119 / 166
2章 オダ郡を一つにまとめる
119話 サブロー、ワシヅ砦へ
しおりを挟む
マリーをトガクシの里に派遣した後、サブロー・ハインリッヒは、ワシヅ砦の救援に向かっていた。
「それで、マリーから護衛を引き継いだと?」
「うん。どうかな。まだまだ、マリーねぇねには変身に粗があるって言われたけど。サブロー様、ほらほら角と尻尾は隠せたよ。エヘヘ」
「であるか」
確かに竜人族という亜人種特有の角と尻尾はない。
赤目もマリー同様、眼鏡とやらで隠している。
これで変身とやらに粗があるとは思えぬが。
マリーのことだ。
ワシにはわからぬ何かがあるのかも知れんな。
「ぶー。そこは、ルミナは上手に変身できて偉いねだよサブロー様」
「ふむ」
「もしかして、これで人前に出たらまずいのかなぁ。ねぇ。私まずい?」
「安心せよ。若の反応からして、全く見分けが付かぬからマリーの言っていた言葉が何かを探ろうとしているのだ。急にそれが皆のいる前で明らかになってしまう可能性を考えてな」
「ローおじさんから、見てどう?」
「俺がおじさん!?これでもまだ30代なのだが。何か問題があるようには見えんがマリーからどの辺りが粗があると言われたのだ?」
「えっとね。驚いたり興奮したりすると尻尾が出てきて嬉しくて振っちゃってるって言われたよ~」
「だから若に褒められて、どうなるか確認してみたかったのだな?」
「えっ!?そんなことないよ~。サブロー様は、贔屓目で見たりしないかなって」
「いつまで話しておる。我らはこれよりワシヅ砦の救援に向かう。ロー爺よ。道中に連合軍の奴らが潜んでいないとも限らん、警戒を怠るな。ルミナは、ワシの護衛をしっかりせよ」
「ハハッ。いつもの若ですな。承知」
「は、はい。ちょっと尻尾がなくて動きにくいけど頑張る」
ということがあったのだが道中に連合軍の姿はなくワシヅ砦が見える距離にまで来たのだが。
「ふむぅ。戦闘があったにしては、静かすぎるな」
「若。ウマスキに周囲を探らせています。暫くお待ちを」
とロー・レイヴァンドが言えば。
「私が見たところ何かが隠れているような気配もないよ」
とルミナが続く。
「であるか」
暫く静観しているとウマスキ・ダイスキが偵察の報告にやってきた。
軽装騎馬隊を率いる女性だけの騎馬隊の彼女たちの任務は、輸送・陽動・偵察が主である。
「ウマスキです。失礼します。サブロー様に報告します。近くに敵影はありません。ワシヅフォートに入城しても問題ないと判断します」
「であるか。では、皆の者、旗を掲げよ」
この世界に軍旗というものが無かったゆえ、ワシはこれも制作した。
ハインリッヒ家の守り神とされているファルコンだったか?
イーグルだったか?
グリフォンだ。
グリフォンというのは、どう説明すれば良いのであろうな。
ハインリッヒ家の歴史は古く。
貴族の中でも格上で、世襲制である王家ルードヴィッヒ家から派生した家で、王侯貴族に当たるとのことだ。
それゆえ、王家を守る存在として、紋章としてグリフォンが選ばれたと。
そのグリフォンなのだが鷲とライオン?というのを混ぜた姿をしているとのことだ。
ワシは、鷲より鷹が好きだがな。
ワシが鷹狩りが好きだったことは周知の事実と思うが。
鷹狩りというのは、鷹を狩るわけではないぞ。
鷹で獲物を狩るから鷹狩りなのだ。
ワシは、その鷹狩りで独特なやり方をしていた。
20名ほどを帯同させて鳥見の衆と名付け、2人1組で組ませ、獲物を見つければ、片方がその場に残り、もう1人がワシの元に報告しに来る。
ワシの身辺には、槍と弓を持つ6人が控えており、狙う獲物が決まったら騎馬が藁に虻をつけて、回しながら近付いて、鳥の注意を引く。
その馬の影に隠れてワシが鷹を連れ近づく。
飛び立つところを狙って、鷹を放ち、狩りをさせる。
本来はこれで終わりだと思うであろう?
ワシは、さらに鷹が獲物を捕らえて着地する地点に、農夫に化けさせた向かい持ちを待たせ、最後にはこの向かい持ちが獲物を取り押さえる。
そう、鷹狩りですら、ワシにとっては戦闘訓練である。
さて、話は脱線したが軍旗という味方が誰の目から見てもわかりやすいものを作るのが必要と考え、ハインリッヒ家の紋章を選んだというわけだ。
これの方が誰から見てもわかりやすいであろう。
テキーラに伝わると良いが。
遠くに旗を見るテキーラ・バッカス。
「あの旗は、ハインリッヒ家の紋章であるグリフォンか。殿がこちらに訪れたのか?いや、あれが敵の策略ということも」
「テキーラのオッサンじゃ無かった。テキーラ様、そう警戒する必要はねぇよ。ありゃ紛れもなく領主様だ」
「ジャガ・イモよ。お主がそう言うのであれば、安心だな。城門を開門せよ。殿を出迎えるのじゃ」
こうして、入城したサブロー・ハインリッヒは、その凄惨さにここまでしてワシヅ砦を守り抜いてくれたのかと胸を熱くしていた。
身体に槍か何かに突き刺さっていたのか大穴が開き、身体が少し焦げている200程の兵の死体。
周りを取り囲み涙を流す民の姿。
「殿、わざわざこちらにお越しくださったこと感謝致します」
「テキーラよ。大義である」
「勿体無い御言葉」
こうして、挨拶も程々にテキーラ・バッカスから事の経緯を聞くサブロー・ハインリッヒであった。
「それで、マリーから護衛を引き継いだと?」
「うん。どうかな。まだまだ、マリーねぇねには変身に粗があるって言われたけど。サブロー様、ほらほら角と尻尾は隠せたよ。エヘヘ」
「であるか」
確かに竜人族という亜人種特有の角と尻尾はない。
赤目もマリー同様、眼鏡とやらで隠している。
これで変身とやらに粗があるとは思えぬが。
マリーのことだ。
ワシにはわからぬ何かがあるのかも知れんな。
「ぶー。そこは、ルミナは上手に変身できて偉いねだよサブロー様」
「ふむ」
「もしかして、これで人前に出たらまずいのかなぁ。ねぇ。私まずい?」
「安心せよ。若の反応からして、全く見分けが付かぬからマリーの言っていた言葉が何かを探ろうとしているのだ。急にそれが皆のいる前で明らかになってしまう可能性を考えてな」
「ローおじさんから、見てどう?」
「俺がおじさん!?これでもまだ30代なのだが。何か問題があるようには見えんがマリーからどの辺りが粗があると言われたのだ?」
「えっとね。驚いたり興奮したりすると尻尾が出てきて嬉しくて振っちゃってるって言われたよ~」
「だから若に褒められて、どうなるか確認してみたかったのだな?」
「えっ!?そんなことないよ~。サブロー様は、贔屓目で見たりしないかなって」
「いつまで話しておる。我らはこれよりワシヅ砦の救援に向かう。ロー爺よ。道中に連合軍の奴らが潜んでいないとも限らん、警戒を怠るな。ルミナは、ワシの護衛をしっかりせよ」
「ハハッ。いつもの若ですな。承知」
「は、はい。ちょっと尻尾がなくて動きにくいけど頑張る」
ということがあったのだが道中に連合軍の姿はなくワシヅ砦が見える距離にまで来たのだが。
「ふむぅ。戦闘があったにしては、静かすぎるな」
「若。ウマスキに周囲を探らせています。暫くお待ちを」
とロー・レイヴァンドが言えば。
「私が見たところ何かが隠れているような気配もないよ」
とルミナが続く。
「であるか」
暫く静観しているとウマスキ・ダイスキが偵察の報告にやってきた。
軽装騎馬隊を率いる女性だけの騎馬隊の彼女たちの任務は、輸送・陽動・偵察が主である。
「ウマスキです。失礼します。サブロー様に報告します。近くに敵影はありません。ワシヅフォートに入城しても問題ないと判断します」
「であるか。では、皆の者、旗を掲げよ」
この世界に軍旗というものが無かったゆえ、ワシはこれも制作した。
ハインリッヒ家の守り神とされているファルコンだったか?
イーグルだったか?
グリフォンだ。
グリフォンというのは、どう説明すれば良いのであろうな。
ハインリッヒ家の歴史は古く。
貴族の中でも格上で、世襲制である王家ルードヴィッヒ家から派生した家で、王侯貴族に当たるとのことだ。
それゆえ、王家を守る存在として、紋章としてグリフォンが選ばれたと。
そのグリフォンなのだが鷲とライオン?というのを混ぜた姿をしているとのことだ。
ワシは、鷲より鷹が好きだがな。
ワシが鷹狩りが好きだったことは周知の事実と思うが。
鷹狩りというのは、鷹を狩るわけではないぞ。
鷹で獲物を狩るから鷹狩りなのだ。
ワシは、その鷹狩りで独特なやり方をしていた。
20名ほどを帯同させて鳥見の衆と名付け、2人1組で組ませ、獲物を見つければ、片方がその場に残り、もう1人がワシの元に報告しに来る。
ワシの身辺には、槍と弓を持つ6人が控えており、狙う獲物が決まったら騎馬が藁に虻をつけて、回しながら近付いて、鳥の注意を引く。
その馬の影に隠れてワシが鷹を連れ近づく。
飛び立つところを狙って、鷹を放ち、狩りをさせる。
本来はこれで終わりだと思うであろう?
ワシは、さらに鷹が獲物を捕らえて着地する地点に、農夫に化けさせた向かい持ちを待たせ、最後にはこの向かい持ちが獲物を取り押さえる。
そう、鷹狩りですら、ワシにとっては戦闘訓練である。
さて、話は脱線したが軍旗という味方が誰の目から見てもわかりやすいものを作るのが必要と考え、ハインリッヒ家の紋章を選んだというわけだ。
これの方が誰から見てもわかりやすいであろう。
テキーラに伝わると良いが。
遠くに旗を見るテキーラ・バッカス。
「あの旗は、ハインリッヒ家の紋章であるグリフォンか。殿がこちらに訪れたのか?いや、あれが敵の策略ということも」
「テキーラのオッサンじゃ無かった。テキーラ様、そう警戒する必要はねぇよ。ありゃ紛れもなく領主様だ」
「ジャガ・イモよ。お主がそう言うのであれば、安心だな。城門を開門せよ。殿を出迎えるのじゃ」
こうして、入城したサブロー・ハインリッヒは、その凄惨さにここまでしてワシヅ砦を守り抜いてくれたのかと胸を熱くしていた。
身体に槍か何かに突き刺さっていたのか大穴が開き、身体が少し焦げている200程の兵の死体。
周りを取り囲み涙を流す民の姿。
「殿、わざわざこちらにお越しくださったこと感謝致します」
「テキーラよ。大義である」
「勿体無い御言葉」
こうして、挨拶も程々にテキーラ・バッカスから事の経緯を聞くサブロー・ハインリッヒであった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活
仙道
ファンタジー
リメイク先:「視線が合っただけで美少女が俺に溺れる。異世界で最強のハーレムを作って楽に暮らす」
ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。
彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる