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続編 消えゆく国
下界の騒ぎ
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大沢神名誉殿堂では、
議員たちが顔面蒼白で秘書の話を聞いていた。
数人の議員はその話に慌てて部屋を出て行く。
それまで余裕でいた山口と倉川も連絡を取ろうとしたが、
お膝元でも事件が起こっているのだろう。
スマートゴーグルが起動しないのを知り、
足早に廊下へ走って行った。
「トップの邸宅にも下区から飛んできたものが押し入り、
ご家族がシェルターに避難して、
そのまま安全な第二シェルターに移動しました」
秘書の話も耳に入らない様子で、
怒りに体を震わす田口に、
その場に残った者達は恐怖に青ざめた。
AI暴走が本格化してから、
階級者は街のようになった地下シェルターへ移動していた。
空気より重い化学兵器でもまかれたら別だが、
核が落とされても助かるよう作られている。
だが所詮ここもAIが要の秘密の地下要塞。
冥王が言った生き埋めというのは、
まさにこのことだ。
中区の者達も突然現れた者達の犯罪に、
逃げまどっていた。
向井が張ったフィルターにより、
助けられる魂は捨て地へと飛ばされた。
ただ、上区特別区にはフィルターを通れるものはいない為、
自分達で犯罪者と戦わないとならない。
冥王は冥界からその様子を見ながら、
怒りというより辛そうな表情で佇んでいた。
冥界の王も罪を裁くことを罪ととらえ、
それを理由にこの場所から動くことが許されていない。
地球を管理する神は誰もが冥界に来ることを拒む。
その理由の一つが自由を束縛されることにある。
それでも下界の魂が美しければ、
冥界で王となることも苦にはならないだろう。
日本という国はそういう意味で、
魂の穢れが多すぎてなり手のいなかった国なのだ。
ただ冥王だけは、
古くから独自の文化で紡いできた国の歴史に興味を持ち、
手をあげた。
私は自分の子供達に殺し合いさせるために、
ここで裁きをしているわけではない。
あの子らが自ら気づき、
慈悲の心を持たなければならない。
それが生きる意味なのだから。
冥王は画像を消すと、
机に両肘をつき険しい顔で行く末を見守っていた。
冥王がそんな沈んだ思いでいると、
部屋のドアにノックの音がした。
「冥王? 返事がないので寝てられるのかと思いましたよ」
向井が顔をのぞかせた。
「いや、少し考え事をしていてね。
向井君も今日はご苦労様でした」
冥王が笑顔で言うを見て、
「お疲れのようですね。
休憩室でおやつを食べているのに、
冥王の姿が見えないのでみんな心配してますよ」
向井は笑った。
「今お好み焼きを焼いているんですけど、
冥王もどうですか? 」
「お好み焼き? 」
冥王の顔が輝いた。
「食べますよ~」
嬉しそうに椅子から立ち上がるいつもの姿に、
向井も安心すると一緒に休憩室に向かった。
休憩室に向いながら、
「ヴィヴィはまず隠し金庫を移動させたようですね」
冥王が言った。
「みたいですね。次は海外の隠し口座から金が消えるそうです」
向井は笑いながら話した。
「ディッセさんが楽しそうにしてます」
「そうですか」
冥王も笑った。
「最後に彼らの個人情報を某国に流し、
闇サイトで売り買いされるようにすると、
ヴィヴィが笑ってましたよ。
AIが実権を握っているので、
先生達は当分何もできないでしょう。
なんだか楽しそうでした」
「まぁ、なんだかんだで、
長いこと彼らに振り回されてきましたからね。
ここまで来ないと天上界も首を縦に振らなかったんですから、
あの悪霊事件はある意味、
いい方向に働いてくれたという事でしょうか」
二人は笑いながら休憩室に近づいた。
部屋からはチビ達の声が聞こえてきた。
「田所はへた~」
「イカがでちゃった~」
呉葉とこんの声が聞こえた。
「難しいな。坂下君が簡単にやってたから、
出来ると思ったんだけどな」
田所が笑う。
「坂下はプロだもん」
安達が言い、
「これは俺が裏返したやつ~」
と綺麗に焼けたイカ焼きにソースをかけた。
「美味しそうじゃん。牧野は食べるだけ? 」
早紀はイカを頬張る牧野に眉を顰めた。
「いいじゃん。食べるやつがいるから、
どんどん焼けるんだろ」
「なにそれ」
弥生も笑いながら皿にお好み焼きを乗せた。
「こっちは焼けてるから、君達にカットしよう」
佐久間が言いながら小さく切って、
チビ達の皿に乗せた。
「どんどん焼くよ~」
セーズがホットプレートに乗せて焼いていく。
「あっ、じいじだ~」
三鬼がソースだらけの顔で振り向くのを見て、
冥王は嬉しそうに部屋の中に入って行った。
議員たちが顔面蒼白で秘書の話を聞いていた。
数人の議員はその話に慌てて部屋を出て行く。
それまで余裕でいた山口と倉川も連絡を取ろうとしたが、
お膝元でも事件が起こっているのだろう。
スマートゴーグルが起動しないのを知り、
足早に廊下へ走って行った。
「トップの邸宅にも下区から飛んできたものが押し入り、
ご家族がシェルターに避難して、
そのまま安全な第二シェルターに移動しました」
秘書の話も耳に入らない様子で、
怒りに体を震わす田口に、
その場に残った者達は恐怖に青ざめた。
AI暴走が本格化してから、
階級者は街のようになった地下シェルターへ移動していた。
空気より重い化学兵器でもまかれたら別だが、
核が落とされても助かるよう作られている。
だが所詮ここもAIが要の秘密の地下要塞。
冥王が言った生き埋めというのは、
まさにこのことだ。
中区の者達も突然現れた者達の犯罪に、
逃げまどっていた。
向井が張ったフィルターにより、
助けられる魂は捨て地へと飛ばされた。
ただ、上区特別区にはフィルターを通れるものはいない為、
自分達で犯罪者と戦わないとならない。
冥王は冥界からその様子を見ながら、
怒りというより辛そうな表情で佇んでいた。
冥界の王も罪を裁くことを罪ととらえ、
それを理由にこの場所から動くことが許されていない。
地球を管理する神は誰もが冥界に来ることを拒む。
その理由の一つが自由を束縛されることにある。
それでも下界の魂が美しければ、
冥界で王となることも苦にはならないだろう。
日本という国はそういう意味で、
魂の穢れが多すぎてなり手のいなかった国なのだ。
ただ冥王だけは、
古くから独自の文化で紡いできた国の歴史に興味を持ち、
手をあげた。
私は自分の子供達に殺し合いさせるために、
ここで裁きをしているわけではない。
あの子らが自ら気づき、
慈悲の心を持たなければならない。
それが生きる意味なのだから。
冥王は画像を消すと、
机に両肘をつき険しい顔で行く末を見守っていた。
冥王がそんな沈んだ思いでいると、
部屋のドアにノックの音がした。
「冥王? 返事がないので寝てられるのかと思いましたよ」
向井が顔をのぞかせた。
「いや、少し考え事をしていてね。
向井君も今日はご苦労様でした」
冥王が笑顔で言うを見て、
「お疲れのようですね。
休憩室でおやつを食べているのに、
冥王の姿が見えないのでみんな心配してますよ」
向井は笑った。
「今お好み焼きを焼いているんですけど、
冥王もどうですか? 」
「お好み焼き? 」
冥王の顔が輝いた。
「食べますよ~」
嬉しそうに椅子から立ち上がるいつもの姿に、
向井も安心すると一緒に休憩室に向かった。
休憩室に向いながら、
「ヴィヴィはまず隠し金庫を移動させたようですね」
冥王が言った。
「みたいですね。次は海外の隠し口座から金が消えるそうです」
向井は笑いながら話した。
「ディッセさんが楽しそうにしてます」
「そうですか」
冥王も笑った。
「最後に彼らの個人情報を某国に流し、
闇サイトで売り買いされるようにすると、
ヴィヴィが笑ってましたよ。
AIが実権を握っているので、
先生達は当分何もできないでしょう。
なんだか楽しそうでした」
「まぁ、なんだかんだで、
長いこと彼らに振り回されてきましたからね。
ここまで来ないと天上界も首を縦に振らなかったんですから、
あの悪霊事件はある意味、
いい方向に働いてくれたという事でしょうか」
二人は笑いながら休憩室に近づいた。
部屋からはチビ達の声が聞こえてきた。
「田所はへた~」
「イカがでちゃった~」
呉葉とこんの声が聞こえた。
「難しいな。坂下君が簡単にやってたから、
出来ると思ったんだけどな」
田所が笑う。
「坂下はプロだもん」
安達が言い、
「これは俺が裏返したやつ~」
と綺麗に焼けたイカ焼きにソースをかけた。
「美味しそうじゃん。牧野は食べるだけ? 」
早紀はイカを頬張る牧野に眉を顰めた。
「いいじゃん。食べるやつがいるから、
どんどん焼けるんだろ」
「なにそれ」
弥生も笑いながら皿にお好み焼きを乗せた。
「こっちは焼けてるから、君達にカットしよう」
佐久間が言いながら小さく切って、
チビ達の皿に乗せた。
「どんどん焼くよ~」
セーズがホットプレートに乗せて焼いていく。
「あっ、じいじだ~」
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