信長英雄記〜かつて第六天魔王と呼ばれた男の転生〜

揚惇命

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2章 オダ郡を一つにまとめる

120話 ワシヅ砦を臨時の本拠地とする

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 テキーラ・バッカスより事の経緯を聞くサブロー・ハインリッヒ。

「であるか」

「はっ。ルルーニと何かやり取りをしたかと思えば、連合軍は撤退を始め、我らは事なきを得ることに。ワシのために死んだ部下に合わせる顔が」

「そのようなことはない。あのような残虐な所業、到底許すことはできん。テキーラよ。うぬの想いは決して無駄にせん。ワシが必ずナバルにこの罪を償わせてやる。その時は、うぬに先陣を任せる。大いに敵を討ち取ってやるが良い。それがうぬのため死んでいった者たちへの1番の誉れとなろう。我らの大将は命を賭けるに値する漢であったとな」

「殿、歳を召したワシに勿体無い御言葉。必ずやその時は、ナバルの奴らに目にもの見せてくれましょうぞ。殿に紹介したい者が」

 見てくれは、ボロボロの服を着ていて、いかにも農作業をしているのがわかる。

「テキーラのオッサン。ゴホン。テキーラ様より御紹介に預かりました。ジャガ・イモと申します。テキーラ様の元で軍師として、働いております。領主様。ゴホン。サブロー様の御尊顔を拝見できたこと大変嬉しく思います」

「であるか。してイモよ。そう無理に堅苦しくする必要はない。祭りを見ていたのならわかるであろう。ワシは出自にこだわらぬ。才があるのなら例え罪人であろうとも重用する。国を治めるためには、実力のある者がたくさん必要であるからな。テキーラを補佐してくれたこと感謝する。今後もテキーラのため尽くせ。良いな?」

「有り難き御言葉。はぁ。やっぱり、器が違うや領主様は。このジャガ・イモで良ければ、今後もテキーラ様のため粉骨砕身働かせてもらうぜ。宜しく頼む」

「うむ。良い名だ。大事にせよ」

「はっ」

 じゃがいもとはな。
 テキーラの奴も中々、面白い名を付けるではないか。

「殿、してこちらに訪れたのは」

「うむ。スエモリ城を落とすことは叶わず。ショバタ城も敵に奪われた。救援などと格好良いことを言っても逃げてきたが正しかろう」

「殿の顔を見ると何を考えているのかわかるようになりましたぞ。この老体で良ければ、遠慮なくお使いくだされ」

「さらに凄惨な事となるかもしれんぞ?」

「連合軍ですら跳ね返したのですぞ。今更、反乱貴族など赤子の手を捻るようなもの」

「では、作戦を伝える。ワシ自ら、兵を率い、ショバタ城の奥にある」

 そこまで聞いて、ジャガ・イモが口を挟む。

「ゼンショウジフォートを取り返すってことか?ショバタキャッスルが落ちた以上、対して実入りはねぇんじゃねぇか。俺ならその後方にあるアヅチキャッスルを狙うぜ」

「クハハハハ。全くイモは面白い男よな」

「なんで、そこで笑うんだよ」

「いや、ワシも全く同じ事を考えていたのでな。アヅチ城にいる反乱貴族どもをゼンショウジ砦に集めさせ、ワシがいると情報を流したここワシヅ砦を急襲させる。その隙に、我らは敵の退路と補給路を断つ」

「成程な。完全にここで、残りの反乱貴族の奴らを完全に叩き潰すってことか。面白えじゃねえか。そういうことならこっちは任せな。盛大に領主様がいるって、演出してやろうじゃねぇか」

「フッ。イモよ。まぁ、ワシの話を最後まで聞け。テキーラたちだけでは、ワシが本当にこの砦にいるとは思うまい。そこで、腹心であるレイヴァンド卿が野戦のため陣を敷いたとしたらどうだ?」

「領主様は相当賢いとは思ってたがここまでとはよ。確かにそれなら反乱貴族の奴らもここが攻め時だとアヅチキャッスルに残す兵は、限りなく少ないだろう。だがよ。そんな都合よく奇襲に向いてる兵が居るのか?歩兵も騎馬も少なからず足音や蹄の音が聞こえるぜ」

「慎重に行くとしてもすれ違う危険性もあるか」

「おぅ。足音が掻き消せるような雨でも降れば、良いけどよ」

「その心配は私が解消しましょう」

 聞こえた声はマリーであった。

「若様、合流に時間を要したことお許しください。ですがトガクシの協力を取り付けることに成功。頭首を務めるモリトキ殿をお連れしました」

「紹介に預かったモリトキと申す。この度はマリー殿を我が里に派遣してくれたことハインリッヒ卿のお心遣いに感謝致す。それに先程の策、立ち聞きした事を許せ。詳細は明かせぬが我らなら容易に為せよう。恩に報いるため是非とも協力させてもらいたい」

「うぬがあの暗殺者の娘の父か。宜しく頼む」

「我が娘の無礼は聞いた。寛大な処置をしてくださった事、ハインリッヒ卿には、多くの慈悲を与えてもらったのだな。我らで良ければ、いつでも協力すると約束しよう」

「うむ」

 ほぉ。
 流石忍びだな。
 マリーの気配は感じたが全く気配を感じさせんかった。
 あの暗殺者の娘とは、大きな違いだな。

「サブロー様、わ、私も精一杯頑張るね」

「うむ」

「えっ!?何で、お前いつの間にとかいう反応を期待してたのに~」

「お前の気配はわかりやすい」

「ハッハッハ。我が娘ながら恥ずかしい限り」

「パパまで、私は次期トガクシの頭首なんだよ」

「うぬに暗殺は向かぬ。ワシの側でワシの護衛をせよ」

「えっ!?それって今度こそプロポーズだよね。ね、ね、ね」

「いや違うが。うぬの努力は凄まじいものゆえ、武将の方が向いていると判断したまでのこと」

「フッ。確かに、この言い方では娘が勘違いするのも無理はない。全く、不思議な魅力を放つ御仁だ」

 こうしてトガクシの協力を得て、サブロー・ハインリッヒは、アヅチ城を奪取する計画を遂行するのであった。
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