Confesess(自白屋娘)6 狙われたConfesess 決死の脱出劇 下巻

蓮時

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下巻 第三章 (3)

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 実は、この二人は基地に戻るまでに、ある会話をしていた。
「おらたち、間にあうべかな?」
  南部なまりの、バークの声に、ジャックが次の応答を、
「間に合わなければ、僕たちに女神がつかなかっただけという話さ」
「そだな、もともと、信じがたい話だし、実際、あんの話、君さ、どう思う?」
「僕は、間違いなく本当の話だ、と思うけどな」
「なぜに、そこまで思うべか? からかわれていると思わないのべか」
「では、問い返すけど、第一、彼女たちが、どうして、そんな、でまかせを言う必要があるのだい? からかったにしては仕掛けが大きすぎるし、あまりにも変だよ。KAZUMIまで使って呼び出すメリットがあるのかい?」
「そげさ言われると、そうなんだども、ていうことは、やはり本当べか」
「だろうな、さっきの会話にも出てきたように、本国には、犯罪捜査のために、超能力者を養成するアカデミーが存在するし」
「しかし、よくよく考えてんも、いまいち、実感がわかないっていうべか」
 バークは、まだ懐疑的であった。
「普通で考えたら、確かに信じがたい話だけどな、世の中、いろいろあるのだよ」
「しかしね、まんず、いちおう信ずるとしても、なぜに、こげな話を、あの、おなごどもが持ってきたかということべ、今日まで縁もゆかりもなかった人たちなのにべ」
「縁はあるよ、あのKAZUMIのな」
 ジャックは含み笑いをしながら答え、
「ははは、KAZUMIか」
 そして、バークも同調して笑った。何かそれなりの秘密?があるのか。
「だいたい、あの姉ちゃん、やり手だから、今回のこと、全部知ってると思うよ。かつがれたら、かつがれたということで文句を言えばいいことだし。実害もないことだから」
「実害がないか。言われてみれば、そうだべ」
「まあ、そういうことだよ。それよりな、これからのことを話し合わないと、ちょっと、はっきりとは言いにくいけど」
 ジャックの言葉がつまり、バークも気に掛かったのか尋ねた。
「言いにくいって、何がべ?」
「その、本当の話だったら、例の超能力、最初に、どっちが使うかと思って」
「なーんだべ、そげなことか。君さが先に使いたければ、どんぞ」
 バークは意に介していなかった。
「でもな、君のとこは、時が経てば経つほど利子がかさんでいくのだろ。僕のとこは、君の家が借金を返したあとでも、いいと思ってるんだ。実のこというと、姉さんの目のことは半ばあきらめていたのだし」
「そんでも、君さの大事な姉さんじゃねか。早う治さんと」
「だけど、一刻も争うことではないからな。やはり、君が先ということで」
「はいはい、わかったべ。そげな、深刻な顔をして話すことじゃねと思うべが」
「確かにそうだな。では、別の話から始めようか」
「別って?」
「今から、行く場所のことだよ、警備が、とてつもなく厳しかった場合はどうする?」
「厳しさにもよるだが、それなら、あきらめるべ。命あってのものだねなのでな」
「そうだよな。その場合は、二人ともいさぎよく、あきらめるとするか」
 ジャックは相づちをうつように答えたが、すぐに眉をひそめ、言葉を続けた。
「もし、そのとき相手が逃がしてくれなければ、どうする?」
「いくらなんでも、それは、ないだべ」
「どうかな、その少女っていうのは、彼女たちの話によると、かなりのエスパーだろ。最悪な場合は、秘密を知った僕たちを無事に帰さない可能性もあるんだ」
「そげな、危険なとこなら、おらっちは行きたくないべ」
 バークは尻込みをした。
「だからね、それは、万が一の話だよ。まずは、ありえないと思うけど、もし、そのようときが起きた場合は君が最初に使って欲しいんだ」
「何を言っているんだべ。そげな状況で、おらっちだけが助かるわけないべが」
「けどね、本当に少女がいたら、助かるのさ。覚えているかい。さっきの店での言葉を」
「何だったべか?」
「だから、テレポートだよ。あのときは、君もはしゃいでいただろ」
「そだった」
「しっかりしてくれよ。だから、こうやって動いているのだろ。それで、そのときは、君が少女に頼んでテレポートを試みるんだ。僕が相手をできるだけ押さえるから」
「では、君さが犠牲になるっちゅうことべか」
「だから、これはね、万が一のときだよ。忘れないでくれよ、君の家の借金返済のめどがたったら、必ず僕の姉さんの目を治しに、故郷のメリーランドに来てくれることをね」
「でんも」
「不満なのか?」
「そんいうわけでなく、成り行きということもあるべ。相手が、先におらの方に攻撃を、すてくる場合も考えないと、そんときは・・」
  そのバークの目を見ながら、ジャックは言いたいことをさとった。
「そのときは、任せておいてくれ、テレポートで脱出したら、真っ先に、君の家の借金を返すために、ルイジアナに行くから」
「そんときは、よろしく頼むべ」
「そんなことは起きないと思うが、これで決まったな、まずは、君の家が助かることがね。とにかく、間に合わなければ何も始まらないさ」
 そのときのジャックは歯を見せて笑っていた。

 怒ったバークは、ドルバー大佐をにらみつけた。
 その大佐は、あまりにもの成り行きに、目を白黒させたままである。そして、叫んだ。
「本官は何も命令をしていない! 本官は君たちに危害を加えるつもりはない!」
 ドルバーは必死に弁解をしていた。
 だが、怒りで冷静でなくなったバークは、わめき声を上げて、その大佐におどりかかったのだ。そして押し倒すと、その大佐の胸元をつかんで言った。
「ここさ、開けるカギは、どこなんだべ!」
「じょ、上官に、こ、こんなことをして、い、いいのか」
 ドルバーは声を上げたが、仲間を殺され、頭に血が上ったバークには逆効果だった。怪力で押しつけられ、ドルバーは気を失った。
〈つんい、頭に血んが上って、思わず大佐殿に、こげなことを〉
 気を失った大佐を見つめて、バークが反省をしていたとき、背後から、大きなショックを受けた。頭に割れるような衝撃が走ったバーク。
 ヌメッと、ほおを伝わる血の感触に気づき、背後を振り向くと、そこには、座椅子を両手で持ち上げ、ものすごい形相をしたカルトナー公使がいた。
 カルトナーは力一杯、座椅子を振りかざし、第二撃を加えてきた。再び、頭に痛撃を受け、バークはよろめいた。そこに、第三の打撃、
 だが、これくらいでは、バークはひるまなかった。手で頭からの出血をおさえながら、
「なんを、するべか!」
 カルトナーをにらみ返したのだ。そのあとも、バークは、この上なく険しい形相をしながら、一歩踏み出した。
「ひー」
 叫びながら、カルトナーは椅子を投げつけた。だが、先ほどの打撃に比べたら、そんなことは大したことはなかった。血をダラダラ流しながら、バークはカルトナーに迫った。
 カルトナーは逃げようとしたが、前はふさがれ、背後は壁か営倉である。
 いまにも、つかみかかってこようとするバークを前に、彼は無我夢中であった。猛獣に出会ったかのような真っ青な顔になり、後ろの何かを、手で探るように後ずさっていた。
 血で顔が染まったバークは、ゆっくりと迫り、カルトナーは壁に追い詰められた。
 カルトナーはふるえた両手を、背後の壁に押しつけながら、左の方向に、ゆっくりと、カニ歩きをしながら進んだ。そして、その左の方角には! 
 逃げることに必死になっているカルトナーは、いつのまにか、自分の後頭部が、営倉の窓の鉄格子と接触していることに気がついていなかった。それを、逃さなかった天美。格子の隙間から指を出すと、カルトナーに触れた。
 何とカギを持っていたのはカルトナーであった。弱善疏に墜ちたカルトナーは、内ポケットからカギを取り出すと、天美の入っている営倉を開けた。

「こ、こんな、ひどいこと!」
  そう、つぶやいた天美は、まさか、この二人が彼女を助けるために、競羅たちが派遣した人物とは夢にも思っていなかった。それでも、彼女はこう思っていた。
〈捕まってるわったし、見てしまったばっかりに、この人たち、可哀想。せっかく、二人は愛しあってたのに、やるせない〉と、
 彼女はドルバー大佐のセリフを聞き、同様に体格のいい二人の青年兵士が、営倉内で秘め事をするために現れたのだと思っていた。まったくの勘違いだが、実際、あのときは、セリフを真に受けて、顔を赤らめていたのである。
 だが、いつまでも感傷にひたっておれない。カギが開いたことにより、営倉から出ることができた天美は、真っ先に、カルトナーをにらみつけているバークに近づいた。そして、悲しそうな顔をして首を振った。バークは、仁王立ちをしながら絶命をしていたのだ。
 彼の最期の行動は無意識であろう。脳天を椅子で何度も痛撃され、意識がすでに飛んでいたバークは、天美の本当の能力を知らないながらも、カルトナーを彼女のもとに追い込んだのであった。
  まあ、どうせ死ぬなら、ある意味、この方が幸せだったであろう。もし、念願の手に触れても、何も起きず絶望的な気持ちになるよりは・・
「ううっ」 
  小さなうめき声をあげて、男が立ち上がった。意識を取り戻したドルバーだ。ドルバー軍副司令官は、営倉から出ている天美を見ると、
「き、貴様、いつのまに!」
  と叫び、警棒のスイッチを入れ、ガスを噴出させようとしたが、自由になった彼女の相手ではなかった。簡単に触れられて、その弱善疏に墜ちたのである。
 残ったのは、やっとのことで、ジャックの死体を、今まさに、はねのけ終えたところのCIA日本支部長のビュイッグだ。
 天美は、そのビュイッグを厳しい目でにらみつけた。
 ビュイッグは、目の前の相手の対処方法を考えていた。むやみに触れるわけにはいかない相手、いくら、拳銃を持っているといっても、自分一人では、とても、動きを封じ込めることが不可能であることを自覚していた。
「絶対に、ここからは逃がさないからな」
 捨てゼリフを残すと、きびすを返して走り去っていった。
「あ、しまった」
 彼女は追いかけようとしたが、勝手を知らない場所、その姿を見失ってしまった。
「こうなったら、まず、ここから出ること、考えないと」
 天美は基地から脱出するために、通路を前に進むことにした。
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