤメ、我儘を言わないの」
「でも。でも。ママは、それで良いの?」
「パパのできないことをするのが私の務めだもの。パパがトガクシの掟を優先するというのならママである私がアヤメの命を優先するわ」
「ママ!」
「足りない部分を補い合うのが夫婦ですもの」
「そういうことだ。今回、俺のことだけを優先したせいでダンジョンの魔物の量が膨れ上がったのだ。この御方が居なければ、おそらくこの里だけでなく、この世界が混沌に飲み込まれていただろう。今後、このようなことにならぬように、徹底しなければならん」
「ダンジョンの魔物は、完全に駆逐したつもりでも何処からか湧きます」
「!?やはり、完全に魔物を消し去ることはできんのだな。噂に聞くエルフなら可能かと期待したのだが」
「ダンジョンを完全に崩壊させることができるのは聖剣に選ばれた勇者のみだと私の生まれたところでは、言われていました。その勇者も今は既に亡く」
「やはり、ご先祖様の書いた手記は本当であったか。魔王とやらと相打ちとなり勇者は倒れ、魔王が死んでも魔物の数は一向に減らず。そこを逃げ出すしか無かったと」
「えぇ。あのような悲惨なことをここで起こしてはなりません。今まで、水面下で守り続けてくれたことエルフの代表として、御礼を言わせていただきます」
「そのようなこと。頭を上げられよ。この地に生きるものとして当然のことをしているだけだ。しかし、困ったものだ。ダンジョンを完全に滅することのできる勇者は既に亡く。間引くことしかできんとは、歯痒いものだ」
「そうでもありません。私は既に勇者はこの世界にいると考えています。まだ小さな光ですがいずれ大きな光となると」
「そのような御方がいると?」
「まだ小さな光ですが。私が御仕えしているサブロー・ハインリッヒ様は、かつて私が居た大陸の勇者と似た雰囲気を漂わせています」
「ふむぅ。その者ならいずれダンジョンを完全に破壊できるかも知れないと?」
「可能性の話ですが。私はそう信じております。無茶をなされる方ですので、御守りするのがとても大変ですが」
「ハハッ。小さな光ならそれぐらいが良いのであろう。しかし、そうか。噂に聞くエルフが入れ込む程のそれほどの御仁が居るのか」
「サブローにはね。不思議な魅力があるの。プロポーズされたし」
「アヤメよ。今、なんと申した?」
「プロポーズされたの!私の勘違いだったけど」
「なんだ勘違いか。危うく、殺しに行こうかと思ったぞ。だが不思議な魅力か。エルフ殿」
「マリーで構いません」
「うむ。では、マリー殿、我らトガクシ。その小さき光を守るため協力させてもらいたい。貴殿に同行しても構わないか?」
「是非、お願いします」
はぁ。
これでひとまず私の役目は果たせましたね。
若様にこれ以上無茶をさせるわけにはいきませんからダンジョンのことは伏せて、トガクシの協力を取り付けたことを報告して、モリトキ殿を紹介するとしましょう。
「話は娘と妻から聞いた。俺を助けるためとはいえ、トガクシの掟を破ったことは、許すことはできん。連帯責任として全員に罰を与える」
「御自身の命よりも掟が大事と言うのですか?」
「それが我らトガクシの務め。余所者は黙っていてもらおう。それに、ダンジョンの魔物の間引きを放り出して、暗殺任務などを受けていたなど。見過ごすことはできん」
「それが恩人に対するトガクシのやり方だと捉えて良いのですね」
「なんとでも言うがいい。助けてくれたことには感謝する。騙されていたとはいえ、あのような得体の知れない薬を飲んだことは俺の落ち度だ。だが、どのような理由があろうとトガクシの掟を破ることは許さん」
「私はトガクシの掟よりもパパが大事だよ。パパは、ママや私が同じ状態で、救える方法があるのにトガクシの掟を優先するの?」
「当然だ。それがトガクシの掟。先祖代々、受け継いできたトガクシの掟なのだ。我らは、この地にて魔物を決して外に出さないように守り抜く。そのためのトガクシの掟だ」
「ですが大旦那様。我らにとって、貴方様は里の長であると同時に行き場を失った我らを迎え入れてくださった恩人じゃ。辛そうなお姿をずっと見ていられなかったゆえ、全ての罪は里を臨時で預かる身であったワシにある。せめて、若いもんへの罰は不問にして貰えまいか?」
「ならんと言いたいところだが相手がエルフとなれば話は別だ。聞きたいことが山程ある。ゆえに皆への罰は、2度とダンジョンの魔物を溢れさせぬように間引きを徹底することだ。良いな」
「は。ははぁ」
「では下がれ。俺は、このエルフの女性と話がある」
頭領の言葉に集まっていたトガクシの忍者たちが解散し、この場には頭領のモリトキ、妻のチヨメ、娘のアヤメが残った。
「ふぅ。お客人、見苦しいところを見せた。威厳を保つためには仕方のないことなのだ理解せよ」
「では、先ほどのは表向きの体裁だと捉えて良いのですね」
「うむ。俺の命を救ってくれたこと感謝する。それにしても噂に聞くエルフと逢えようとは、俺が死んで、向こうに行く時ご先祖様に良い土産話ができたというものだ」
「パパ。じゃあ、さっきのは全て」
「嘘ではない。俺は家族よりもトガクシの掟を重要視しておる。ご先祖様より託された想いゆえ、それを放り出すことはできんのだ。しかし、家族を見捨てることもまたできんだろう。だが天秤にかけるほどトガクシの掟は、俺にとって大事なことなのだ。許せ」
「アヤメ、我儘を言わないの」
「でも。でも。ママは、それで良いの?」
「パパのできないことをするのが私の務めだもの。パパがトガクシの掟を優先するというのならママである私がアヤメの命を優先するわ」
「ママ!」
「足りない部分を補い合うのが夫婦ですもの」
「そういうことだ。今回、俺のことだけを優先したせいでダンジョンの魔物の量が膨れ上がったのだ。この御方が居なければ、おそらくこの里だけでなく、この世界が混沌に飲み込まれていただろう。今後、このようなことにならぬように、徹底しなければならん」
「ダンジョンの魔物は、完全に駆逐したつもりでも何処からか湧きます」
「!?やはり、完全に魔物を消し去ることはできんのだな。噂に聞くエルフなら可能かと期待したのだが」
「ダンジョンを完全に崩壊させることができるのは聖剣に選ばれた勇者のみだと私の生まれたところでは、言われていました。その勇者も今は既に亡く」
「やはり、ご先祖様の書いた手記は本当であったか。魔王とやらと相打ちとなり勇者は倒れ、魔王が死んでも魔物の数は一向に減らず。そこを逃げ出すしか無かったと」
「えぇ。あのような悲惨なことをここで起こしてはなりません。今まで、水面下で守り続けてくれたことエルフの代表として、御礼を言わせていただきます」
「そのようなこと。頭を上げられよ。この地に生きるものとして当然のことをしているだけだ。しかし、困ったものだ。ダンジョンを完全に滅することのできる勇者は既に亡く。間引くことしかできんとは、歯痒いものだ」
「そうでもありません。私は既に勇者はこの世界にいると考えています。まだ小さな光ですがいずれ大きな光となると」
「そのような御方がいると?」
「まだ小さな光ですが。私が御仕えしているサブロー・ハインリッヒ様は、かつて私が居た大陸の勇者と似た雰囲気を漂わせています」
「ふむぅ。その者ならいずれダンジョンを完全に破壊できるかも知れないと?」
「可能性の話ですが。私はそう信じております。無茶をなされる方ですので、御守りするのがとても大変ですが」
「ハハッ。小さな光ならそれぐらいが良いのであろう。しかし、そうか。噂に聞くエルフが入れ込む程のそれほどの御仁が居るのか」
「サブローにはね。不思議な魅力があるの。プロポーズされたし」
「アヤメよ。今、なんと申した?」
「プロポーズされたの!私の勘違いだったけど」
「なんだ勘違いか。危うく、殺しに行こうかと思ったぞ。だが不思議な魅力か。エルフ殿」
「マリーで構いません」
「うむ。では、マリー殿、我らトガクシ。その小さき光を守るため協力させてもらいたい。貴殿に同行しても構わないか?」
「是非、お願いします」
はぁ。
これでひとまず私の役目は果たせましたね。
若様にこれ以上無茶をさせるわけにはいきませんからダンジョンのことは伏せて、トガクシの協力を取り付けたことを報告して、モリトキ殿を紹介するとしましょう。
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