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第22話
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「今日はこの辺で野営にするか」
「「「そうだな」」」
とある4人の男がほんのり明るい洞窟の中でキャンプの準備をしていた。
キャンプといっても楽しいものでは無い。
彼らがいるのは元日に現れたダンジョンの中。
それも上級ダンジョンである練馬ダンジョンの15階層だ。
彼らは「赤ヘル軍団」というPT名前で活動している練馬のトップPTの1つ。
特徴はその名の通り全員が同じデザイン赤いヘルメットを被っていること。
リーダーの男が火魔法の使い手というのもあるかもしれない。
「しかし結構キツイな」
「ああ。オークの耐久力は馬鹿にできんな」
「リーダーの火魔法が通用するとはいえ、数が増えるとちときついぜ」
「もう少し上の階層でレベルをあげてからの方が良いんじゃないか?」
食事を取りながら今後の活動について話し合う。
すると突然、メンバーの1人が突然警戒体勢に入る。
「ん?」
「どうした?」
「今なにか気配を感じた」
「「「?!」」」
それを聞いた3人も一斉に警戒態勢を取る。
ダンジョンでは何があるかわからない。
たとえメンバーの言葉が結果的に気の所為だったとしても、それを笑い飛ばすような人間はこのPTにはいない。
むしろそうでなくてはダンジョンで生きていくのは不可能だ。
しばらくの間、彼らは周囲を警戒し続けた。
5分だろうか10分だろうか、リーダーの男を中心にして周囲をカバーするように3人が盾を構える。
「何もない.......か?」
リーダーのその呟きに応えるように、周りのメンバーも盾を下げる。
しかしその瞬間ーー
「がはっ.......」
突然細くて鋭い何かがメンバーの1人の喉を貫いた。
ステータスを確認するまでもなく一撃で絶命している。
メンバーの死を惜しむまもなく連続でそれが飛んでくるが、なんとか盾で防ぐ。
しかし、攻撃が何処から来ているのか全く検討がつかない。
相手の姿がどこにも見えないのだ。
「くそ!一体何処からーーあ」
リーダーの男は痛みを感じて自身の胸を見ると、そこには1本の短剣が突き刺さっていた。
「はは.......ちくしょうめ.......」
それが彼の最後の言葉だった。
~~~~~
「ほえ~大変だな」
俺は自分の農地で育った芋をフライにしたものをポリポリ食べながらテレビを見ていた。
ダンジョンが現れて3ヶ月と少し、その影響は様々であるが、中でも大きな影響を受けたのはスポーツ界だろう。
それは当然といえば当然。
レベルを少しでもあげればSPを使って身体能力をあげられる。
日本のようにちゃんとした規定の元にダンジョンが管理されているならともかく、国によっては無法地帯となっているダンジョンもある。
一応、1度でもダンジョンに潜ってステータスを得たかどうかを調べることはできる。
方法は2つ、鑑定魔法とPT機能。
鑑定魔法は対象がステータスを得ていないと表示されない。
ただ、これは持っている人間が限りなく少ないーー既にいる事はわかっているーーので現実的に難しい。
PT機能の方はステータスを持っている人間が対象にPT加入申し込むと、相手がステータスを持っていなければ天の声さんから何も反応がなく、持っている場合は必ず何かしらのアナウンスがある。
ともかく、これをドーピングとして扱うかどうかが大きな問題となっているわけだ。
特に陸上競技なんかはコンマ数秒だったり数センチを競うわけで、SPによる身体能力の強化による恩恵は計り知れない。
既に非公式とされているがこれまでの記録を大きく更新するようなことが起きている。
テレビ画面の向こうではこの道の有識者の人達が白熱した議論を交わしていた。
俺ならぶっちぎの世界記録を出せそうだななんてアホなことを考えていると、スマホに涼子から着信がきた。
「ん.......もしもし?」
「あ、龍一さん。こんにちはです!」
「こんにちは涼子。それで、何かあったか?」
「あったといえばあったのですが.......」
どうしたのだろうか。
もしかして実家で何か.......。
「練馬ダンジョンのことを調べていたのです」
ダンジョンの方か。
既に次のアタックの予定は立てている。
それに、この前のアタックではスキルオーブは出なかったがそれなりの収入になったしな。
俺は特に何もしてないので殆ど涼子に譲ったが。
「何かあったのか?」
「それがですねーー」
涼子曰くーー
練馬ダンジョンで活動しているトップPT「赤ヘル軍団」のメンバーが全滅したらしい。
たまたま同じ階層を探索していた別のPTが彼らの遺体を発見して持ち帰ったそうだ。
死体や使われず放置された物資は3日前後ダンジョン内で放置されるとダンジョンに分解・吸収されてしまう。
これはダンジョンの「復元力」とも言えるもので、森林フィールドを焼け野原にしても同じく3日程で元通りになる。
今回は遺体を持ち帰れたのでよかったと言える。
「今はその話題でもちきりみたいです」
「そうか」
ダンジョン内で全滅するパターンとしては2つ。
1つは当然魔物に殺されてしまうパターン。
もう1つは同じ人間に殺されるパターンだ。
今回の場合はどちらだろうか。
まずは魔物によるパターン。
確か15階層はオークが出る階層だったはず。
自分より身の丈が大きい初めての魔物だったのでよく覚えている。
パワーと耐久力はこれまでの魔物と一線を画してはいるが、スピードはそこまでじゃない。
最悪の場合でも逃げ切れるとは思うのだが.......。
となると、まさか特殊個体か?
その可能性は大いにあるな。
次に人間によるパターン。
これは正直考えようがない。
せいぜい強盗目的じゃなさそうってことぐらいだ。
それにしたって状況次第では違うかもしれないからな。
どちらにしろ今ここで確定できることは何一つない。
「魔物か人間か.......まぁ今の段階ではなんもわからんなー」
「そうですよね」
「俺達も他人事じゃないぞ。詳しいことはまた今度相談しような」
「わかりました!」
涼子からの通話を切って、俺は考える。
もし魔物のせいならばそこまで気にしていない。
それが仮にユニーク個体だとしてもだ。
問題は人間による犯行だった場合だ。
負ける可能性は魔物と同様にないと思う。
涼子が狙われた場合でも傷一つつけさせやしないさ。
ただ、同じ人間を最悪の場合手に掛ける必要があるかもしれない。
俺にそれができるか?
いや.......殺るーーそれが涼子を守る確実な方法ならば。
~~~~~
次回更新は明後日です。
「「「そうだな」」」
とある4人の男がほんのり明るい洞窟の中でキャンプの準備をしていた。
キャンプといっても楽しいものでは無い。
彼らがいるのは元日に現れたダンジョンの中。
それも上級ダンジョンである練馬ダンジョンの15階層だ。
彼らは「赤ヘル軍団」というPT名前で活動している練馬のトップPTの1つ。
特徴はその名の通り全員が同じデザイン赤いヘルメットを被っていること。
リーダーの男が火魔法の使い手というのもあるかもしれない。
「しかし結構キツイな」
「ああ。オークの耐久力は馬鹿にできんな」
「リーダーの火魔法が通用するとはいえ、数が増えるとちときついぜ」
「もう少し上の階層でレベルをあげてからの方が良いんじゃないか?」
食事を取りながら今後の活動について話し合う。
すると突然、メンバーの1人が突然警戒体勢に入る。
「ん?」
「どうした?」
「今なにか気配を感じた」
「「「?!」」」
それを聞いた3人も一斉に警戒態勢を取る。
ダンジョンでは何があるかわからない。
たとえメンバーの言葉が結果的に気の所為だったとしても、それを笑い飛ばすような人間はこのPTにはいない。
むしろそうでなくてはダンジョンで生きていくのは不可能だ。
しばらくの間、彼らは周囲を警戒し続けた。
5分だろうか10分だろうか、リーダーの男を中心にして周囲をカバーするように3人が盾を構える。
「何もない.......か?」
リーダーのその呟きに応えるように、周りのメンバーも盾を下げる。
しかしその瞬間ーー
「がはっ.......」
突然細くて鋭い何かがメンバーの1人の喉を貫いた。
ステータスを確認するまでもなく一撃で絶命している。
メンバーの死を惜しむまもなく連続でそれが飛んでくるが、なんとか盾で防ぐ。
しかし、攻撃が何処から来ているのか全く検討がつかない。
相手の姿がどこにも見えないのだ。
「くそ!一体何処からーーあ」
リーダーの男は痛みを感じて自身の胸を見ると、そこには1本の短剣が突き刺さっていた。
「はは.......ちくしょうめ.......」
それが彼の最後の言葉だった。
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「ほえ~大変だな」
俺は自分の農地で育った芋をフライにしたものをポリポリ食べながらテレビを見ていた。
ダンジョンが現れて3ヶ月と少し、その影響は様々であるが、中でも大きな影響を受けたのはスポーツ界だろう。
それは当然といえば当然。
レベルを少しでもあげればSPを使って身体能力をあげられる。
日本のようにちゃんとした規定の元にダンジョンが管理されているならともかく、国によっては無法地帯となっているダンジョンもある。
一応、1度でもダンジョンに潜ってステータスを得たかどうかを調べることはできる。
方法は2つ、鑑定魔法とPT機能。
鑑定魔法は対象がステータスを得ていないと表示されない。
ただ、これは持っている人間が限りなく少ないーー既にいる事はわかっているーーので現実的に難しい。
PT機能の方はステータスを持っている人間が対象にPT加入申し込むと、相手がステータスを持っていなければ天の声さんから何も反応がなく、持っている場合は必ず何かしらのアナウンスがある。
ともかく、これをドーピングとして扱うかどうかが大きな問題となっているわけだ。
特に陸上競技なんかはコンマ数秒だったり数センチを競うわけで、SPによる身体能力の強化による恩恵は計り知れない。
既に非公式とされているがこれまでの記録を大きく更新するようなことが起きている。
テレビ画面の向こうではこの道の有識者の人達が白熱した議論を交わしていた。
俺ならぶっちぎの世界記録を出せそうだななんてアホなことを考えていると、スマホに涼子から着信がきた。
「ん.......もしもし?」
「あ、龍一さん。こんにちはです!」
「こんにちは涼子。それで、何かあったか?」
「あったといえばあったのですが.......」
どうしたのだろうか。
もしかして実家で何か.......。
「練馬ダンジョンのことを調べていたのです」
ダンジョンの方か。
既に次のアタックの予定は立てている。
それに、この前のアタックではスキルオーブは出なかったがそれなりの収入になったしな。
俺は特に何もしてないので殆ど涼子に譲ったが。
「何かあったのか?」
「それがですねーー」
涼子曰くーー
練馬ダンジョンで活動しているトップPT「赤ヘル軍団」のメンバーが全滅したらしい。
たまたま同じ階層を探索していた別のPTが彼らの遺体を発見して持ち帰ったそうだ。
死体や使われず放置された物資は3日前後ダンジョン内で放置されるとダンジョンに分解・吸収されてしまう。
これはダンジョンの「復元力」とも言えるもので、森林フィールドを焼け野原にしても同じく3日程で元通りになる。
今回は遺体を持ち帰れたのでよかったと言える。
「今はその話題でもちきりみたいです」
「そうか」
ダンジョン内で全滅するパターンとしては2つ。
1つは当然魔物に殺されてしまうパターン。
もう1つは同じ人間に殺されるパターンだ。
今回の場合はどちらだろうか。
まずは魔物によるパターン。
確か15階層はオークが出る階層だったはず。
自分より身の丈が大きい初めての魔物だったのでよく覚えている。
パワーと耐久力はこれまでの魔物と一線を画してはいるが、スピードはそこまでじゃない。
最悪の場合でも逃げ切れるとは思うのだが.......。
となると、まさか特殊個体か?
その可能性は大いにあるな。
次に人間によるパターン。
これは正直考えようがない。
せいぜい強盗目的じゃなさそうってことぐらいだ。
それにしたって状況次第では違うかもしれないからな。
どちらにしろ今ここで確定できることは何一つない。
「魔物か人間か.......まぁ今の段階ではなんもわからんなー」
「そうですよね」
「俺達も他人事じゃないぞ。詳しいことはまた今度相談しような」
「わかりました!」
涼子からの通話を切って、俺は考える。
もし魔物のせいならばそこまで気にしていない。
それが仮にユニーク個体だとしてもだ。
問題は人間による犯行だった場合だ。
負ける可能性は魔物と同様にないと思う。
涼子が狙われた場合でも傷一つつけさせやしないさ。
ただ、同じ人間を最悪の場合手に掛ける必要があるかもしれない。
俺にそれができるか?
いや.......殺るーーそれが涼子を守る確実な方法ならば。
~~~~~
次回更新は明後日です。
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