ダンジョンライフ

ジャンボ

文字の大きさ
25 / 26

第22話

しおりを挟む
「今日はこの辺で野営にするか」
「「「そうだな」」」

とある4人の男がほんのり明るい洞窟の中でキャンプの準備をしていた。
キャンプといっても楽しいものでは無い。
彼らがいるのは元日に現れたダンジョンの中。
それも上級ダンジョンである練馬ダンジョンの15階層だ。

彼らは「赤ヘル軍団」というPT名前で活動している練馬のトップPTの1つ。
特徴はその名の通り全員が同じデザイン赤いヘルメットを被っていること。
リーダーの男が火魔法の使い手というのもあるかもしれない。

「しかし結構キツイな」
「ああ。オークの耐久力は馬鹿にできんな」
「リーダーの火魔法が通用するとはいえ、数が増えるとちときついぜ」
「もう少し上の階層でレベルをあげてからの方が良いんじゃないか?」

食事を取りながら今後の活動について話し合う。
すると突然、メンバーの1人が突然警戒体勢に入る。

「ん?」
「どうした?」
「今なにか気配を感じた」
「「「?!」」」

それを聞いた3人も一斉に警戒態勢を取る。
ダンジョンでは何があるかわからない。
たとえメンバーの言葉が結果的に気の所為だったとしても、それを笑い飛ばすような人間はこのPTにはいない。
むしろそうでなくてはダンジョンで生きていくのは不可能だ。

しばらくの間、彼らは周囲を警戒し続けた。
5分だろうか10分だろうか、リーダーの男を中心にして周囲をカバーするように3人が盾を構える。

「何もない.......か?」

リーダーのその呟きに応えるように、周りのメンバーも盾を下げる。
しかしその瞬間ーー

「がはっ.......」

突然細くて鋭い何かがメンバーの1人の喉を貫いた。
ステータスを確認するまでもなく一撃で絶命している。
メンバーの死を惜しむまもなく連続でそれが飛んでくるが、なんとか盾で防ぐ。
しかし、攻撃が何処から来ているのか全く検討がつかない。
相手の姿がどこにも見えないのだ。

「くそ!一体何処からーーあ」

リーダーの男は痛みを感じて自身の胸を見ると、そこには1本の短剣が突き刺さっていた。

「はは.......ちくしょうめ.......」

それが彼の最後の言葉だった。



~~~~~



「ほえ~大変だな」

俺は自分の農地で育った芋をフライにしたものをポリポリ食べながらテレビを見ていた。
ダンジョンが現れて3ヶ月と少し、その影響は様々であるが、中でも大きな影響を受けたのはスポーツ界だろう。
それは当然といえば当然。
レベルを少しでもあげればSPを使って身体能力をあげられる。

日本のようにちゃんとした規定の元にダンジョンが管理されているならともかく、国によっては無法地帯となっているダンジョンもある。

一応、1度でもダンジョンに潜ってステータスを得たかどうかを調べることはできる。
方法は2つ、鑑定魔法とPT機能。

鑑定魔法は対象がステータスを得ていないと表示されない。
ただ、これは持っている人間が限りなく少ないーー既にいる事はわかっているーーので現実的に難しい。

PT機能の方はステータスを持っている人間が対象にPT加入申し込むと、相手がステータスを持っていなければ天の声さんから何も反応がなく、持っている場合は必ず何かしらのアナウンスがある。

ともかく、これをドーピングとして扱うかどうかが大きな問題となっているわけだ。
特に陸上競技なんかはコンマ数秒だったり数センチを競うわけで、SPによる身体能力の強化による恩恵は計り知れない。
既に非公式とされているがこれまでの記録を大きく更新するようなことが起きている。

テレビ画面の向こうではこの道の有識者の人達が白熱した議論を交わしていた。
俺ならぶっちぎの世界記録を出せそうだななんてアホなことを考えていると、スマホに涼子から着信がきた。

「ん.......もしもし?」
「あ、龍一さん。こんにちはです!」
「こんにちは涼子。それで、何かあったか?」
「あったといえばあったのですが.......」

どうしたのだろうか。
もしかして実家で何か.......。

「練馬ダンジョンのことを調べていたのです」

ダンジョンの方か。
既に次のアタックの予定は立てている。
それに、この前のアタックではスキルオーブは出なかったがそれなりの収入になったしな。
俺は特に何もしてないので殆ど涼子に譲ったが。

「何かあったのか?」
「それがですねーー」

涼子曰くーー

練馬ダンジョンで活動しているトップPT「赤ヘル軍団」のメンバーが全滅したらしい。
たまたま同じ階層を探索していた別のPTが彼らの遺体を発見して持ち帰ったそうだ。
死体や使われず放置された物資は3日前後ダンジョン内で放置されるとダンジョンに分解・吸収されてしまう。
これはダンジョンの「復元力」とも言えるもので、森林フィールドを焼け野原にしても同じく3日程で元通りになる。
今回は遺体を持ち帰れたのでよかったと言える。

「今はその話題でもちきりみたいです」
「そうか」

ダンジョン内で全滅するパターンとしては2つ。
1つは当然魔物に殺されてしまうパターン。
もう1つは同じ人間に殺されるパターンだ。

今回の場合はどちらだろうか。

まずは魔物によるパターン。
確か15階層はオークが出る階層だったはず。
自分より身の丈が大きい初めての魔物だったのでよく覚えている。
パワーと耐久力はこれまでの魔物と一線を画してはいるが、スピードはそこまでじゃない。
最悪の場合でも逃げ切れるとは思うのだが.......。
となると、まさか特殊個体ユニークか?
その可能性は大いにあるな。

次に人間によるパターン。
これは正直考えようがない。
せいぜい強盗目的じゃなさそうってことぐらいだ。
それにしたって状況次第では違うかもしれないからな。

どちらにしろ今ここで確定できることは何一つない。

「魔物か人間か.......まぁ今の段階ではなんもわからんなー」
「そうですよね」
「俺達も他人事じゃないぞ。詳しいことはまた今度相談しような」
「わかりました!」

涼子からの通話を切って、俺は考える。

もし魔物のせいならばそこまで気にしていない。
それが仮にユニーク個体だとしてもだ。

問題は人間による犯行だった場合だ。
負ける可能性は魔物と同様にないと思う。
涼子が狙われた場合でも傷一つつけさせやしないさ。

ただ、同じ人間を最悪の場合手に掛ける必要があるかもしれない。

俺にそれができるか?
いや.......殺るーーそれが涼子を守る確実な方法ならば。



~~~~~



次回更新は明後日です。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました

空地大乃
ファンタジー
ダンジョンが日常に溶け込んだ世界――。 平凡な会社員の風間は、身に覚えのない情報流出の責任を押しつけられ、会社をクビにされてしまう。さらに、親友だと思っていた男に婚約者を奪われ、婚約も破棄。すべてが嫌になった風間は自暴自棄のまま山へ向かい、そこで人々に見捨てられた“放置ダンジョン”を見つける。 どこか自分と重なるものを感じた風間は、そのダンジョンに住み着くことを決意。ところが奥には、愛らしいモンスターたちがひっそり暮らしていた――。思いがけず彼らに懐かれた風間は、さまざまなモンスターと共にダンジョンでのスローライフを満喫していくことになる。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

ポンコツと蔑まれた冒険者は最強クランをつくる

ぽとりひょん
ファンタジー
エアハルトは、幼なじみのエルメンヒルトを追ってダンジョンの町「ゴルドベルク」で冒険者になろうとする。しかし、彼のアビリティを見た人たちは冒険者を諦め村へ帰るように説得する。彼には魔力がなかった。魔力がなければ深層で魔物と戦うことが出来ないのだ。エアハルトは諦めきれずエルメンヒルトと肩を並べて冒険するため、冒険者となってポンコツと蔑まれながら、ソロでダンジョンに挑み始める。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

処理中です...