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続編 黒地と捨て地
黒地の地域性
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暫くすると温泉から牧野達が戻ってきた。
手にはバニラシェイクを持って、
楽しそうだ。
「安達はまだ寝てる? だったらチョコも俺が飲んじゃおう」
「飲む………」
安達が目をこすりながら起きだした。
「えっ? 」
ぼうっとして座る姿に驚いていると、
再びコテッと寝てしまった。
「な、なんだよ。寝ぼけてたのか。
チビと一緒じゃん」
牧野は笑うとソファーに腰を下ろした。
向井達もそんな安達に小さく笑った。
「みんな戻ったから出発しようか」
新田が後ろを向いて声をかけた。
「俺さ、次の休憩所でウニの釜めし食べるからな」
「分かりました。お腹を壊さないでくださいよ」
向井が牧野を見て笑った。
少しずつ空が明るくなりはじめ、
暗い黒地とは対照的な景色が捨て地には見えた。
声がしないなと後ろを向くと、
牧野達三人はソファーにもたれて、
気持ちよさそうに寝ていた。
「なんか一日なんだけど、小旅行に行ってる気分だね」
新田が運転しながら言った。
「そうですね。こんな風にゆったり景色を見てるのも、
久しぶりな気がします。
いつも除去で時間も関係なく動いているので、
空の移り変わりなんて感じている暇もありませんから」
「そういえば………そうだね」
新田も頷いた。
休憩所に到着すると、
エンジンの切れる音に各々起きだし始めた。
「えっ? もう着いたの? 」
牧野が目をこすると、
「それだけよく寝てたんだね」
新田が笑った。
外に出ると黒地の方角を見た。
中央に近づくにつれ、
悪霊の質が悪くなっていく。
負を持つ人が取り込まれると身動きができなくなるほどに、
陰の気が強い。
侵食される前に少しでも祓っておかないと、
向井は牧野を呼んだ。
「ここは質が悪いから、俺と牧野君で当たりましょう。
中央とは違うからあの中心だけ除去出来れば、
あとは散って消えてしまうと思います」
向井は空を見ながら考え込み話した。
「ん………毒が強いよ………」
「それは中央寄りですからね」
向井は牧野を見ると、
「そんな顔しないで、ウニ食べるんでしょ」
「あっ、そうだった! 」
牧野は思い出したのか笑顔になった。
「ねえ? あれ何? 」
安達が指さす方向を見ると庭園が広がっていた。
冥界では見ることのない綺麗なガーデニングだ。
「フラワーガーデンですね。
俺達の除去の間に覗いてみてはどうですか? 」
向井が言った。
「いいですね~私も下界の庭園は見てみたいです」
毘沙門天も話すと、
「じゃあ、見学しようか」
黒谷が言い、向井達と別れると歩き出した。
「さて俺達もササッと片付けて、
温泉入って美味しいもの食べて帰りましょう」
向井は笑うと牧野の肩を叩いた。
明るい捨て地から黒地に入ると、
その空の色だけでも気分が沈む。
重苦しい空気の中、
向井達は中央に渦巻く悪霊に、
仙木と霊玉を同時に食い込ませた。
一瞬のうちに悪霊は消え、
散った悪霊に向井が霊銃を撃ち放った。
負が薄くなり、
向井達が付近を見回していると、
人々がある施設に入っていく姿があった。
こんな早くから男性が何人も歩いて行く。
その違和感に向井達が怪訝そうに見ていると、
「あんた達は………」
近づいてきた老人が二人を見て声をかけてきた。
そのまま全身を見回し、
「あそこの人間でねえな」
と言った。
「あそこ? 」
向井が聞くと、
「あの施設で雇われてる奴らだて」
と言った。
「あの施設はなんですか? 」
「どこの国らったかな? この辺は日本でねえすけな。
あんたら日本人だてね」
「えっ? 」
その言葉に二人がビックリして聞き返した。
「あんたらどこから来たの? この辺のもんでねえだろ? 」
「俺達は中央からきたんだけどさ」
「中央………お殿様の街かい。
そりゃぁいい暮らし出来てんだろうね。
着てるもん見ても違うすけな」
老人が眉をひそめた。
「中央だって階級者以外は大変だぞ」
「ふん。そうは言うても奴隷労働はされてねえだろ」
「奴隷労働? 」
「中央のもんは何も知らねえんだな。
一体こんげな朝早うに田舎まで何しに来た」
老人はそういうと、
近くの植え込みの花壇に腰を下ろした。
手にはバニラシェイクを持って、
楽しそうだ。
「安達はまだ寝てる? だったらチョコも俺が飲んじゃおう」
「飲む………」
安達が目をこすりながら起きだした。
「えっ? 」
ぼうっとして座る姿に驚いていると、
再びコテッと寝てしまった。
「な、なんだよ。寝ぼけてたのか。
チビと一緒じゃん」
牧野は笑うとソファーに腰を下ろした。
向井達もそんな安達に小さく笑った。
「みんな戻ったから出発しようか」
新田が後ろを向いて声をかけた。
「俺さ、次の休憩所でウニの釜めし食べるからな」
「分かりました。お腹を壊さないでくださいよ」
向井が牧野を見て笑った。
少しずつ空が明るくなりはじめ、
暗い黒地とは対照的な景色が捨て地には見えた。
声がしないなと後ろを向くと、
牧野達三人はソファーにもたれて、
気持ちよさそうに寝ていた。
「なんか一日なんだけど、小旅行に行ってる気分だね」
新田が運転しながら言った。
「そうですね。こんな風にゆったり景色を見てるのも、
久しぶりな気がします。
いつも除去で時間も関係なく動いているので、
空の移り変わりなんて感じている暇もありませんから」
「そういえば………そうだね」
新田も頷いた。
休憩所に到着すると、
エンジンの切れる音に各々起きだし始めた。
「えっ? もう着いたの? 」
牧野が目をこすると、
「それだけよく寝てたんだね」
新田が笑った。
外に出ると黒地の方角を見た。
中央に近づくにつれ、
悪霊の質が悪くなっていく。
負を持つ人が取り込まれると身動きができなくなるほどに、
陰の気が強い。
侵食される前に少しでも祓っておかないと、
向井は牧野を呼んだ。
「ここは質が悪いから、俺と牧野君で当たりましょう。
中央とは違うからあの中心だけ除去出来れば、
あとは散って消えてしまうと思います」
向井は空を見ながら考え込み話した。
「ん………毒が強いよ………」
「それは中央寄りですからね」
向井は牧野を見ると、
「そんな顔しないで、ウニ食べるんでしょ」
「あっ、そうだった! 」
牧野は思い出したのか笑顔になった。
「ねえ? あれ何? 」
安達が指さす方向を見ると庭園が広がっていた。
冥界では見ることのない綺麗なガーデニングだ。
「フラワーガーデンですね。
俺達の除去の間に覗いてみてはどうですか? 」
向井が言った。
「いいですね~私も下界の庭園は見てみたいです」
毘沙門天も話すと、
「じゃあ、見学しようか」
黒谷が言い、向井達と別れると歩き出した。
「さて俺達もササッと片付けて、
温泉入って美味しいもの食べて帰りましょう」
向井は笑うと牧野の肩を叩いた。
明るい捨て地から黒地に入ると、
その空の色だけでも気分が沈む。
重苦しい空気の中、
向井達は中央に渦巻く悪霊に、
仙木と霊玉を同時に食い込ませた。
一瞬のうちに悪霊は消え、
散った悪霊に向井が霊銃を撃ち放った。
負が薄くなり、
向井達が付近を見回していると、
人々がある施設に入っていく姿があった。
こんな早くから男性が何人も歩いて行く。
その違和感に向井達が怪訝そうに見ていると、
「あんた達は………」
近づいてきた老人が二人を見て声をかけてきた。
そのまま全身を見回し、
「あそこの人間でねえな」
と言った。
「あそこ? 」
向井が聞くと、
「あの施設で雇われてる奴らだて」
と言った。
「あの施設はなんですか? 」
「どこの国らったかな? この辺は日本でねえすけな。
あんたら日本人だてね」
「えっ? 」
その言葉に二人がビックリして聞き返した。
「あんたらどこから来たの? この辺のもんでねえだろ? 」
「俺達は中央からきたんだけどさ」
「中央………お殿様の街かい。
そりゃぁいい暮らし出来てんだろうね。
着てるもん見ても違うすけな」
老人が眉をひそめた。
「中央だって階級者以外は大変だぞ」
「ふん。そうは言うても奴隷労働はされてねえだろ」
「奴隷労働? 」
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老人はそういうと、
近くの植え込みの花壇に腰を下ろした。
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