Confesess(自白屋娘)6 狙われたConfesess 決死の脱出劇 下巻

蓮時

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下巻 最終章 (1)

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 天美はにらみながら言った。
「つまり、奥さんは、殺し屋さんだったわけね」
「いや、誰も殺してはいないよ、怪我をさせるのが専門だったから。ワイフは急所を余裕ではずして撃てるからね。もともと二十二口径は殺傷力も大きくないし。けどね」
 アロンは、ここで不気味な口調になった。
「殺そうと思えば殺せるよ。距離にして三メートルぐらいかな。さっきは、興奮をしていて、どうかと思ったけど、今なら確実にね。殺しちゃっては元も子もないから、足の筋を狙うことにしたのだけど、そこが破壊されたら天美ちゃんもいやだよね」
 アロンの言葉に、天美は無言になった。今、足の筋が破壊されたら、激痛が走り確実にうごけなくなる。気絶をしてしまうかもしれない。そんな想像が頭をよぎった。
  その天美の様子を見つめながら、アロンは言葉を続けた。
「心配ないよ。壊れても、うちの技術で再生させてあげるから、きっと、前より早く動けるようになるよ。人工筋かな、こういうことには、たけているから」
「つまり、一部サイボーグ化ね」
「そうとも言うかな。脳も改造するから、実際、サイボーグになったりして」
「そんなことは・・」
 天美の言葉をさえぎり、アロンは、次の言葉を、
「させないというのだろ。どうしても疑うのなら、動いてみれば。その瞬間、毎日、きたえていた左足は使い物にならなくなるから」
 天美はわかっていた、うかつに動くとそうなる。この言葉は掛け値なしで本当だと。実際、その女性テセラからは、戦いの上位者が放つ並々ならぬ闘気がほとばしっていた。
「さて、では、今から、捕獲の報告をしないとね」
  そして、アロンは携帯を取り出すと、通話先に連絡を取り始めた。通話後、アロンは天美の顔を見ながら、次のように言った。
「おや、まだ、『連絡をしていなかったのか?』という顔をしているね。だって、確実に捕まえた状況にしておきたかったからね。中途半端だと、もしもの場合、責任とらされるし」
 つまり、このテセラの腕前は、それだけ確実ということだ。先ほどの、ささやきは、『間違いなく出番があるから、心の準備をしておいてくれ』という伝言だったのだ。
「ということは、十五分、今から余裕あることね」
「何か期待をしているようだけど、ワイフにとって十五分なんて余裕だよ。相手を撃つチャンスを待つために、一時間は銃口を構えていたときもあったからね。しかし、天美ちゃん、君もうかつだったね。僕を問い詰めるために、ここに来たのだと思うけど、逆に、こんな目にあうとはね。飛んで火に入る夏の虫、日本には、こんな、ことわざがあったかな」
 実際、言葉通り、アロンは余裕綽々であった。だが、天美としても、このままの状況で甘んじるわけにはいかなかった。もし、次、麻酔などで気を失うことになったら、間違いなくアメリカに送られ、脳洗脳を受けるであろう。名高いCIAたる組織が、二度も奪回されるというような過ちをするとは考えられないからだ。
 彼女は、相手に向かって威かくをするような声を出した
「ミスター・カーマイクル!」
「アロンとは、呼んでくれないとは、天美ちゃん、怒っているね」
「カーマイクル。わったしが、誰にも言わずに、ここに来たと思うの?」
 天美はそう言った。このケースによく使う、威嚇の言葉である。
「思うって、そうじゃないかな。先ほどからの様子から見ても」
「それは、あくまでも、わったしの演技、そうさせようと思って努力しただけなの。だから、情報、聞き出すため、わざと長くいたんだけど」
「なるほどね、このあとは、こう言いたいのではないのかな。自分が帰ってこないことを知ったら、仲間が助けにくるとかね。それも、十分以内に突入してくるとか」
「だとしたら、どうするの? そうなると、困るのそっちでしょ、捕まるのだから」
「ははは、初歩の初歩の交渉術か。しかし、ここで、こんな、使い古しの会話をすることになるなんて。だいたい、君さっきまで、帰る気満々だったのだろ。無事に帰れるとわかってるのに、そんな、手を打っているわけはないだろう」
「本当にそう思う?」
「思うよ。君、うろうろしていたのでしょ。少し驚いていた表情もしていたし、偶然、この家を見つけたとか、そんなのじゃないかな。それぐらいの観察力がないと、この仕事はつとまらないよ。だいたいね、君、ここの住所、わかってるの、番地とか」
「わかるわけないでしょ」
 思わず、天美はそう答えてしまった。
「ははは、やはり、知らなかったのだね。だいたい、僕が教えていないのだからね。ということで、やっぱり、君が来たのは偶然、いや、ただカンが動いただけか。でも、そのカン、すごくいいね。チームでも使えるよ」
  そのアロンの言葉を聞きながら、天美は思っていた。
〈カン、わったしはカンで来たのか。いや違う、何か記憶あったはず、この家につながる〉
 そして、頭の中で必死に記憶をまさぐっていた。その結果、

「おや、何か思いついた顔をしてるね」
 アロンが天美の顔を見て尋ねてきた。少し不審をいだいたのか、
「そう、ここから、逃げれる考え、思いついちゃった」
「なるほど、この状況で、まだ、逃げることができると思ってるんだ」
「当たり前でしょ。ただ、今は、チャンス待って、じっとしてるだけ」
「わかったよ、これ以上、君が希望を持つと残酷だから、本当は極秘内容なのだけど、決定的なことを教えてあげるよ。実はテセラも一種の超能力者なんだ」
「えっ」
 天美の驚きをよそに、アロンは言葉を続けた。
「と言っても、限定的なものだけどね。モンキーハンティングという言葉を知っている?」
「いや、知らないけど」
「物理学では有名な言葉なのだけどね。では説明をするよ。一匹の猿が木の枝にぶら下がっているとする。そして、その猿を、遠くから命中率百パーセントの猟師が狙っていたとする。その猟師が猿を狙って撃った。だが、そのとき同時に猿がぶらさがっている木の枝が折れて猿は落下した。さて、その銃弾は猿に当たるかどうか」
「普通なら当たらない、と答えるのだけど、わざわざ、聞いたということは当たる」
「その通り、当たると説明されているね。ものが落ちるのは重力の力ということは知っているよね。猿が落ちるということは、撃った弾の軌道も重力で落ちることになる。どちらも同じように落ちるから当たるということだけど。なぜ、この話をしたかわかるかい」
「猿がわったしで、猟師が奥さんということ」
「本当に察しがいいね。僕が言いたいことは、今、話した重力と同等の力をテセラが持っているということだよ。つまり、君が逃げたと同時にテセラが銃の引き金を引く、すると、その銃弾は必ず君に当たるということだ。テセラは念動力者だからね」
  アロンの言葉を天美は、しっかり聞いていた。そして、勝ち目がなくなったことを。この話を聞くまでは、本当に、自分でも、うまく逃げれば何とかなると思っていた。しかし、相手が念動力まで使うとなると話が別である。やはり、今回の相手は、あなどってはならなかった。その様子を見ながらアロンは、諭すように声を出した。
 「ようやく、本来の自分の立場がわかったようだね。そういうことで、あと少しの時間、おとなしくしてくれれば、僕も助かるのだけど」
「こんな、すごい隠し球、あったなら、もっと早く、この状況にできたのじゃない」
「それはまあ、できたけど。やはり、テセラ、あの状況から一分は必要だったからね」
「一分どころか、十分ぐらい、しゃべってたでしょ」
「そうだね。実は支部長の報奨金の話をし終わったときは、すでに、テスラはスタンバイの状況だったんだ。でも、そのあとの、君の強気の態度を見ていたら、面白くなって、つい、付き合いたくなってね。まあ、そういうことさ」
 アロンは、ここで支部長という言葉を初めて使った。ということは、そこから先の内容については、天美に知れても、捕まえているから、問題はないということか。それよりも何も、あの困っていたという言動も、演技だったということだ。なおもアロンは、
「そういうことで、君は、あのときから、僕の手の中だったんだ。そういえば、この状況になってから、もう五分以上はたっているのだけど、やっぱり、誰も来そうにないね」
「そうね、確かに、場所知らないから、今の時点では、誰も助けにこれないよね」
「そのことは、認めたのだね」
「でもね、『アロンさんの家行く』という書き置き残してる可能性あるよね」
「それぐらいは、あるかな。でも、肝心な場所が、どこか、わからないだろう」
 アロンの言葉を聞き、天美はうすく笑った。
「ミスター・カーマイクル。実は、本当はスパイの仕事、むいてないのじゃない」
「僕が向いてないって」
「そう、向いてないと思う。そもそも、わったしの身体検査してないでしょう」
「だって、うかつに、君に触れたら・・」
 アロンに最後まで答えさせず、彼女はたたみかけるように次の言葉を、
「それが、間違いなの。もし、わったしが発信器持ってたら、どうする気なの?」
「なるほど、ここで発信器か。なかなか、やるねえ」
 その目は笑っていた。スパイの立場としたら、こんな会話、日常茶飯事なのであろう。
「どうやら、信じてないみたいね」
「そんなもの、都合よく持っているわけないだろう。君もここで、そんな、使い回しのセリフを吐くなんて、またまた、心得の教科書に従ったのかな」
 アロンの軽口を流すように天美は、きつい目で、
「だったら、やっぱり、スパイとして失格。今の人たちって、みんな、携帯電話持ってるよね。アロンさんだって、さっき使ってたし」
「そうだけど、それが、どうしたのかな」
「それで、その携帯電話なくしたとき、みんな、どうするかわかってる」
「携帯会社に電話して、発信源を突き止める。あっ」
 ここで、アロンは慌てた声を上げた。
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